見出し画像

#007 中小企業のグローバル化は大企業よりも早く進む

画像1

(本記事は、2019年4月に書かれたものになります)

先日、以下のようなニュースが出ていました。

成長しない会社買います、オリックスが事業承継支援に本格参入 - Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-04-05/PPH0Z46JIJUO01

「成長しない会社買います」という見出しが目を引きますが、以下のプレスリリースを読むと、

事業承継支援で2企業の株式を取得│オリックス株式会社
https://www.orix.co.jp/grp/company/newsroom/newsrelease/190405_ORIXJ.html

投資案件の条件を引き下げて、成長率が低くても地域の産業にとって重要な会社には積極的に投資し、承継をサポートしていこう、という方針のようです。

人手不足なのは働き手だけでなく経営者も同じで、跡継ぎがいないために廃業する中小企業が後を絶ちません。オリックスさんはそこをサポートしていくところにビジネスチャンスを感じておられるのだと思います。

人手不足と言えば、今年の4月に入管法が改正され、より外国の方が日本で働きやすいような環境作りが進められています。
この傾向が進むと、いずれは、中小企業の経営も、外国から来られた方々が承継していくようになる可能性もあると思います。
もしかしたら、意図せず中小企業の経営がグローバル化し、競争力向上につながるかもしれません。

逆境こそがチャンス、になる可能性はあるのではないかと思います。

中小企業の承継問題

中小企業の動向に関しては、中小企業庁が発行している「中小企業白書」が参考になります。
承継問題に関しては、平成28年度(2016年度)の白書に詳しく載っています。

平成28年度(2016年度)の中小企業の動向 - 3 廃業企業の現状
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H29/h29/html/b1_2_1_3.html

以下は、白書中にある休廃業・解散企業の売上高経常利益率。
なんと、半数以上の企業が黒字で、中には経常利益率20%を超えるような企業も6%ほどあったりします。

画像2

一方、以下の図は休廃業・解散企業の経営者の年齢。
約9割が50歳以上。ボリュームゾーンは60代。

画像3

こうした数字から、会社は上手く回っているのに、経営者の高齢化が進み、後継者がいないため仕方なく廃業している中小企業の姿が見えてくると思います。

国としても様々な対策を打っており、例えば平成31年度の税制改正では、10年間限定で贈与税・相続税を100%納税猶予する「個人版事業承継税制」が創設されました。
この施策のおかげで、通常は承継時に発生する贈与税・相続税のキャッシュアウトフローを軽減することができます。

平成31年度税制改正のポイント
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/2018/181221yosan12.pdf

当然ですが、利益を出している企業というのは、それだけ社会に対して付加価値を提供しており、法人税も払っておられるはずです。そうした企業が廃業するというのは社会にとっても大きな損失です。

改正入管法

ことしの4月から、改正入管法が施行されました。

入管法及び法務省設置法改正について | 出入国在留管理庁
http://www.immi-moj.go.jp/hourei/h30_kaisei.html

これにより、建設、外食、介護、農業といった14業種で、外国人労働者の受け入れが行いやすくなります。

ちなみに、企業の経営を行う方に関しては、今回の改正入管法とは関係なく、もともと在留資格を取得することが可能でした。

法務省:投資・経営
http://www.moj.go.jp/ONLINE/IMMIGRATION/ZAIRYU_NINTEI/shin_zairyu_nintei10_05.html

ただ、このカテゴリーで想定している経営者は、外資系企業の日本法人に本国から送られてくるような方を想定されていたのでは無いかと思います。
しかし、今後は、今回の改正入管法が対象としている建設・外食・介護・農業といった中小企業で外国人労働者の数が増えてくると、そのような中小企業の経営も外国人の方が担うようになってくることが増えるのでは無いかと思います。

外国の方を日本の中小企業の経営者として育成する取り組み

実際、将来の幹部候補を外国人に求め、計画的に育成していこうという動きが出てきているようです。
以下の例では、ベトナム人の学生さんを将来の経営者候補として育成しておられます。

中小企業の幹部 外国人を起用へ|けさのクローズアップ|NHKニュース おはよう日本
https://www.nhk.or.jp/ohayou/digest/2019/02/0204.html

こうした中小企業の外国人経営者が増えることは、当初は人手不足に起因するやむにやまれず事情であったとしても、いずれはその企業の競争力を高めることになるのではないかと期待しています。
例えば海外展開。これまで日本国内にしか販路を持っていなかった中小企業が、その経営者が外国の方になった結果、その母国に販路を広げていくようなことは可能性として高そうに思います。

まとめ。

(1) 中小企業の承継問題は喫緊の課題です。経営者の高齢化が進んでいて、2016年度の中小企業の黒字廃業は50%を超えています。

(2) 少子化に起因する日本の人手不足はこれからも解消される見込みがなく、入管法の改正などの施策を通じて外国からの働き手の方々に頼る必要が出てくると思います。

(3) ゆくゆくは中小企業の経営者の方々の外国人比率も上昇してくるでしょう。それでも人が集まりやすい大企業と比べ、人手不足の中小企業の方が外国人経営者の比率が高くなる可能性すらあると思います。結果、グローバルな視点をもつ中小企業の経営者が増えれば、海外展開も進みやすくなり、中小企業の競争力向上につながるのではないかと期待しています。

----------
(ここに書かれている内容はいずれも筆者の経験に基づくものではありますが、特定の会社・組織・個人を指しているものではありません。)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?