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たのしかったよ またあおう

古いカレンダーの裏いっぱいに、次男が文章を書いていました。

週末と学校の代休日を利用して私の実家に滞在中、長男が体調を崩してしまって。自宅に帰る日の前日になっても、次の日に長距離移動に耐えられる状態になっているのかはっきりしない状況でした。場合によっては私がいったん次男だけを連れて帰り、夫に託してから実家に戻ることも考えていました。

自閉症の特性からイレギュラーなことに弱く、予定の変更は前もってしっかり知らせておかないと気持ちが崩れてしまう次男。

お兄ちゃんは一緒かもしれないし一緒じゃないかもしれない。帰ったら少しの間お父さんと二人で暮らすことになるかもしれない。どちらにしてもあなたは明日帰るんだよ。確定できない翌日の動きを私ができるだけかみくだいて説明したそのあと、彼は紙とえんぴつを探して書き始めました。


自宅マンションと新幹線の絵が添えられた文章。「あした、〇〇くんのおうちにかえります」から始まり、続いて書かれていたのは私が先ほど説明した翌日の動き。すべて正しく理解できてはいなかったようだけど、私の話をしっかり聞いてくれていたんだなとわかるものでした。

そして、最後に「たのしかったよ またあおう」と。


これを読んだとき、最初は祖父母にあてた手紙かと思いました。でもすぐに違うと思いました。宛名がなかったこともあるけど、きっと自分のために書いたものだと感じたんです。

確定しない予定を前に、頭と心を整理するために。そして、たぶんそれ以上に、大好きな祖父母宅から明日帰るのだということを自分に納得させるために。


イレギュラーな状況に弱いのは私も同じです。多少ナーバスになっていたせいもあると思いますが、彼の書いたものを読んでいるうちにじわじわと涙が出てきて。気持ちを乗せた文章ってこうも人の心を動かすんだなって、改めて次男に教えられた気がしました。

自分の気持ちを言葉にすることを、もっとこの子に伝えたい。私自身ももっともっと心が動いたことを書いていきたい。そんな衝動に駆られました。


翌日、幸いにも症状がやわらいだ長男を連れて3人で帰宅することができました。出発時に大号泣し、帰宅後ふとんの中でもしくしく泣いていた次男がとてもいとしいです。

たのしかったよね。またあいにいこうね。





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