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『プア・ジャパン 気がつけば「貧困大国」』 全文公開:目次

『プア・ジャパン 気がつけば「貧困大国」』 (朝日新書)が9月13日に刊行されました。
これは、目次全文公開です。

目次

はじめに 補助金や円安でなく、人材の育成を  3
ついにここまで衰退した日本/円安と補助金が、古い社会構造を固定化する/古いエンジンのままでは、日本は復活できない

第1章 気がつけば、「プア・ジャパン」 23

1 オーケストラもiPhone も高くて手が出ない  24
外国オーケストラの公演には、もう行けない/ iPhoneはもはや高嶺の花

2 ビッグマックもラーメンも、外国では高い  27
アメリカのビッグマックの値段は、日本の2倍/ニューヨークのラーメンは、一杯3000円!/窓がないと、世界の状況が分からない

3 「値段の安い日本」が問題なのでなく、「賃金が低い日本」が問題 31
日本の賃金が低いから安く作れる/賃金が低いから高いものを買えない

4 貿易できるか? 自国生産できるか?  35
製品や労働力が国境を越えられれば価格が均一化する/ iPhoneは日本で作れないから、高くても買わざるをえない/日本では賃金が低いが、物価も安いから問題ないのか?/インフレが輸入されて、実質賃金が下がった

5 外国人旅行客の急増は、「プア・ジャパン」の象徴  41
大きな変化は10年前に/日本が貧しくなったので、外国人旅行客が急増した/1980年代と逆のことが起きている/「安い日本」に対応した人材しかいない

第2章 昔はこうでなかった 47

1 振り返れば夢のようだった1980年代  48
「アメリカ企業も日本企業のようになる必要がある」/「モノづくりを続けるしかない」という思想/日本型システムがマッチしていた/世界が日本に学ぼうとした

2 中国工業化に円安と補助金で対処した誤り  54
情報通信技術に大きな変化があった/円安で利益があがるため、企業が技術開発を怠った

3 産業構造の変化と賃金停滞  58
日本の賃金停滞は、30年間続いている/分配率はほぼ一定/低生産性部門の従業員が増加した/90年代中頃に何が起こったのか?/どうすれば生産性を向上できるか?

4 賃金停滞の基本要因は技術開発の停滞  65
物価が上がっても賃金は上がらない/1990年代の中頃から続く、日本経済の停滞/賃金を決める2つの要素/資本装備率停滞も原因だが、それだけでない/基本的原因は、「全要素生産性」の停滞/円安政策が日本企業の活力を削いだ/成功は失敗の元

5 補助金依存体質になった日本の製造業  74
政府が製造業に補助/テレビ受像機や自動車への補助/半導体にも補助

6 デジタル化の遅れが、サービス収支赤字拡大の大きな要因  78
デジタル収支の赤字が、サービス収支赤字の84%/「通信・コンピュータ・情報サービス」の赤字が急激に拡大/日本におけるクラウド化の遅れ/サービス収支赤字の原因が旅行から高度サービスに移行/貿易収支でも、日本技術劣化の影響が顕著

7 日本の生命線が壊れ始めた。電機産業はなぜ凋落したのか  86
資本財と自動車の黒字で、鉱物性燃料の赤字を賄ってきた/資本財収支が長期的に減少/中国に依存しなければデジタル化を進められない/テレワーク、再生可能エネルギー、5Gで中国に依存する日本/日本は消滅する?

第3章 これから賃金は上がるのか?  93

1 物価は上がったが、賃金は上がらず  94
2022年に物価が高騰し、勤労者の生活が貧しくなった/「円安は悪いことだ」との認識が広がった/貿易収支も経常収支も赤字になった/日銀が金利抑制を続けたから円安が進んだ/日銀はなぜ金融緩和をやめないのか?

