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だからこそ、勝ちたかった

奇跡というのはめったに起こらないから奇跡なのであり、どれだけ信じても努力しても起こらないときは起こらない。

一方で、奇跡を信じるということは、その事実を頭から消すということで。

だから、かなわなかったら「まあ奇跡なんてそうそう起こらないよね」とはならず、こんなに悔しい。

前回大会の準優勝国を相手に善戦、なんてきっと慰めにならない。求めていたのは勝ちだけだっただろうから。


サッカーW杯、決勝トーナメント1回戦。日本はクロアチアにPKの末敗れ、ベスト8入りは果たせなかった。

一夜明けて振り返ると、1か月前の心情と重なる。


11月5日、J1リーグ最終節。2位の川崎フロンターレはわずかな逆転優勝の可能性を残し、試合に臨んだ。

試合には勝利したが、同時刻に試合を行っていた首位チームも勝ったため、優勝はかなわなかった。


すごい試合だったのだ。前半にゴールキーパーがレッドカードで退場。再三追いつかれても逆転を許さず、10人で戦い抜いた。優勝を諦めない気持ち、奇跡を信じる気持ちがどの選手からも痛いほど伝わってきた。

素晴らしい試合を見せてくれた、気迫あふれるプレーに感動した…等々。「だから、優勝できなかったけどいいんだ」と思いたくてポジティブな言葉を並べても、湧いてくるのはむしろ「だからこそ、優勝したかった」という思い。

こんなに胸を打たれる試合を見せてくれたからこそ、試合後選手たちがつらそうにしているのを見たくなかった。笑顔で終わりたかった。

今回のクロアチア戦も同じだ。強豪国を追い詰めた、爪痕を残した、日本中に感動をくれた…代表選手たちの活躍をたたえるほど、「だからこそ、勝ちたかった」という思いも増すのだろう。


勝敗が決まってすぐにテレビを消して寝に行ってしまい、ニュース等もまだ見ていないので、その後の選手たちの表情は知らない。

ただ、最後のキッカーとなったクロアチアの4人目の選手が蹴るとき、泣きそうな顔で祈る三笘選手の姿が映った。

あの「結果しか出さない男」三笘薫がこんな表情を見せる。この場所はそういう場所なんだ。この場所で新しい景色を見ることは、それほどの奇跡なんだ。


選手の皆さん、本当にお疲れさまでした。

勝ちたかったね。

どうか胸を張って、日本へ、それぞれのプレーする国へ、帰ってほしいです。




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