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#080 やさしいポートフォリオ分析(6) - 聞き方1つでアンケートの精度が変わる!「NPS」とは

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今回は、ポートフォリオ分析の6回目。

この特集の2回目で、「アンケートの作り方」についてご説明しました。
その中で、アンケートを作成する際には、必ず「その製品の総合評価」に関する質問をアンケートに入れておきましょう、という説明をしました。
なぜなら、この総合評価の点数は、ポートフォリオ分析において「重要度」を求めるための重要な材料になるからです。

この総合評価の質問に関して、最近よく使われる指標に「NPS」というものがあります。
ちょっと質問の聞き方を変えるだけでアンケートの精度がぐっと高くなることがわかっているため、ぜひ知っておきたいテクニックの1つです。

NPSとは

NPSとは「ネット・プロモーター・スコア」の略で、「顧客の継続利用意向を知るための指標」などと言われます。

なんだか難しそうですが、実際には、この特集でも扱ってきた「0点〜10点」のアンケートを、
「あなたはこの製品・サービスを、同僚や友人に勧めたいですか?」
という聞き方をする、というだけのことだったりします。簡単ですね。

NPSの計算方法

さて、この NPS という指標が特徴的なのは、その「0点〜10点」のアンケート結果の集計方法にあります。

通常であれば、この点数の平均をとることで「満足度」の値として集計すると思うのですが、NPSでは、まず、このアンケートで得られた結果を、以下の図のように3つの属性に分類します。
ポイントは、「5点が真ん中ではない」という点です。

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次に、2点や5点といった点数の値は無視して、以下の式でNPSの値を計算します。

NPS = 推奨者の割合 - 批判者の割合

例えば、100人にアンケートをとって、批判者が30%、中立者が20%、推奨者が50%だった場合、

NPS = 50 - 30 = 20

ということになります。

この NPS、実際の顧客の購買・推奨行動と非常に相関が高いことが統計的に示されており、シンプルですが強力な指標として知られています。

NPSの一般的な使われ方(その1) - 企業の「顧客ロイヤリティ」を数値化する

この NPS ですが、自社の NPS の値を定期的に測定し、同じ業界の他社と比較することで、経営目標として使用されることが多いようです。
例えば、以下のサイトでは、日本企業の各業界における NPS の高い企業が紹介されています。

NPSランキング&アワード - NPSソリューション | NTTコム オンライン
https://www.nttcoms.com/service/nps/report/

Wikipedia には、米国企業の NPS 統計(2011年なのでちょっと古いですが)が掲載されていました。
Apple の72%、コストコの77%、トレーダー・ジョーズの82%などは驚異的な数字です。
(トレーダー・ジョーズのエコバッグが一時期日本でも流行ったりしましたね)

これだけの顧客ロイヤリティを獲得している企業は今後かなり安泰だと言えます。

ネット・プロモーター・スコア - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%82%B3%E3%82%A2

NPSの一般的な使われ方(その2) - サービスや製品提供のいろいろなポイントで NPS を測定し、改善点を探る

また、自社のサービス・製品の複数の顧客接点において NPS を測定し、どのフェーズで NPS が落ちているかを見ることで、サービス・製品の改善を行うのに活用することもできます。

例えば、車を購入するケースを考えてみます。

・テレビで広告を見る
・ディーラーを訪問する
・試乗する
・購入の契約をする
・納車
・1年後の定期点検
・3年後の初回車検

これらそれぞれのタイミングで NPS を計測しておき、例えば「納車」→「1年後」の間で NPS が大きく下がったとすると、車本体の性能や使い勝手そのものに、何かしら問題を抱えている可能性があります。

なお、この複数の顧客接点を時系列にまとめたものを、「カスタマー・ジャーニー・マップ」と呼んだりします。

NPS のポートフォリオ分析への活用方法

さて、この NPS、今回の特集であるポートフォリオ分析でも非常に役立ちます。

この特集の3回目で「満足度のプロット」方法を扱った際、満足度の計算方法には

・(1) 平均をとる(AVERAGE関数)
・(2) 特に高い評価をした人数を数える(COUNTIF関数)
・(3) 特に低い評価をした人数を数える(COUNTIF関数)


の3つがあるとご紹介しました。

この満足度のプロットにおいて、(2) に対して「推奨者(9点以上)」、(3)に対して「批判者(6点以下)」というしきい値を使用することで、NPS の考え方をポートフォリオ分析に活用することができます。

まとめ。

(1) NPS とは「ネット・プロモーター・スコア」の略で、企業・サービス・製品に対する顧客ロイヤリティを測定する指標として良く使用されます。

(2) NPSは、11段階評価の結果を「批判者(6点以下)」「中立者(7点・8点)」「推奨者(9点・10点)」の3つに分け、推奨者の割合から批判者の割合を引くことで指標を計算します。

(3) ポートフォリオ分析においては、そのサービス・製品の総合評価を聞く際に「そのサービス・製品を同僚や友人に勧めたいですか?」という聞き方にした上で、批判者がネガティブに感じている要素、推奨者がポジティブに感じている要素を抽出することで、NPS の考え方を分析に活用することができます。

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(ここに書かれている内容はいずれも筆者の経験に基づくものではありますが、特定の会社・組織・個人を指しているものではありません。)

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