【声劇フリー台本】遺言
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【利用規則】
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【台本】
きっと、これが最後になるだろう。
ただの何気ない一言。
なんてことはない、ただの会話。
あるいは、前を向くための一つだったのかもしれない。
受け取ったのが僕でなければ、それはただの言葉だった。
でも、それは僕をずたずたに引き裂くにはあまりに十分だった。
身勝手だと呆れるのだろう。
知ったことではないと切り捨てるのだろう。
分かっている。
これは僕の勝手な感情だ。
僕が勝手にそこに執着してしまっただけだ。
僕が勝手にそこに価値を見出してしまっただけだ。
分かっている。
頭の中では、嫌というほどに。
だからどうにか思考を切り替えようとした。
価値を見出す先を、執着しないで済む道を、自分を守れる道を、どうにか模索しようとした。
でも駄目だったんだ。
思っている以上にずたずたになっていたものは修復出来ないところまできていた。
僕が思っているよりもずっと、それは大切なものだった。
何よりも、一番されたくなかったことだった。
きっと僕が何か悪いことをしてしまったのだろう。
だから一番嫌なことをすることで、思い知らせたのだろう。
そう思っていないと自分を保つことすら出来ない。
自分を責めることが一番楽な逃げ道なのだと改めて痛感する。
そうでもしていないと、ほら。
堪えようとしても勝手に涙があふれ出て止まらない。
世界を魅せてくれたのは貴方だった。
僕にその価値を教えてくれたのは貴方だった。
僕の中に眠るものを見出してくれたのは貴方だった。
だからこそ、貴方にだけは否定されたくなかった。
そこに囚われたくないのは知っていた。
前を向くために必要なことだと知っていた。
僕はそれを肯定したかった。
受け入れて、そうなれたことを祝福したかった。
僕が僕でなければ。
僕でさえなければ、きっとそれで終われた。
知らないのか、気付いていないのか、忘れてしまったのかは分からない。
知っていて、あえてそうしているのかも分からない。
これは全ての始まりだった。
きっかけだった。
兆しだった。
救いだった。
永遠に続くものではないことはわかっていた。
いつか終わりを迎える。
緩やかに消えて、いつか遠い思い出になる。
そうなるのだろうと思っていた。
なのに現実はこの有様だ。
こんなことは望んでいなかった。
こんな思いをするぐらいならはじめから知りたくなかった。
何もしなければよかった。
手を伸ばさなければよかった。
恨み事ばかりがこぼれて止まらない。
こんなことを書きたくなかった。
一番触れられたくない箇所に触れられたとき、きっと僕のことだから怒りが湧くのだと思っていた。
感情のままに怒って、何もかも全てを吐き出して、そうして終わらせるのだと思っていた。
でも現実はそうではなくて。
ただただ深い悲しみに支配されて、誰かに吐露できぬまま声を押し殺して泣いて、終わりを迎える。
どうやらそれが僕だった。
きっと、これが最後になるだろう。
頭の中にあった言葉が、イメージが、今では何一つとして出てこない。
言葉を書き綴ることが出来なくなってしまった。
何気ない会話が致命傷となって、『僕』は死んでしまった。
これはそんな『僕』の遺言。
ありがとう。今まで楽しかったよ。
さようなら。
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