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親と入浴しなかったから水虫になった

友人と与太話でげらげら笑っていたとき、急に思い出したように同僚A子の話をしだした。

A子は小学校6年生の息子と今でも一緒にお風呂に入っているそうだ。
甘えん坊で困るわ~といいながら嬉しそうにするA子をみて、いやいやありえんだろ。

と思ったというのだ。

私は高校の同級生が高校生のときにお父さんとまだお風呂に入っているというのも聞いたことがあるし、別に家族なんだから当人同士が恥ずかしい~と思わない限りいいんじゃないかと思う。いや、入れるなら入り続けるべきだ。

「裸の付き合い」

という言葉もあるし。
まあ、この言葉は本物の裸ではなく、精神的な意味あいのため、本物の裸を指してはいないが個人的には生まれたまんまの姿になると開放的な気分になって、普段は言えないようなことも素直に言えたりするんじゃないかと
思っている。特に一般家庭の狭い浴槽に2人で入ったら、おのずと本音が出てくるというもの。

現におじいちゃんっこだった弟は、いつもじいちゃんとお風呂に入り、幼稚園でいじめてくる男の子がいると悩み相談をしていたらしい。

じゃあ、私もそうだったのかというと、じいちゃんどころか両親と一緒にお風呂に入った記憶がないのだ。
小学校に入学したあたりから1人で入っていた気がする。

異常におませちゃんだった、もしくは自分はやれるぜアピールをしたかったか定かではないが1人で入るといってきかなかったらしい。

そもそも小学校の低学年のおちびがきちんと体や髪を洗えていたのか甚だ疑問。しかも、お風呂でおぼれて一大事になったらどうするんだよ!と今になると放任主義にもほどがある突っ込みどころ満載の両親だったが、その懸念が的中する事件が起こった。

お母さんに迷惑をかけちゃいけないから水虫が悪化

それは小学校4年生のころ。
数週間前から靴の中で足がムズムズするな~とは思っていたものの、適当にかいてごまかしていたある日の夕方。友達と遊んでいる最中に、猛烈に足が痒くなった。痒いなんてもんじゃない、い~~~~ってなるほど痒い。

痒い痒いといいながらもお風呂で熱湯をかけると、あ~ら不思議。
かゆみが一気にとれちゃうもんだから、しばらく、痒い→熱湯をかけるでごまかしていた。

痒いなら痒いとお母さんに相談すればいいのに、お母さんは忙しい、というのが小さいころからインプットされていて多少のことでは相談しないようにしていた。
学校でも
「他人に迷惑をかけちゃいけない」
と教えられているし、とにかく自分が我慢できる範囲ならどこまでも我慢をする子だった。

が、それがあだとなった。

その日は朝から猛烈に痒く、授業中も集中できないくらい痒い。
足をかいているところを友人に見られたくないので、昼休みこそっと靴を脱いで思う存分かきまくろう!と人がいないところに移動し靴を脱いで見た自分足、いや白いソックスの先がなぜか黄色いしみになっていた。

靴の色が染みたかなにかしたのか?と特段気にもせずに靴下を脱いで見た足指ちゃんたちは真っ赤にはれあがり、指と指の間がどろどろにただれていたのだ。

それでも保健室に行かずに、我慢し続けるも痒みはますます悪化。
さすがに我慢の限界に達した私は、お母さんに足の指が痒いことを泣きながら訴えた。

そして、靴を脱いだ瞬間の娘の足をみたお母さんはぎょっとしたかどうかは覚えていないがすぐさま病院に連れていかれたのを覚えている。

「お母さん、こんなになるまでなぜ気づかなかったのですか?これは治療に長くかかりますよ」

みたいなことを言われたのを覚えている。

どこで水虫菌に侵されたのか、そもそもそんな水虫菌の靴下と家族の洗濯を一緒に洗って誰も水虫にならなかったのか?
いろいろ気にはなるものの、ひとまず薬をもらい、数日様子をみると、あっという間に痒みはとれ日常生活に戻った。

今考えると、ボディータオルのはじとはじをもって背中を洗うことはなんとなくしていたが足指を丁寧に洗うという行為はしていなかった。
ちっちゃいころから1人でお風呂に入ったせいで体を洗ってもらうという記憶がなく、自己流で洗っていたのだ。

水虫になった原因は定かじゃないが、不潔にしていたのも原因だと考える。
というのも、完治したと思われた水虫がまだ再発したのだ。

アロエ緑汁事件

水虫にまたなったなんて言ったら、お母さんがお医者さんにまた怒られちゃうじゃないか!とお母さんファーストな私はまた相談できずにいた。
しかし、さすがに悪化するとそれこそ迷惑がかかる。
どうしたもんかと当時飼っていたコロ5才雄犬に向かってぶつぶつと半べそかきながら悩みを相談していたら、いつのまにやらじいちゃんが仁王立ちしていた。