2 企業は原価高騰を製品価格に転嫁  100
付加価値の動向が賃金を決める/粗利益は増加したが、賃金は上がらなかった/原価の上昇を転嫁したため、粗利益が増えた/零細企業では、粗利益が減っている/実質賃金は上昇しない

3 「未曽有の春闘賃上げ」ではなく、「未曽有の実質賃金下落」  105
春闘賃上げ率は未曽有の高さか?/「実質春闘賃上げ率」は、これまで並みか、それ以下/経済全体では、実質賃金が未曽有の低水準に/賃金分配率が低下

4 これからも賃金は上がらない  112
生産性が上昇しないから賃金が上がらない/経済全体の生産性が上昇しない理由/医療・介護が最大の産業になる/生産性は、現在よりも低下する/デジタル化で生産性を高め、産業間移動を促進する必要

5 日本は、もはやアジアで最も豊かな国ではない  119
一人当たりGDPで韓国や台湾とほぼ同水準/賃金で日本が韓国に抜かれたかどうかは、議論の余地がある/国際的地位の低下は、低い成長率と円安による/アベノミクスで、日本は世界13位から27位に転落

6 適正な為替レートに比べて大きく円安  125
実質為替レートの考え/世界的な「一物一価」を実現する為替レート/金融緩和が資源分配を歪めた

7 円安が続くので、実質賃金は低下したままになる  129
日本円の購買力は戻らない/円安で輸入物価が上昇する/円安で消費者物価指数が約0・3ポイント引き上げられる/低下した実質賃金は取り戻せない/日本国民が円を見捨てる日

第4章 増大する財政需要と政治家の無責任  137

1 人口高齢化で年金財政は悪化する  138
単純化したモデルで年金財政の本質を見る/高齢化に伴い、給付が保険料収入を大幅に上回る/マクロ経済スライドだけでは年金財政はバランスしない/実質賃金が上昇すると、年金財政は大きく好転/支給開始年齢引き上げが不可避になる/きわめて重大な問題なのに、議論されていない

2 2040年代前半に厚生年金が破綻する  145
年金には国庫支出金が支出される/厚生年金収支の見通し/2040年代前半に厚生年金の積立金が枯渇する/積立金の運用収益に頼ることはできない

3 年金支給開始年齢引き上げの議論を始めるべきだ  150
財務省は、支給開始年齢引き上げが必要だという/70歳までの雇用確保が進められている/「受益の全世代化」でなく「負担の全世代化」が必要/2024年の財政検証で、支給開始年齢の問題を提起すべきだ

4 不合理きわまりない少子化対策の財源  155
児童手当増額で出生率が上昇するか?/子育て政策の財源に、とんでもない筋違いの発想/消費税増税が封印されているので、おかしな財源探しが必要になる/子ども・子育て拠出金という大問題の制度がすでにある/金融資産所得がカウントされない問題/政治が全く機能していない/財源問題に正面から取り組め

5 全く正当化できない防衛費増額の財源措置  166
歳出削減や増税ではなく、「筋の悪い財源」に頼ろうとしている/「防衛力強化資金」は、税外収入を積み立てる/「決算剰余金」の活用はさらに問題が多い/こういうことを「朝三暮四」という

第5章 デジタル化の遅れが日本の遅れの根本原因  173

1 インターネットに対応できない日本の縦割り社会  174
コロナ禍でデジタル化の遅れが顕在化した/デジタル化の遅れには2つの側面/1970〜80年代には世界の最先端だった日本/日本はインターネットに対応できなかった

2 日本の産業は「データ資本主義」に移行していない  180
世界はデータ資本主義に移行/グーグル、アップル、マイクロソフトの時価総額計は、東証プライムのそれを超える/プロファイリングがもたらす巨大な利益/ビッグデータの価値の推計/新しい資本主義とは、「データ資本主義」/日本企業にはできない経済活動

3 AIが雇用や企業活動に与える影響  187
AIが単純労働を代替する/介護分野におけるロボット導入/自動運転/データ処理/AIがクリエイティブな作業を補助する/AIは従業員のスキルアップを助ける/AIは新しいビジネスモデルやイノベーションを促進する/雇用市場への影響

4 マネーのデータの活用  196
マネーのデータを使って信用スコアリング/日本の電子マネーは乱立状態/銀行APIの利用

5 無人化と自動化が進むなかで、人間がなすべきことは何か?  201
データドリブン経営/無人の金融取引DeFiが登場している/完全に自動化された企業で、人間に何が求められるか?

