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百貨店のイベントスペースで開催されている古本市。大学の帰りに、私はふらりとそこに立ち寄…
真っ白な砂に足が沈まないように歩いた。深い藍色に染まった空を背負いながら、砂漠の真ん中…
私は波の音で目を覚ました。見慣れない天井が目に入って、私はここが海沿いのホテルのある一…
毎年変わらない、何の変哲もない夏休みの縁日だった。そう思っていた。今日この日までは。 …
高校を出てから駅に着くまで、よく犬の散歩をしている人とすれ違うんですよね。あの人と、あ…
夏体験プラン、というものに申し込んでみた。私は夏というものを知らないからだ。 人格の…
「ごめんね、私たち、やっぱり合わないと思うんだ」 アイスティーの入ったグラスを置いて一言、向かいの席に座る彼氏にそう告げた。日曜日の昼下がりのカフェに、彼を呼び出したのは私。有り体に言えば、単なる別れ話。 「な、なんで」 彼は狼狽えたような声色で言う。表情はよくわからない。 「やっぱり、俺が、こうだからか」 彼は自分の顔を人差し指で差した。群青色で、例えるならば西洋の甲冑のようなその顔はそのまま、彼の素顔。別に、ただそれだけのこと。この街にはこういう人——厳密に言えば「人」で
私の研究の集大成が完成したよ。ぜひ取材に来てくれないか。そう博士に呼ばれて、私は博士が…
小学二年生の時の、夏休みだったかな。友達と集まって、近所の雑木林で虫捕りしよう、みたい…
妖怪のミイラってあるじゃないですか。河童とか、鬼とか、人魚とか。あんなの作り物だろって…
中学三年生の頃、高校受験のために、学習塾に通っていたんですよ。ちょうどその日は夏休みの…
※下にリンクを貼った2作と世界観や設定が一応繋がっていますが、この話単体でも読めます。 …
「ほら、見てごらん」 私がこの研究所に先生の助手としてやってきたその日。先生は、巨大な水…
※下に引用した話と世界観や設定がつながっていますが、この小説単体でも読めます。 僕が庭師として出入りしているお屋敷は、いつも花で溢れていた。旦那様のご息女のはる子様は花がとてもお好きらしく、いろいろ仕入れるのだそうだ。 庭の中央には、はる子様がお生まれになったときに植えられたという梅の木がある。まだ冷える空気の中、凛と赤い花を咲かせるその姿は、はる子様のようだと思った。 そういえばこの庭には、見慣れぬ花がたくさん咲いている。地を這う紫色の蔓は、毎年初夏になると、卵のよ