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東独にいた 1巻・2巻感想

こんにちは、雪乃です。

本日、やっと宮下暁先生の漫画「東独にいた」を購入できたので、感想を書きます。
ネタバレしまくると思うのでご注意ください。

舞台は、1985年の東ドイツ。
主人公は、小さな本屋を営む日本人の青年・ユキロウに恋心を抱く女性アナベル。
彼女は、ユキロウの前ではハイヒールを履いて「普通の女性」として振る舞っていますが、その職業は軍人。
しかも、アナベルは多目的戦闘群(通称MSG)と呼ばれる身体改造を施された特殊部隊の一員で、反政府組織の構成員と戦っています。

一方、反政府組織「フライハイト(ドイツ語で自由の意味)」を束ねるのは、フレンダー(見知らぬ人)と呼ばれる人物。

そのフレンダーの正体は、アナベルが想いを寄せるユキロウだった。

……というのが第一話のあらすじです。

めっちゃ面白くないですか?

多分、読んでもらって方が早いので、読んでください(先生のツイッターアカウントで1話と2話が公開されてます)。

「東独にいた」の魅力は、モノクロの映画を見ているような表現方法。
陰影のコントラストがはっきりした絵は、あんまり漫画らしくなくて、映像に近い。

もう一点、絵の魅力をあげるとすると、やっぱりキャラクターの目でしょうか。
台詞ではなく、目で語る描写は圧巻。
私のオタクとしての信条に、「目の描き方が上手い漫画は信用できる」というのがあるのですが、私の考えは間違ってなかったなぁと実感。
特に、ユキロウの目はシーンによってさまざまな色や感情を見せてくれるので、ぜひ実際に読んで体感してほしいです。

MSGとフライハイト、どちらのキャラクターもすごく魅力的で、どっちも応援したくなります。
フライハイトに勝って欲しい気持ちもありつつ、でもMSGにも負けて欲しくない。
対立するイデオロギーの中、アナベルとユキロウの関係性はどこへ向かうのか。

ちなみに私は、MSGでは尋問の天才・イシドロ、フライハイトではスナイパーの雨(ウイ)が好きです。早く表紙を飾ってほしい。

基本的には歴史モノの群像劇ですが、「神軀兵器」と呼ばれるMSG隊員たちのSF設定がスパイスになっています。

ロミオとジュリエット的な王道展開も押さえつつ、「ベルリンの壁崩壊直前の東ドイツ」を舞台にした人間ドラマ。
そしてシリアスの中に挟み込まれる、絶妙なギャグ。
基本がシリアスなので、笑い要素はそこまで多くはないんですが、その分ちょっとしたネタの面白さが、不穏な空気が漂う本編の中で輝いています。
個人的には、MSGメンバーのエッボが仲間のイーダとクロードに引き延ばされちゃうシーンが好き。

ここ一年くらいでは一番面白い作品だと思うので、とにかく読んでください。

第3話は本当にエモいから読んで。

ここからがっつりネタバレします!





個人的にヤベェなってなったのが、第3話。

2話で、アナベルの両親がフライハイトのテロに巻き込まれて亡くなった後の話。

いや、まさかね?

公式でユキロウの床ドンが見られるとは思ってなかったよ!!!!!!
何なのあれ。やば。ユキロウ、貴方読者を殺す気ですか。
衝動的に走り出して、アナベルの手を引っ張ってからの、床ドン!!!!!
からの、「お前のせいじゃないだろ」は無理。そんなんズルイですよ。ギャップ萌えですよ。

そもそも、アナベルの両親が亡くなったのはフライハイトのテロ行為が原因で、ユキロウはフレンダーとしてそれを指図したはずなのに。
それなのに、「悪いのは基地を爆破した連中だろう」って言っちゃうんですよ。

ユキロウとしては落ち着いた好青年、フレンダーとしては冷静で冷酷なテロの指導者。

でも、このときのユキロウは、ユキロウでもフレンダーでもない気がするんです。

一方のアナベルは、軍人として人の死に関与してきた結果、死で涙を流すことはなくなっていました。
それなのに、ユキロウに「本心を語れよ」といわれたことで、彼の前で泣きます。

涙を流すアナベルと、それを見つめるユキロウの苦しげな表情が、とにかく胸に刺さりました。

二人は対極にいる存在のはずだけれど、どこかでお互いに共感を覚えていて、意図せずして相手の人間の核の部分を炙り出している。
単なる「許されない恋」では終わらせないところが、「東独にいた」の魅力だと思います。

早く3巻が読みたい。

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

終始駄文乱文でしたが、「東独にいた」の魅力が少しでも伝われば幸いです。








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