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#076 やさしいポートフォリオ分析(2) - アンケートの作り方・集め方

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今回は、ポートフォリオ分析に関する特集の2回目。

分析を行うためには、そのもとになるデータを集めるためのアンケートが必要です。

どんなアンケートを、どのくらい、どうやって集めたらいいかについてまとめたいと思います。

基本的なアンケートの形

ポートフォリオ分析に使用するアンケートの基本的な形は以下のとおりです。
(細かいところは簡略化しています)

アンケート雛形

(1) プロフィールについて
後でセグメントに分けた分析ができるように、必要最低限のプロフィールを聞いておきます。
氏名や住所など、分析するのに重要でない、しかも管理が大変な個人情報は最初からとらない方が良いと思います。
性別について、「男性」「女性」の2つしか選択肢を用意しないのは最近は NG ですので気をつけましょう。

(2) その製品の各要素の評価
分析したい要素について、1(最悪)〜10(最高)のだいたい10段階くらいで聞きます。
場合によっては、「友達に勧めたいですか? 1(勧めたくない)〜10(是非勧めたい)」のような聞き方をすることもあります。

(3) その製品の総合評価
あとでポートフォリオ分析の縦軸である「重要度」を計算するのに、この総合評価の数字が必要になってきます。
忘れずに項目に入れておきます。

(4) 個人情報の取扱に関する注意書き
これも忘れずに入れておきましょう。
そのアンケートの内容に個人が特定できるような情報が含まれていない場合には不要ですが、一つ一つの情報からは個人を特定できなくても、複数の情報や、別のアンケート結果と付き合わせることで個人が特定できてしまう場合もあります。

どのくらい集めたらいいのか

次に考えたいのは、このアンケートを何枚集めたらいいのか。
私は、シンプルに「最低100人分集める」ことを目標にするのが良いと思います。

100人分、の根拠は以下の表の数字です。
言葉の意味は深く考えず、左端の「母集団」の列と、右端の「標本誤差10%」の列の数字をみて下さい。

サンプル数

右端の数字は、左端の母集団の人数全員の意見を、誤差10%で推定するためには何人から意見を聞かないといけないか、という数字を表しています。

注意して頂きたいのは、左端の「母集団」の数が増えても、右端の「必要なサンプル数」の増え方はだんだん頭打ちになってくるところです。
この表によると、誤差10%で良ければ、だいたい100人分の意見を聞けばどんなに大きな母集団であってもその意見を推定することができる、ということになります。

実際のアンケートでは、標本誤差5%を目標に、400人分のアンケートを目標にすることもありますが(400人の根拠は、上の表を見て下さい)、製品開発に活かすためのポートフォリオ分析であれば、標本誤差10%で十分だと思います。

ターゲットを明確に

100人分が目安、と書きましたが、その際に気をつけないといけないのが「ターゲットを明確にする」という点です。
例えば、20代の男性に向けた商品開発をするのに、40代女性にアンケートをとってしまったら、それは何人分集めてもおそらく意味の無いデータになってしまうでしょう。
100人分のアンケートが意味を持つためには、その100人が、話を聞きたい「母集団」に含まれている人でないといけません。

自社のこれまでのお客さまが母集団の場合、既に自社内に顧客データベースがあることも多く、アンケートは比較的とりやすいと思います。
一方で、これまでのお客さんの数が少ない場合、アンケートの人数が集まらない可能性があります。
(100人にアンケートを送っても、全員が返してくれるとは限りません。100人分のアンケートを集めるためには、その1.5倍〜2倍程度の人にアンケートを送る必要があります。)
また、これまでに無い新商品を開発して、新しい層の顧客を取り込もうとする場合、これまでの顧客データベースはあまり役に立ちません。

年齢や性別の他にも、顧客のセグメンテーションには以下のような要素があります。
これらを踏まえて、どのような母集団をターゲットにするのかを予め明確にしておかないと、いくらアンケートをとっても無駄になってしまいます。

セグメンテーションの例:
・ジオグラフィック → 国・地域など
・デモグラフィック → 年齢・性別・職業・所得・家族構成など
・サイコグラフィック → 価値観・ライフスタイル・趣味など
・行動変数 → 購買行動(いつ買うか、店で買うかネットで買うか、など)

せっかくアンケートをとるのですから、ターゲットを外さないようにすることが大切です。

自社で全部やるか、業者に依頼するか

世の中には、こうしたアンケートに関して、アンケートに答えてくれる人を探すところから、アンケートの作成、調査、集計までワンストップで行ってくれる業者があります。
自社で顧客データベースを持っていない、アンケートに関するノウハウがない、と言った場合には、こうした業者さんにお願いするのも良いと思います。

