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8. 蝶々の君へ

風に命を委ねる桜
夜空に同化する花火
農夫に踏まれゆく霜
温みに殺される雪

消えるきえるキエルキレイきれい綺麗


窓枠にもたれかかるようにして歓楽街を見ている。
嘲り?憧れ?無感情?
「なあ、どう思う?」
綺麗で、正しいと思うよ。
だって人生は一瞬の積み重ねだもの。
苦より楽を重ねるほうが私には正しく見える。

悲痛
怒り
諦め
嘲り

「悔しくはないの?」
何が?
「大義が否定されたこと」
大義があったとでも?
「人が死んだこと」
人は、死ぬものさ。
「俺たちはこんなに苦しいのに…!」
私は、別段苦しくもない。

沈黙、あるいは切断

ごめん、論理ですべて語れるなんて、最も愚かな思い込みなのにね。
本当はなにが苦しいか、聴いてみるべきなのにね。

変わったね。
「何が?」
君が。
「俺が?」
うん。

だって、昔、君には言葉なんていらなかった。
   ……私の言葉なんて、いらなかった……。

どうして耳を貸すの?
      ……どうして私をここへ呼んだの?


ああ、蝶々の君
君、もうじき死ぬのね。

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