見出し画像

遠くの家族より日々言葉をかわす近所の連携が頼りになる

朝4時。
季節外れの温かさで、寝汗をかき、水を飲みに台所に行ったついでに起きることにした。こんな日は朝採れ野菜だと家の裏の畑で育てているほうれん草の収穫をすることにした。

家の裏にはご近所さんの畑が点在していて、家の裏の奥側の敷地は隣の隣のおばあちゃんの畑。大体、朝早くから何かしら作業をしている。毎日毎日よく働くばあちゃんだ。いつも野菜をもらっているお礼に、つい先日、帰省土産をわたしたときに

「もう米寿じゃ」

と言っていた。腰は曲がっているけど、まだまだ現役で農家をやっている。

今朝も遠くで腰を曲げて、春菊の収穫をしているのが見えた。

背も小さいし、腰が曲がっているから、ほっかむりをした頭しかみえないけれど元気にやっているようだ。

30分ほどほうれん草をひっこぬき、土をとって、畑を平にして、さて戻ろうかとふと、おばあちゃんの畑をみる。

秋田では「ネコ」と呼んでいる手押し車が倒れている。おばちゃんが収穫したものを家の小屋に運搬する道具だ。

あまりにも雑に倒れていたため、なんとなく気になって近づいてみると、「ネコ」の横にうつぶせで倒れていた。

「おばあちゃん、おばあちゃん」

何度か声をかけたが返答がない。
こういうときこそ冷静に。ひとまず脈はあり、息も軽くしている。

急いで家に戻り、119番へ。
意識がないむねを伝え、状況を説明する。

ご関係は?と聞かれた時に返答に困った。

「孫でも子どもでもなく近隣住民です」と答えた。

おばあちゃんを動かさずに、両親を起こしにいく。わたしがバタバタやっていたことに気づいた母親が、「なんなの、朝からうるさいわね~」と言ってくる。

これこれ、こうで、救急車がくると伝えると、急いで着替えに入った。

ほどなく救急車となぜか消防車が連なってきた。

おばあちゃんは声をかけると「う~う~」とかすかに返答できるようになっていた。

「お名前は?」

「佐藤フキです(仮名)」

「年齢は?」

「88歳です」先日米寿と言っていたからすらすら答えた。

「かかっている病院とかありますか?」

「一緒に住んでいるわけじゃないので、わからないです」

「お孫さん?」

「いえ、近所に住む、いや、たまたま帰省している元近所です」

と意味不明な返答をする。

母によると、子ども二人は結婚して遠方に住んでいるから一人暮らしだそう。

「搬送先が決まったので出発します。頭を打っているかもしれないし、骨折しているかもしれないから固定しますね」

とストレッチャーに乗る瞬間、おばちゃんの手がわたしの手に触れた。

一人じゃ怖いのかもしれない

「あのう。乗っていってもいいでしょうか。」

「いいですよ」と優しく答えてくれた。

救急車の中で、保健所やお薬手帳、普段の様子など聞かれたがもちろん何一つ答えられない。

ただ、母親が隣のおばちゃんを起こし、事の次第を伝えると、

「以前に何かあったときのために子どもの電話番号を小屋のカレンダーかなにかに書いている」っていってたような・・・

とあいまいな記憶を頼りにいくと小屋にカギはかかっておらず、カレンダーの横に画びょうでとめたメモ書きがあった。

そこに電話をしておばあちゃんの子供と連絡がとれたものの、すぐに向かうけれども半日はかかるという。

おばあちゃんはというと、意識は戻り、CTをとっても脳に異常はなく、何かにつまづいて転び、脳震盪を起こしたのではないかという診断。骨折もしてなかった。

ただ、家に一人は危ないとのことで入院することになった。

事なきを得たものの、いろいろ考えさせられた。

わたしも普段は遠方に住んでおり、すぐには帰れない。
父親と母親の保険証やお薬手帳の場所を知らない。
普段飲んでいる薬もしらない。
何より、ご近所さんはわたしの携帯番号を知らない。

今までいろいろお世話になっているからと帰省のたびにお土産をくばり、いつもありがとうございます行脚をしていたが、お土産とともに携帯番号を伝えようと思った。もういつ何があってもおかしくない年齢だ。

最近、高齢者施設に入り、自宅を売り、今風の窓が小さい家が周りに建つようになった。それとともにご近所付き合いも稀薄化していたが、かろうじて実家の左、斜め前、斜め横あたりはわたしが生まれる前から住んでいる人たちだ。

銀行口座や保険、土地など相続関係は聞いていたが肝心な今の状況、薬の有無やかかりつけ医ことは聞いていなかった。病院でおばあちゃんの検査結果を待つ間、いざというときに困らないようにせねばと思った。

救急車を呼んだあとは、用意するのは保健所、お薬手帳、身分証明書。これがあると便利。かかりつけ医がわかるように診察券もセットにしておいたほうがいい。

あと、今日の一番の疑問。なぜ消防車がきたのか?

救急隊の人が、わざわざ挨拶をしてくれたときにちょろっと質問したところによると、意識がないと伝えられて、重症患者かもしれないという判断になり、PA連携で出動したのだそう。

詳しくはリンクをどうぞ。今ってそんな制度になっていたんだとしみじみ。消防隊には、救急処置に必要な酸素吸入器や人工呼吸器などの救急資器材が積載されているってのも今更ながら知った。

命を守る仕事をしている救命救急隊の皆さん、とても大変な仕事なのに丁寧に質問して答えてくれて、またほしい言葉をかけてくれてとにかくほっとした。とても心強かった。

遠くの親戚より近くの他人とはよくいったものだ。

今日も読んでくれてありがとう(日本語)。ありがとうっていい言葉としみじみ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?