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もしも…あなたが外国人と「日本語で話す」としたら?

先日、とても興味深い本を読みました。

もしも…あなたが外国人と「日本語で話す」としたら


ちょっと古い本ですが、「外国人と日本語でやりとりする際に、様々なシーンで起こりうる問題を考察し、解決策を探る」という内容で、なかなか面白かった!

最初に出てくる事例は、自宅にホームステイしている留学生を「子ども扱い」するというもの。彼にだけフォークやナイフを出し、お箸を上手く使おうものなら「あらあら上手ねぇ!」と大げさに褒めたり、ちょっとした日本語にも「まぁ、すごい!」と褒めたたえ、相手が気分を害しているのにも気づかず、「子ども扱い」してしまうというもの。

これ、すごーく分かります!

私、テレビ東京の「Youは何しに日本へ」が好きでよく見ていたのですが、毎回気になっていたことがあって。それは、外国人の方々が「ダイジョウブデス」とか「アメリカカラキマシタ」など、ほんの少し日本語を使っただけで、「わぁ~、日本語すごーくお上手じゃないですか~!!」「どうしてそんなに日本語しゃべれるんですか?!」などとスタッフが大げさに褒めること。

その度に、なんとも居心地の悪い気分になってしまうのですよね…。これって私たちが海外(英語圏)に行って、"Thank you"とか"I’m from Japan"レベルの英語を発しただけで”Wow!!! Your speak AMAZING English!!!"とか、「わぁ!英語すっごく上手ですね!!」なんて言われるのと同じことですよね。こんな風に言われて嬉しいでしょうか…。

もちろん、会話が発展していく中で、「日本語お上手ですね!」"You speak good English!!"という流れになるのは分かるのですけど。まるで、自転車に乗っていたら、見知らぬ人に「わぁ、すごい!じてんしゃ、のれるのね!おりこうさんだね!」と言われたような気分です。


私の7日間のメルマガでは、学生時代にカナダでホームステイをした話を書いています。そして、note記事では、カナダで泣きながらお寿司を食べたエピソードも書きました。

ホームステイ先での初日のディナーはとっても大きなステーキだったんです。そして、私の前にだけお箸が出されていました。年上のホストシスターが、「日本ではこうやって食べるんでしょ?」と、カットしていない特大ステーキを無理やりお箸ではさみ、口にくわえてかみちぎろうとしてみせました。私は困惑して「日本人もステーキにお箸は使いません」と、ナイフとフォークをお願いしたのを覚えています。

私のためにお箸を用意してくれたのは、ホストファミリーの善意だったと思います。とはいえ、お皿に顔を近づけ、ステーキを噛みちぎろうとしたホストシスターのジェスチャーは、何だかちょっとバカにされたような、屈辱的にも感じました。こちらのホストファミリーは、今まで何度も日本人学生を受け入れてきていたので、なおさらです。

この本に出てきた留学生のホーマー君も、日本のホームステイ先で、自分だけにはナイフとフォークを出されて、(しかもキティちゃんのリボンで束ねてある)同じような気持ちだったのではないかなぁ…。


次に紹介されていた事例は、読んでいて思わず吹き出してしまった。(笑う所ではないのですが)

ロシア人のサシャさんは、日本で通訳の仕事をするほど日本語が流暢。ある時、仕事で郊外に行き、次の電車まで1時間あるので先に来る特急に乗りたいと思い、「次の特急は普通の切符で乗れますか?追加料金が必要ですか?」と駅員さんに日本語で聞いたそう。すると、駅員さんは困ったように黙り込んでしまったというのです。そしてサシャさんをチラッと見ては、目をそらしたり。サシャさんが日本語を話していると気づいて、やっと返事をするまでしばらくかかったそう。

外国人らしい顔立ちの人を見た瞬間に、その人は日本語ができないと決めてかかり、「この人は外国人だから、私は外国語で話さなければならない」「英会話ができないから、外国人と話すなんてとんでもない、どうしよう…」と困惑したり、ときに小パニックを起こしたりするタイプの人は、意外なほど多くいるものです。

相手は外国人だから日本語なんてできっこない、と決めてかかかってしまうタイプの人たちを、この本では「外見予断型」と呼んでいます。

また、自分が外国語ができる場合、日本語で尋ねられているのに外国語で答えてしまうのも、この型のバリエーションだそう。

この事例を読んだときに思わず笑ってしまったのは、私は日本人でありながら、イヤというほどこの経験をしているからです。

自分では「私ってハーフ/外国人顔よね」などと思ったことは本当に一度もないのですが、この「外見予断型」の方たちには何度も遭遇しました。

サシャさんと全く同じ経験をしたこともあります!

