ぼったくられてインド
初めてインドにいったのはおよそ20年前。バックパッカーもどきになって4年たち、一人旅余裕!というばかりに調子こいていた時期で、「ガイドブックにのるようなぼったくりには会わないよ~」と余裕のよっちゃんでインドに降り立ち、そして、早速、空港でぼったくられた。
今と違い、簡単に海外の宿を予約できなかったというのと、バックパッカーたるもの、宿は現地について、安宿探すのがセオリーなんてよくわからない見栄が体に染みつき、夜に到着するのに、宿を決めず、泊まりたいエリアだけチェックしておいていた。
適当にバスでも乗って、デリー市内へ~というもくろみは大幅に外れ、空港で、ものすごい客引きに遭遇。かわしてもかわしても、アリのようにどんどん押し寄せてくる、インド人たちにもみくちゃにされ、バス乗り場を聞いても
「タクシーに乗れ」
とだけ言い、誰ひとり教えてくれない。頼みのインフォメーションセンターにも誰もいない。タクシーなんて高級な乗り物に乗るつもりがなかったのに、あまりにも疲れ、他の人よりソフトな見た目と優しい口調のタクシードライバーさんにコロッとだまされ、乗り込んでしまった。
どこに行くか聞かれる前に出発。おいおい、行くところは一応決めてるんだよと、声をかけ、宿がありそうなエリアを指定して、なぜかここで安心して、後部座席でウトウト。タクシーは目的地まで楽ちんに運んでくれるものと、ここだけ日本人に戻り、ゆっくりしてしまった。
しかし、走れど走れど、町の明かりどころか、どんどん暗くなって行き、インドの首都っぽい雰囲気にならない。大丈夫かよ!おい!と不安になっていると
「宿に着いた」
は?!ひとまず、降りると、目の前にあった建物は、廃墟?!なんだ、この微妙なツタがからまった奇妙な洋館は!!!!
「ここどこだ~~~~!」
と大騒ぎしたものの、やさしい笑みだけ浮かべ、まあいいからとホテルに促される。
無駄な乗継ぎでロングフライトに耐えたのと、空港のうっとおしいインド人のせいで、疲労困憊していたため、ホテルのフロントでちょっと高い値段を提示されたもののなぜか、チェックインしてしまった。
やさしい笑顔のタクシー運ちゃんは、フロントで何やらごにょごにょやってたから、手数料をもらったんだろう。タクシー代もなんだか高い気がしたけれども、これまた、もうめんどくさくなってひとまず払った。
人の話をほぼ聞いてないインド人と交渉することがどれだけ面倒なものか・・・空港でいやというほど思い知らされたからだ。インド人、恐るべし・・・ケチケチバックパッカーの財布のひもをゆるませるとは!
重たい体とリュックを引きずりながら部屋に行くと、さらなる悪夢が待っていた。
シーツがあきらかに黄ばんでいる
ベッドメイクはされておらず、ぐちゃぐちゃ
シャワーはぬるま湯しか出ず、途中で止まる
トイレに便座がない
トイレットペーパーもない
と書けばきりがないほどひどいありさま。いや、いいところが一つもない!
お金取るレベルじゃない!無料でも泊まりたくない!というより、ここ宿泊施設?民泊?!
と怒ってもどうせ相手にされるわけないので、ベッドの上に寝袋をひいて横になり、よく眠れないまま、朝。
窓をあけてびっくり!木と土道が目の前にドーン!
道路の看板をたよりに、地図でなんとなく自分の位置関係を把握したらば、ものすごい郊外、なんだったらタージマハルにいっちゃったほうがいいんじゃ?というくらいの場所まで連れてこられていた。
ひとまず、最後に、返金をしてもらおうと、フロントで、風呂も入れないし、ベッドも汚いし、金かえせ~~~~~~!と喚き散らしていたら、小錦みたいなおかあちゃんが出てきて、ものすごい形相で怒りかえされ、迫力に負けてそのままチェックアウト。
空港であったちょび髭たちよりも、女の方が怖いような気がする・・・
たった一日で相当な金を使い、両替しないと現金がない状態で、デリーまでどうやって戻ろうか?とうろうろしていると、おでこに紅いしるしをつけた、まさにインドの女神さまの化身かといわんばかりの少女に出くわす。これは、神のお助けとばかりに、いきなり話かけ、
あ~でこ~でこ~なって、今ここにいて、デリーに行きたいけど、タクシー代ないし、両替するにも銀行じゃないと信用ならないし、お助けを~
とジェスチャー交えていったら、なんとこの女の子、市バスでデリーに行くとな。
サンキュー!シヴァ(←ヒンズー教の神様の名前で覚えていた)
しかも、市バスがなんと数百円!昨日、その何倍もの金払って、こんなところに連れてこられたのに、なんという物価の安さ!
待望の市バスは、ドアがぶっ壊れてなく、屋根にも人が乗っているようなバスなのか、ダンプなのがよくわからないような乗り物。しかも、止まってくれないから、ジャンプして乗るという。女の子が手を引っ張ってくれなかったら、乗れなかった。
ぎゅうぎゅうのバスの中は、息もできぬほどのぎゅうぎゅうさ。ぼったくられたうえに、スリにあったらたまったもんじゃないと、おパンツに入れていた貴重品を、さらに股に挟みこんで、股間をキュッと締め続けて乗った。
この事件のあとも、牛にぶたれたり、ガンジス川で流されたり、寝台列車のベッドにおばさんがもぐりこんで来たり、あたしのカバンをテーブルにして物をたべて、ベトベトにされたり、「もう2度とこね~!インド!」
って思っていたのに、帰国するとなんか恋しくなって、もう5回も行っている。そして、そのたびに、「もう2度とこね~!インド!」と思うのだ。
嘘つくし、うざいし、暑苦しいし、ぼったくるし、疲れることの方が多いけど、なんか好きなんだよな~。インド。
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