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【使い分け】J3第5節 松本山雅×テゲバジャーロ宮崎 マッチレビュー

スタメン

前節大量4得点で勝利を収め、再びホームに帰ってきた松本。昨年9月から勝てていないアルウィンでサポーターに勝利を見せたいところ。
前節からの変更はボランチの浜崎拓磨。また、ベンチにパウリーニョが復帰している。


前傾姿勢と使い分けの話

前節同じく松本は立ち上がりから強烈なプレッシングを仕掛ける。自らボールを握って組み立てていくスタイルが持ち味の宮崎だったが、横山歩夢らのプレスに浮足立ってしまう。
その隙を見逃さなかった菊井悠介が敵陣深くでボールを奪うと、シュートのこぼれ球に反応した横山が押し込んで幸先よく先制。宮崎が落ち着く前に急襲を仕掛け、わずか3分でネットを揺らしてみせた。

昨季と比べて、横山歩夢のプレッシングが上手くなっているのは間違いない。コースの切り方だったり、追い方が巧みになっており、リーグ屈指の快足をより高次元の武器に昇華できている印象。加えて、菊井悠介・住田将・村越凱光・榎本樹・小松蓮など、強度の高いプレッシングを行える面々を前線に並べたときの松本は、今までになく前傾姿勢を取れるようになっている。

一方で、チームの課題が露見してしまったのは先制後。開始10分くらいで宮崎が松本のプレッシングに慣れてくると、ボールを奪った後にテンポを落としてポゼッションできるようになってくる。こういった宮崎の姿勢に対して、松本は引いてブロックを組む選択をした。相手にボールを握られることは、これまでの宮崎の試合を見ていれば想定内だったはず。立ち上がりに強度高くプレッシングをかけて相手の最終ラインを混乱に陥れてあわよくば先制ゴールを奪いたい、その後はブロックを組んで宮崎のボール回しに対してじっくり向き合う。そういった意図が見えて取れた。

ところが、自陣でブロックを組む戦い方は、宮崎相手には悪手だったかもしれない。そもそも今季の松本はブロック守備の練度がいまいち高くない。以前のレビューでも書いているが、送り出しているメンバーがプレッシング向きであることと、キャンプから縦ズレ・スライドに代表されるように、自分たちから能動的に動く守備をトレーニングしていることが原因だと思う。しっかりと仕込めば練度上がっていくと思うが、今の時点ではまだまだという意味合いである。
対して、宮崎はブロック守備を攻略するのが上手い。というか、それを前提にトレーニングを積んできているチームである。誰かが動き出し、その動きに釣られた相手選手が空けたスペースを別の選手が利用する。いわゆる3人目の動き。場合によっては、空いたスペースを利用した選手もフェイクで、4人目の選手が登場することもある。

ブロックを組む守備の考え方は、「人を予め配置してスペースを埋めること」にあるのに対し、宮崎は「配置されている人を動かしてスペースを作り出すこと」に尖らせているチームといえる。そして松本の面々は、「持ち場を離れずスペースを空けないようにする守備」よりも、「相手選手に付いていって迎撃する守備」のほうが得意な傾向にある。
この組み合わせもあってか、松本は宮崎のオフザボールの動きやフェイクの動きに釣られてしまう場面が多く、前半15分以降はずっと苦労させられた。

プレッシングもブロック守備も両方できるに越したことはないのだが、昨季リーグ最多失点を喫したチームに多くは求められない。その中で名波監督はプレッシングを尖らせることを選択したというわけだ。その選択が悪いわけではなく、二兎を追って中途半端な結果になるよりは全然マシである。後は、一旦脇に置いておくことととしたブロック守備の練度不足という課題にいつ向き合うのか、それともあえて向き合わずプレッシングを極めるのか。ここはシーズン通しての中長期な戦い方となる部分で、すごく気になる部分でもある。