6 マイナンバーカードとマイナンバーは、どのような意味を持つか? 205
健康保険証のマイナンバーカードへの切り替えには問題が多い/マイナンバーカードは最先端の身分証明書だが、使いみちがない/つぎつぎにトラブルが表面化/マイナンバーの利用対象拡大/マイナンバーでの個人情報漏洩のおそれがあるか?/アメリカの社会保障番号

第6章 高度人材を日本に確保できるか?  215

1 人材流出は、日本の真の危機の始まり  216
ワーキングホリデーで、外国で働く若者が増加/もっと深刻なのは、高度専門家/あらゆる国が競争相手

2 学位取得者を冷遇する日本  221
日本では学位取得者が少ない/博士号取得者は薄給/政府は「出世払い奨学金」を導入するが……/日本企業のイノベーション能力は低い/経済パフォーマンス悪化の基本的要因は人材

3 日本は高度専門家を確保できるか?  228
岸田内閣は人づくりが重要だというが……/高度専門家を厚遇しない日本の企業/高度人材の海外流出が始まっている/国際的リモートワークとデジタル移民の時代に/高度人材について、日本と諸外国で激しい賃金格差/日本企業は高度人材を引き止められるか?/日本企業の給与体系と雇用体系の根本に関わる問題

4 「GAFA時代の終わり」どころか、高度技術者の年収は2億円超  237
GAFAの業績が悪化/大規模な人員削減が始まる/高度人材の年収は、1億円を超えるレベルに上昇/一般従業員の年収も高い/日本企業は、2億円の報酬を支払えるか?

5 あまりに低い専門家の給与。中国より低い現状は危機的  245
専門家の給与水準:日本は最低/一人当たりGDPより、格差が大きい/日本では高度専門家が正当に評価されていない/1ドル=33円まで円高にならないと、日本から高度人材が流出する/世界から人材を集めるアメリカ

6 高度人材獲得合戦に日本もようやく参戦。勝機はあるか?  253
高度専門家のビザ要件を緩和/日本が抱えるハンディキャップ/経済停滞の悪循環を断ち切れるか?

第7章 日本再生のエンジンは、デジタル人材  259

1 日本の大学は不満足な状態  260
見劣りがする日本の大学/一人当たりGDPと100位以内大学数は、相関している/大学ファンドは日本の大学を再生させるか?/補助策から脱却する必要がある

2 高卒と大卒の生涯賃金差  268
日本の企業は、専門家を適切に遇していない

3 日本企業は、専門教育を評価していない  271
日本の大学は社会の要請に応えていない/学生は勉強しない

4 日本では修士進学率が非常に低い  275
日本では、大学院進学率が低い/日本ではプロフェッショナルスクールが弱い

5 高度成長期には、大学は変貌した  278
工学部が日本の経済成長を支えた/時代の変化に対応できなくなった日本の大学/破壊による改革はもっとも確実だが、コストがあまりに高すぎる

6 ジョブ型雇用への転換が必要  283
キャッチアップ過程ではよかった/ジョブ型雇用への移行/ジョブ型雇用が必要なのはエンジニアだけでない

7 社会制度の改革が必要  288
企業間の自由な移動が必要/日本では平均勤続年数が長い/年功序列賃金は日本に特有か?/日本に特有の退職一時金制度/日本でも企業型確定拠出年金制度を導入する企業が増えているが……/高度成長期にうまく機能した日本型雇用モデルが、いま変化の足かせに/政府の役割は、社会構造の改革

図表目次    297

索引    303



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