若い頃、仕事の面接で初めての場所に行かなければならず、到着したバスの運転手さんに「すみません、このバスは〇〇駅に行きますか?」と聞いたのです。もちろん日本語で。

すると運転手さんは、あわてふためいて「ノー!ノー!」と腕を顔の前で大きく振ったのです。私は何が起きているのかわからず、きょとんとしてしまいました。お茶目な運転手さんで、何かふざけているのかな?とも思ったり。少し経って、あっ、私のこと外国人だと思ったんだ…日本語が通じないと思ったんだ…やっと状況がのみこめました。

その前には、小規模な国際会議の事務局で短期間働いていたのですが、遅いランチをしにセルフサービスの食堂へ行くと、もう冷たくなったお料理しか残っていなかったんですね。

すみません、何か温かい食事はありますか?」と(もちろん日本語で)聞くと、中年の日本人シェフは私の顔を見て「アイウィルヒートディスウィズマイクロオーブン、オーケー?」と大きな声で言ったのです。

私は困惑して固まってしまいました。少しして、あー!私のこと、日本語が分からないと思って「電子レンジで温めますね」と(片言の)英語で言っているのねと理解しました。

相手に恥をかかせたくなかったので、とりあえずうなづいて、温めてもらったお料理を受け取ると、小声で"Thank you"と言って、そそくさとその場を去りました。

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私はハーフや外国人と勘違いされたり、英語で話しかけられること自体は特に何とも思っていません。小さな頃から慣れているのと、私だって、平井堅さんみたいなエキゾチックな顔立ちの方を見たら、「どちらのルーツの方かな?」と気になったり、興味を持つからです。

(ちなみに、私は平井さんの濃さとはほど遠く、自分ではなぜハーフと聞かれるのかもわかりません)

たまに、「あっ、ごめんなさいね!ハーフじゃないのね。失礼なこと言ってごめんなさいね」と慌てて謝られることがありますが、外国人やハーフに間違われることが「失礼」だとも思いません。むしろ、必死に謝罪される方がかえって失礼に感じます(私にではなく、外国人やハーフの方に…)。

ただ、こちらが日本語で話しているのに、見た目で決めつけて、あわてふためいたり、片言の英語で返してくる、いわゆる「外見予断型」の人たちには複雑な感情を抱いています。

通訳ガイドをしていた頃、下見のため、都内各所の観光案内所に立ち寄ることがよくありました。そういう場所へ行くと、たいてい外国人観光客と間違われるので、私は相手に「ハロー」などと言う隙は一切与えず(笑)、常にこちらから「こんにちはー。すみません、地図を一部いただけますか?」などと声をかけていました。

それでも「イングリッシュマップ?」と返ってくることが何度もありました。「いえ、日本語のでお願いします」と言っても、「ウェア―アーユーフロム?」などと聞かれて埒が明かず、結局、英語の地図を渡されて帰ってきたこともありました。

…こういったやりとりを何度も経験した私が感じているのは、「外見予断型」の人たちは「人の話をきちんと聞いていないのでは?」ということと、「自分の思い込みにとらわれてしまって、物事の本質が見えなくなっているのでは?」ということです。

私、病気をしてからテレビをよく見るようになって、出川哲朗さんの電動バイクの旅もよく見ていたんですね。(そう、テレビ東京が好きなんです!笑)

地元の人たちのお宅で充電をさせてもらったり、食事をごちそうになったり、ほのぼのして面白いんですけど…失礼ながら、出川さんって人の話をあまり聞いていないのかな、と思うことがよくありました…。

たとえば、旅先で外国人観光客と出会い、片言の英語でコミュニケーションをはかる中、相手が何度も「オーストリア」と言っているのに「あー、オーストラリアねー!」みたいな聞き間違いが多かったり(日本語でも)。話がかみ合ってなくて、ご自分の中で完結しているように見受けられることがよくあって。そういう「天然キャラ」として、テレビで演出しているだけなのかもしれませんが。

私は何十年もの間「外見予断型」の方たちの不可解な行動にさらされたおかげもあり、相手の話を注意深く聞き、相手を理解するように努めるクセがついたと思っています。

それは英語を学ぶ上でも、すごく役立っています。

昔、国際交流パーティ的な所でグループで自己紹介をしていた時、屈強な体をスーツに包んだアメリカ人男性が、"I work in the securities industry."と言ってから、「証券会社ね」とわざわざ日本語で付け足したのですね。

securityというと警備のセキュリティがまず思い浮かびますが、securitiesと複数になると有価証券という意味になるのですよね。「セキュリティ(ズ)の仕事をしている」と言うと警備員と勘違いされるので、わざわざ日本語で「証券会社」と説明したのでしょうね。

すると、その場にいたサラリーマン風の日本人男性が「オーケー、オーケー、ユー・アー・セキュリティガード?たくましい体だもんね~」ニコニコと言ったのです…。

冗談で言っているのではなさそうでした。あれ?わざわざ「証券会社」と日本語で説明してくれたの聞いていなかったのかな…?不思議に思いました。

たくましい体つきと"security"という言葉で、security guard(セキュリティガード、警備員)というイメージ・思い込みができてしまったようです。

聞こえた単語から意味を推測するのは大切だと思います。でも、せっかく投げてくれたキーワードを無視して、自分の想像で勝手にストーリーを作り上げてしまうのはどうでしょう?その後のコミュニケーションもうまく進んでいませんでした。

そうそう、その方は確かパイロットになりたくて英語を勉強しているとおっしゃっていたのですが、神経質で疑い深い私は、「この人の操縦する飛行機にはあまり乗りたくないな」と失礼ながら思ってしまったのでした!

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最近、オンラインで海外の人に日本語レッスンを始めたので、その参考になれば…と読み始めたこの本ですが、私が若い頃から悩まされていた(というか遭遇してきた)現象に「外見予断型」という名前があるのを知ったことも、大きな収穫でした。全ての現象をカテゴライズしたり、名前をつける必要はないと思いますが、ずっとモヤモヤしていたことが言語化されていて、とてもスッキリしました。

日本語を教えようと思っている方、英語やその他外国語を学習している方、また外国語や外国人に縁がない方にも(そういう方こそ)、こちらの本はおススメです。


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