なんで気になるかというと、この日松本の守備ブロックが崩壊した要因のひとつに気温の高さがあったと考えているから。相模原戦のようにプレッシングに行く時間を長く確保することもできるチームなのに、前半10分で戦い方を切り替えたのは、先制出来たことも大きいだろうが、25度近い気温も影響していたはず。しかも試合数日前から急に気温が上がったので、選手の身体も適応するには時間が足らなかったと思うし。
いくらキャンプで走り込んだとは言え、最初から飛ばしすぎると早い時間帯にガス欠になるのは分かっていたはずなので、エネルギーを抑えたということだろう。ただ、前半30分以降と後半15分以降と比較的早い段階で足が止まってしまい、サンドバック状態になってしまったのは想定外だったかもしれない。

何が言いたいかというと、ここから夏に向けて気温はさらに上がるし、この日は20%程度だった湿度も上がっていく。選手にとって厳しいコンディションになっていくとは目に見えているので、さてどうしましょうかねという。もちろん選手の身体も適応していくのだけど、限界はあるはずなので。

そうなると、90分間全力疾走は出来ないので、どこかで落ち着く時間帯が欲しくなってくる。ブロック守備で受けに回ったときの強度を上げるか、自分たちでボールを握って呼吸を整える時間を作れるようにするか。継続して向き合わなければいけない課題である。


ホームだと空回りしちゃうのなんでだろうね

印象的だったのは、最終ラインに入った大野佑哉・常田克人・宮部大己の3人とも、センターライン付近でスライディングをしていたこと。
前貴之と接触してしまったり、失点に繋がってしまったので、余計にフォーカスしたくなってしまう。

個人的には、なんだから空回りしているように見えてしまった。ホームで勝ちたいという思いが強くなりすぎて、スライディングする必要のない場面でも滑っていたり。映像で見ている限りでは、芝に足を取られて滑ってしまったのとは違い、意図的なプレーに見えた。
最終ラインのの選手は、自分が突破されたらGKと一対一の場面を作られてしまうので、イチかバチかプレーは基本的にNGである。それこそカウンターで数的不利だったりしたら話は別だが、この試合で3人がスライディングしていたのは味方のフォローも十分にある場面。自分がかわされたときのリスクとボールを奪える可能性を天秤にかけたときに、リスクのが高いんじゃないかな?というシーンだったので気になった。

昨年9月からホームで勝てていなくて、今季まだ無失点に抑えた試合がないという状況はプレッシャーを感じる条件が揃っている。むしろプロとしては糧にして燃えてもらわないと困る。
ただ、ハートは熱くプレーは冷静に。これから経験を積んでいったら変わると思っているけど、焦りすぎないことも大事だよねという話。


総括

ちょっと今週は珍しく本業の予定がパツパツだったのと、季節の変わり目もあってか体調が思わしくなかったので、作図も入れないハイライトっぽいレビューになっちゃった。

具体的なプレーよりは大枠の話が多くなってしまって、シーズン途中で大枠の話にをすると褒めるよりも指摘することになりがち。とはいえ、開幕5試合で勝点10を稼ぎ、首位と勝点1差に付けているのは高く評価すべき。毎試合失点しているのも事実だけど、逆に毎試合得点が奪えているのも特筆すべきポイント。昨年あれだけ得点力不足にあえいだチームにとっては良い傾向だと思っている。

個人的には開幕5試合まではキャンプの延長戦みたいな位置づけで、ある程度チームの方向性だったり輪郭を見ている期間と考えていた。コロナだったりで不透明な部分こそありつつも、なんとなくの序列も分かってきている。相手チームにも対策されてくるだろうし、ここからが本格的な戦いかと。

次の区切りは5/15の長野戦に置いてみている。岐阜戦→2週間近い期間→ホーム連戦→10日くらい休み→ダービーという変則的な流れでありつつも、移動も少なく腰を据えて松本にいられるので、チームに新しいことを仕込んだり実践を踏まえての修正を入れるならこの期間かなと思っている。
そういう意味でも中断期間に入る前の岐阜戦、終わり方は大事だなので、気を引き締めて。

One Sou1


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