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育成は善、補強は悪なのか。

 巨人が、FA権を行使する予定のDeNAの梶谷選手と井納投手を、ダブルで獲りにいくとの報道が出ています。

 この件について「ソフトバンクに惨敗した巨人がまた金で補強」と揶揄するような記事も出ています。

 これまで、スター選手を奪われた(?)チームのファンの多くが、恨みを抱いているのはわかります。どうしても「金の力で物を言わせる」イメージが強いのもわかります。そういう歴史があったのですから、仕方がありません。

 ただ、これだけの力の差があり、1年でそれを埋めなければならない場合、育成だけでは無理な話です。育成は進めつつ、補強もしなければならない。それは、現時点の巨人にとっては車の両輪だと思うのです。

 実際、三軍をスタートした頃のソフトバンクは、大型の補強を行っています。喜瀬雅則さんの『ホークス3軍はなぜ成功したのか?』から引用します。

小林の編成育成部長時代、ソフトバンクは「FA補強」にも積極的に乗り出している。
2010年内川聖一(横浜・内野手、外野手)細川亨(西武・捕手)
2011年帆足和幸(西武・投手)
2012年寺原隼人(オリックス・投手。2001年のダイエードラフト1位)
2013年中田賢一(中日・投手)鶴岡慎也(日本ハム・捕手)

外国人補強でも、日本の他球団で実績を挙げた選手の獲得が目立った。
2011年アレックス・カブレラ(西武~オリックス。2002年に55本塁打)
2013年ジェイソン・スタンリッジ(阪神・投手)デニス・サファテ(広島~西武・投手)

喜瀬 雅則. ホークス3軍はなぜ成功したのか?~才能を見抜き、開花させる育成力~ (Japanese Edition) (Kindle の位置No.911-921). Kindle 版.

 2010年にはペタジーニも獲得しているので、今のホークスだけを見て、育成が正義、補強は悪のような捉え方は少し違うのではないかと思いました。

 本にもあるように、ホークスが3軍構想を練っている頃に、巨人も同様に3軍の立ち上げを試みていたそうです。ただ、2011年の清武の乱によって、中心にいた当時の清武英利球団代表が失脚、巨人の3軍構想はストップしてしまったそうです。

 週刊誌の記事ではありますが、少なくとも「育成の巨人」を目指していた時期があったことはわかります。

 そうした紆余曲折を経て、正式に3軍が動き出したのが2016年ですから、ホークスに5年の遅れを取ってしまった。その5年分の差だけではないでしょうが、現段階ではまだ補強せざるを得ないのが実情なのでしょう。

 ただ、少し気がかりなのは、今オフの戦力外通告が23人にも上っているということです。育成再打診のない、22歳以下の選手は6人。25歳以下となると更に6人。

 ドラフト指名は支配下、育成合わせて19人ですから、かなりの数を入れ替える印象があります。

 気になるのは「発掘と育成の元年」と銘打っているところ。3軍がスタートして4年経つのに、今「元年」と言い、若手を大量に戦力外にしているは、この数年が失敗だったと公言しているようなもの。そうなると、5年どころでなく10年のロスとなります。

 記事に書かれてある「3、4年後のドラフト1位を獲る」というのもホークスの方針。そこにようやく今年たどり着いたということは、巨人に今の千賀選手や甲斐選手のような存在が出てくるまで、あと最低でも5〜6年くらいはかかるのではないでしょうか。気が遠くなるような話です。

 どういう事情で、今年を元年と言うのかわかりませんが、育成が大きく出遅れてしまった今、やはりFAなりトレードなりで補強せざるを得ないのだろうと思います。

 ちなみに、個人的には、ヤクルトも小規模ながら3、4年後のドラフト1位を獲りに行ったと思っています。昨年の長岡秀樹選手、武岡龍世選手。昨年の5位と6位ではありますが、今年1年ファームに出続け、一軍でもチャンスをもらい、大事に大事に育てられています。早くから二遊間を組ませて、土橋コーチの英才教育を施す。たくさん種を撒けるわけではないから、見込みのある種を大事に大事に育てるしかないのが、「ヤクルトの育成」なのでしょう。

 ま、ヤクルトの話はともかく、巨人が育成ではなく相変わらず資金力に任せた補強ばかりしているという報道の裏に、ホークスの育成こそが美しく、それを怠り他所から獲ってくることばかり考えている巨人の補強が悪、のような対立構造を感じたので、ちょっと考えてみました。

 ※トップの画像は、間違ってYGシートを取ってしまったときのものです。耐えきれずに途中で立ち見に逃げた思い出。ヽ(・ω・;ヽ)!!(ノ;・ω・)ノ

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