Google で 「アンケート 業者」で検索するとたくさん出てきます。
見積りは無料のところが多いと思うので、複数の業者にやりたいことを伝えて、見積りをもらうのが良いでしょう

料金ですが、ざっくり、1質問項目あたり50円〜200円くらいがだいたいの目安のようです。
例えば、100人に10問のアンケートをとる場合、100人 x 10問 x 100円 = 10万円、くらいが基準となります。

もし、自社で既に顧客データベースを持っており、アンケートを聞いてみたい顧客がはっきりしている場合(例えば、現行商品のユーザーの意見を聞いてみたい場合)には、自社でアンケートを用意して、調査・集計まで自分たちでやるのが良いと思います。

オンラインか、オフラインか

アンケートの取り方には、オンライン(インターネット上にアンケートのフォームを用意して回答してもらう)と、オフライン(実際に紙のアンケートを用意して、それに記入してもらう)があります。
最近はオンラインのアンケートが主流ですが、例えば、展示会に来てもらったお客さんに意見を聞く場合などは、対面で紙のアンケートを書いてもらうのも良いと思います。

また、アンケートに記入してもらうことを口実に営業のアポをとって、客先訪問のきっかけにする、といった使い方もあります。
必ずしもアンケートは一度に100枚とる必要はありません。客先を訪問する度に、少しずつアンケートを集めて、まとまったところで修正・分析する、というやり方も有効です。

自社でオンラインのアンケートを行う方法

自社でオンラインのアンケートを作る方法ですが、最近は Google Form で作ることが多くなりました。
無料で使えて高機能なので、普通の企業で使う分には特に不自由することは無いと思います。

Google フォーム - アンケートを作成、分析できる無料サービス
https://www.google.com/intl/ja_jp/forms/about/

集められたアンケートは自動的に Google Spread Sheet にまとめられます。

回答率や回答の精度を上げるためのノウハウ

自社でアンケートをとる場合、回収率を上げたり、回答の精度を上げたりするためのノウハウを活用しましょう。

例えば、アンケートの回答率を高めるための施策として、アンケートを回答してくれた方に対して報酬を出すことがあります。
アンケート報酬というと、一昔前は QUO カードを郵送で送るのが定番でしたが、最近は Amazon ギフトコードをメールで送ることが多くなりました。
封筒に入れて送る手間が省けるのでだいぶ楽になりました。
報酬の配布方法としては、全員に配る、抽選で5人に配る、などのやり方があります。

あまり高額な謝礼を配ってしまうと、「景品表示法」の規制対象になる可能性があるので注意しましょう。特に、展示会でアンケートを行う場合、アンケートの謝礼目当てにお客さんがブースに来ることがあります。その場合、単なるアンケートの謝礼ではなく、「お客さんをブースに呼ぶために謝礼を出している」と判断されてしまい、「景品表示法」の規制対象になってしまうことがあります。

上記はアンケートの回収率を高めるための施策でしたが、別の観点として、「アンケート回答の品質」を高めるための施策も必要です。
アンケート回答の品質とは、要するに「どれくらい真面目にアンケートに記入してくれているか」のことです。

報酬ほしさに適当に記入する人が多くなってしまうと、正確な分析は難しくなってしまいます。
例えば、アンケートの途中に「50文字以上文章で回答を記入する」ような設問をはさむことで、本気で回答しようとしていない人をそこでふるい落とす、といったテクニックを使うこともあります。
(この場合、回収率が下がってしまうので、いい感じのバランスを見つける必要があります。)

まとめ。

(1) ポートフォリオ分析を行うためには、その元データとなるアンケートを作成し、回答を集める必要があります。アンケートでは、回答者のプロファイル、要素毎の評点、全体的な満足度、を聞く必要があります。

(2) アンケートは、概ね100人分集めることができれば、一般的な分析には十分です。ただし、アンケートを依頼する回答者が、意見を聞きたいターゲットに含まれているかどうかはきちんと確認する必要があります。

(3) アンケートをとる場合、自社で全て行う方法の他に、アンケートをとってくれる専門業者にお金を払って依頼する方法があります。それぞれメリットとデメリットがありますので、自分たちの実力を勘案してどのように進めるのか決めていきましょう。

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(ここに書かれている内容はいずれも筆者の経験に基づくものではありますが、特定の会社・組織・個人を指しているものではありません。)

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