#066 企業が副業を解禁することで得られる3つの効果
(追記: この記事は2020年の5月に書きました。)
緊急事態宣言も解除されるとのことで、少しずつではありますが、日常の生活が戻ってきそうな雰囲気になってきました。
とはいえ、資金繰りの厳しい会社さんも多く、持続化給付金がなかなか振り込まれないなどの話も聞こえてきます。もっと迅速なサポートが受けられるようになると良いと思います。
一方、社員の働き方にも様々な変化が起きており、例えば、ここ2ヶ月ほど自宅からテレワークを行っている人も多いと思います。
一度テレワークの効率の良さを体験してしまうと、もう以前のように通勤したくない人も多いのではないでしょうか。
緊急事態宣言がもたらした働き方改革
コロナ以前も「働き方改革」は経営テーマの1つになっていましたが、かけ声こそ大きかったものの、実際に行われていたのは無理やり残業時間を減らす取り組みだけであったり、その施策は必ずしも本質的なものではありませんでした。
#025 その残業規制に因果関係はありますか?|多田幸生(中小企業診断士)|note
https://note.com/yukio_tada/n/ncea283f21f9e
しかし、今回の緊急事態宣言で否応なしにテレワークを導入したことがきっかけとなり、会社にいる時間に対して給与を払うのではなく、アウトプットに対して給与を払うという考え方へのシフトが進んでいくと思います。
テレワークがもたらすアウトプットによる評価へのシフト
もともと日本企業のホワイトカラーの生産性の低さは問題にされてきました。
主な理由は、働く時間で給料が決まっていたことにあると思います。残業代を稼ぐために長時間労働をするというインセンティブが働いてしまっていました。
テレワークでは、本当に仕事をしているかどうかを上司が目で見て確認することができません。
当面は始業時刻と終業時刻を自己申告で申請し、その申告に基づいて残業代を支払うことになると思いますが、いつまでもそのような裁量を認めるわけにはいかないだろうと思います。
結果、アウトプットで成果を測る傾向が強くなり、業務効率の高い人、単位時間あたりのアウトプットが大きい人が徐々に評価されやすくなるでしょう。いいことだと思います。
在宅勤務が中心になると、社員の会社に対するロイヤリティが変わってくる
このようにテレワークが進むと、優秀な人ほど自分の裁量で業務を進めることが可能になり、空いた時間で自己啓発であったり、副業を行うようになってくるでしょう。
これまでは所属している会社に自分のキャリアを預けることしか頭になかった人が、新しい自分の居場所を探し始めるのは自然の流れだと思いますし、会社としても、こうした優秀な社員の副業を認めざるを得ない状況になっていくと思います。
こうした副業解禁の傾向は、働く側だけではなく、会社にとっても以下のようなメリットがあると考えます。
1. 社員の心理的安全性を高める
最近、上司のパワハラや業務のプレッシャーなどにより、社員が体の不調を訴えるケースが増えていると聞きます。
関連してよく言われるのが「心理的安全性」という言葉です。Googleさんの社内リサーチ(プロジェクト・アリストテレス)で有名になった言葉ですが、「チームの中で自分の思ったことを自由に発言しても不利益を被らない」状態のことを言うそうです。
プロジェクト・アリストテレスの日本語訳:Googleが発見したチームのパフォーマンスを最大化する方法 - Qiita
https://qiita.com/ino-shin/items/75e32c9202ae5c29ad5c
この心理的安全性を高めるには何が重要なのでしょうか?
心理的安全性 = パワハラをやめる、みたいに単純に捉えられることも多いですが、こうした原因をすべて社内の人間関係のスキルに帰結させるのは現実的には無理があると思います。社内のコミュニケーションを増やせばよい、といった単純な話ではありません。
ここで重要になってくるのが、社外にも自分の居場所があるかどうか、だと思います。
収入的にも、いざ今の会社を辞めることになっても何とかなる、という意識を社員が持つことができれば、今いる会社に対しても自分の思っていることを言えるようになるのではないでしょうか。
逆に、ある1つの会社に自分の人生を依存してしまうと、その会社で上手くいかなくなってしまったときの絶望感が大きくなってしまいます。
今いる会社の外に自分の居場所があることは、その会社における心理的安全性を高めることにつながると思います。
2. 優秀な人材の引き留め
優秀な社員が会社を辞める理由の1つに「自分のやりたいことができない」というものがあると思います。
優秀な人ほど、自分の実力を試したい、自分の興味のある仕事がやりたい、という自己実現の欲求を持っているものです。
こうした社員に、もし副業で自分のやりたいことができるチャンスが与えられるとしたらどうでしょうか?
会社を辞める前に、副業で自分のアイデアや実力を試すことができれば、すぐにやめてしまうことが防げるように思います。
また、一度社外で自分の力を試してみたけれど、期待していたほどおもしろい仕事ではなかったとか、まだ自分の力が足りなかったことに気がつき、今の会社の良さを見直すようなこともあるのでは無いかと思います。
3. 新規事業の立ち上げ、自社のポートフォリオの拡大
今回のコロナ影響で、ビジネスに大きなダメージを受け、事業の転換が必要な会社は多いのではないかと思います。
特に、観光や飲食、スポーツジム、ライブや映画など、人が移動したり集まったりしないといけない業界は以前のようなビジネスは難しくなるかもしれません。
何か新しいビジネスを始めるには相当の苦労が必要です。社内で新規事業を推進するような提案制度を作ったとしても、意志決定プロセスが変わらない限り新規事業はうまくいきません。
別組織にして思い切った権限委譲を行い、意志決定プロセスのスピードアップを行わないといけない、というのは、頭では理解していても実際にそれを実行するのはとても難しいものです。
このあたりを上手にやられているのが、SONY さんの SAPという仕組みです。
自社の社員を、新規事業のために作った子会社に期限付き移籍させることで、スタートアップのようなスピード感を実現しています。
Sony Japan | ニュースリリース | ソニーの「Seed Acceleration Program(SAP)」社外のスタートアップに対する支援を拡充
https://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/201812/18-096/
もし、社員による副業が可能になれば、籍を会社に置いたまま、副業でチームを作ってあたらしいビジネスをスモールスタートできる場が整います。これにより新しい事業が興せれば、会社にとっても自社のポートフォリオを広げることにつながるのではないかと思います。
まとめ。
(1) 今回のコロナ影響でテレワークを行う会社が増えました。これをきっかけに、会社は時間による成果管理からアウトプットによる成果管理への移行が進み、生産性向上に向けた本質的な議論が始まるものと考えられます。
(2) テレワークが進みアウトプットによる評価が進むと、自分の時間を有効に使える優秀な社員ほど、副業への意識が高まってくると思われます。こうした優秀な社員の意向を尊重することが、会社にとってより重要になってくると思われます。
(3) 副業は、会社側にとっても、社員の心理的安全性を高める、優秀な人材の流出を防ぐ、新規事業を生み出すきっかけになるなどの良い効果が得られる可能性があります。このタイミングで積極的な施策をとることができる会社が今後成長していくのではないでしょうか。
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(ここに書かれている内容はいずれも筆者の経験に基づくものではありますが、特定の会社・組織・個人を指しているものではありません。)
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