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「超」英語独学法 全文公開:第4章の1

『「超」英語独学法』が、NHK出版から刊行されました。
3月10日から全国の書店で発売されています。
これは、第4章の1全文公開です。

第4章 単語帳を捨て、丸暗記せよ

1 日本人の英語力はなぜ低い?

最大の原因は「分解法」

 日本人の英語力はきわめて低い。アジア諸国の中でも、最低位に近い。
 しかも、私の印象では、時代の経過とともに日本人の英語力は低下している。最近の学生を見ていると、それを痛感する。インターネットなど、英語学習に使える道具は長足の進歩を遂げているのに、日本人の英語力は、なぜ低いのだろう?
 さまざまな理由が考えられるが、大きな理由は、学校での英語の教育法にある。私たちの時代の英語の授業は、「まず英語を読み、つぎにそれを日本語に翻訳し、さらに文法などについて説明する」という方式で進んだ。いまでもそのような方式が続けられているのではないだろうか?
 これは、「英語の文章を単語に分解し、個々の単語を文法を用いて組み合わせ、翻訳することによって文章の意味を解釈する」という方法だ。
 私はこの方法を「分解法」と呼んでいる。これが最大の原因である。こうした方法をとるために、英語を習得できないのだ。

単語帳を捨てよ

 多くの日本人の学生は、単語帳を使っている。一つひとつの単語を抜き出して単語帳に書いて覚えようとしている。しかし、こうした方法で勉強しても、単語は覚えられない。
 単語帳で英単語を一所懸命に記憶しようとしている学生を見ていると、気の毒になる。まったく非効率的な勉強法だからだ。ましてや、「辞書を最初から一語一語覚えて、覚えたページを食べた」などという苦学物語を聞くと、信じられない思いだ(いまでは紙の辞書を使う人は少なくなったから、さすがにこうした人はいなくなっただろうが)。
 彼らは、個々の単語を孤立し、独立したものとして覚えようとしている。これは大変な努力を必要とする勉強法だ。しかも、きわめて能率が悪い。個々の単語をバラバラに覚えようとしても、覚えられるものではない。
 そのうえ、これは退屈きわまりない作業である。だから、「aから始めてabandonまできて投げ出したために、aで始まる単語だけやけに詳しい」などということが起こる。
 退屈なだけでなく、他の単語と混同してしまう危険もある。辞書のつぎに出ている言葉と取り違えたという、ウソのような話もある。
 単語帳どころではない。単語をこじつけで覚えようという方法を提唱している本もある。kennelを「ケン(犬)がネル(寝る)ところ」と覚えるのはよいとして、caveを「警部が洞窟に入る」などと覚えようとするのは、ダジャレにはなっても、実用価値はまったくない。絶対にやってはならない方法だ。こんなことをやっていたら、いつになっても英語力は身につかない。
 また、仮にこうした方法で単語の意味を覚えたとしても、実際に使えることにはならない。それは、英語→日本語という一方向の記憶だからである。caveを見て「洞窟」と訳すことは、できるかもしれない。しかし、洞窟の実物を見てcaveを思い出すことは、多分できないだろう。
 単語帳やこじつけ法は、この点で根本的な欠陥を持っている。日本人の英語が実用にならない大きな理由は、この点にある。
 まず単語帳を捨てる。これが英語勉強の第一歩だ。もし、どうしてもカードを使いたいのであれば、単語を書くのでなく、文章を書くことにしよう。

翻訳してはいけない

 日本人は、英語を単語に分解するだけでなく、日本語に翻訳して理解しようとする。これでは、英語を使えるようになるはずがない。
 講義を聞くにも会話をするにも、即座に理解し反応しなければならないから、和訳や英訳をやっていては、とても追いつけない。英語と日本語は異なる構造を持っているから、翻訳しようとしてもできない場合も多い。
 実際の場で使うためには、英語は英語のままで直接に理解する必要がある。日本語とのつながりを一切断ち、「英語脳」で考えることが必要だ。
 日本の英語教育は、教科書の英語を日本語に直すという方法が中心だったため、無意識に「翻訳しなければ」ということになるのだろう。
 「英語と日本語を1対1に対応させることはできない」という事実は、外国語を習い始めたばかりの中学生には分からない。「英語と日本語は違う」と教えるのは、中学校の英語教師が果たすべき大きな責任だ。
 日本語は、文章を個々の単語に分けられる。しかし、英語はこれとは違う構造の言語だ。
 口頭の場合に、とくにこの違いが明確になる。英語のネイティブスピーカーは、一つひとつの単語ごとに発音しているわけではないから、単語に分解して聞こうとしても、聞けない。ネイティブスピーカーの英語は速すぎるから聞けないという人がいる。分解しようとするから、速いと感じるのだ。



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