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NoT 〜タイムパトローラーこーいち〜

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#ライトノベル

時空警察NoT -Chapter 1/6-

時空警察NoT -Chapter 1/6-

「はあっ・・・、はあっ・・・!」

息を切らせて、駅の階段を駆け上がる青年。現在の時刻は午前9時を過ぎたところで、通勤ラッシュの真っただ中だ。人混みを掻き分けるのも一苦労だが、彼には一刻の余裕もない。

発車ベルが鳴り響く中、駅員に舌打ちをされながら、すんでのところで電車内に滑り込む。胸ポケットのスマートフォンのバイブ音を親指で必死で止めながら、彼は顔を紅潮させている。

待ち合わせ場所までは1駅

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時空警察NoT -Chapter 2/6-

時空警察NoT -Chapter 2/6-

「ひ、『人』という字を3回書いて・・・。ん?あれ?・・・3回で良かったっけ?5回だったっけ?あああっ・・・!間違えて『入』って書いちゃった!やり直しっ!」

駅のホームのベンチで、水色の髪をしたポニーテールの少女が、なにやら独り言を喚いている。

「ダメ!・・・ダメよ千里。憧れの時空警官に今日からなるのよ。いや、もう既になっているわけなのよ。それなのにこんな公衆の面前でアタマ抱えてる場合じゃな

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時空警察NoT -Chapter 3/6-

時空警察NoT -Chapter 3/6-

「時空警察NoTでーす!よろしくお願いしまーす!」

地道に広報活動を続ける千里の手から、乱暴にポケットティッシュをもぎ取る男がいる。

「あ、ありがとうございま・・・」

男の外見を見た途端、心の中で千里は眉をしかめた。

色黒の中年。シャツの1番上のボタンは外れ、ベルトがちゃんと締まっていないらしく、ズボンはヨレヨレに拡がっている。そして、アルコールの匂いが顔から漂っている。昼間からだらし

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時空警察NoT -Chapter 4/6-

時空警察NoT -Chapter 4/6-



「ぐやじいっ!」

目に涙を溜めて、藤木は歯を食いしばる。

思い返せば、幼い頃からずっと集団の中でビリだった。体育祭の大縄跳びではいつも真っ先に引っかかってクラス全員の反感を買い、隣の席の女子の机の下に消しゴムが落ちたから拾っただけでキモいから近寄らないでと蔑まれ、修学旅行の班ではあぶれ者になりクラス内ヒエラルキー上位の奴らと無理やり組まされてずっと荷物持ちとしてこき使われ、昨日はアルバイト

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