「おんめ、また水虫になったんじゃろ。みせてみろ」と。

じいちゃんの見立てによると水虫初期らしく、じいちゃんが治せるという。

そんなことあるかい!と思いつつ、自信満々なじいちゃんに従っていくと、じいちゃんの趣味の一つサボテンがごっそりおいてあるハウスに到着。

すると、トゲトゲしい植物の茎みたいなものをぽっきりと折り、滴り落ちてくる怪しい汁を私の指にすりこんでいった。
そんなんで治るのかよと疑惑の目でじ~っとじいちゃんを見ていたが、そんなことは意に介さず両足に塗り込んでいった。

このトゲトゲしい植物はアロエ。
サボテン愛好会秋田支部の会長だったじいちゃんはアロエは万能の薬と信じ、虫刺され、乾燥、腫れ、やけど、かぜ、などなど何かあると生のアロエをもってきては塗ったくっていたし、孫にも押し付けていた。

正直、虫刺されはキンカンのほうが痒みにきいたし、風邪の息苦しさはヴィックスヴェポラップのほうがスースーしたし、西洋医学には勝てないよと思っていたので、この時もじいちゃんの気が済むまで塗らせてあげよう程度に思い、痒い足指をじいちゃんに預けていた。

こりゃお風呂あがりにも塗られるなと思っていたら、さらにグレードアップし、アロエを細かくつぶしたじいちゃんお手製の塗り薬登場。足指にべったべったとぬりまくられた。
さらに塗った上から包帯で足をぐるぐる巻きにするも緑色の変な液体がすでにしみしみ。こりゃまずと思ったのか、足にビニール袋をかぶせ、ガムテープでがっちりガードして

「これでよし!」

とご満悦だった。
よしなのはじいちゃんだけで、歩くたびにねちゃねちゃするし、微々たるものだけど異臭を放っているし、すでにビニール袋の中に緑の変な液体がたまるし、まったくよしじゃない。

こんなアロエで治るわけないじゃんねと思いつつも、じいちゃんがかわいい孫のために一生懸命に作ったお手製アロエ薬をとるわけにもいかず、たいした期待もというか全く期待をせずに眠りについた。

そして、次の朝。

「ちょっと、これなんなの!!!なんなの!!!あんた大丈夫??」

と起こしにきたお母さんの絶叫で目覚めた。
お母さんの目線の先を見ると、緑色の大きなしみ。

ガムテープではブロックできなかったアロエが染み出てしまったらしい。
かくかくしかじかとじいちゃんお手製のアロエの話をすると、ほっと胸をなでおろしていた。
どうやら変な病気にかかって緑色の体液が出たんじゃ?と思ったらしい。
エイリアンかよ・・・

お母さんの絶叫のせいで、そもそもなぜこんな両足緑色まみれになって寝たかの根本を忘れかけていたが、水虫をなんとかするためだったことを思い出す。

そういえば、痒くない。
しかも、こころなしか指の動きもいい感じがする。

緑の液体をまき散らすな!号令が出たため、お父さんがひょいと娘を持ち上げてお風呂場に連れて行ってくれた。
そしていつもの
「私1人でできる」
宣言し、うんしょうんしょとビニール袋をとり、ガーゼをはがすと緑色に染まった足指がお目見え。
色は死人のようだけど、爽快感は半端ない。

ガーゼがとれたというのもあるが、すっきり感がすごいのだ。
お湯でアロエをおとしてみると、腫れはすっかりとれ、なんだったら乾燥もなくなり美しいあんよが出てきた。

な、なんと!
アロエすごいじゃないか!

じいちゃんに喜びの舞を披露し、その舞をみたじいちゃんもご満悦。
これで私の水虫生活もさらばじゃと思っていたが、相当なレベルまでいった水虫菌はそうたやすく消え去ってはくれなかった。

爪の厚さと色が違うから彼氏ができなかった



時は過ぎて高校時代。

東京に行ったときにかわいいサンダルを買ってもらい、自慢したくてしょうがなかった私は、友達と会うたびにやたらめったら足をあげたりして、見せびらかし

「サンダルかわいいね」

の一言を引き出しては優越感に浸っていた。

そんな中、私の腕の短さをいち早く察知した親友が今後10年悩み続けることになる一言を放った

「ちょっと、あんたの親指の色、やばくない???」

実は自分でもちょっと気づいていた。
右足の親指の爪の半分が黄色に変色していることを。

爪を切るときに気づいていたのだが、痒くも痛くもないため放置していたのだ。

気になりだすと毎日眺めるようになり、黄色い部分を爪切りでがっつり切り落とし、深爪にするという荒業をやってみたりしたものの一向によくならない。

よくならないどころか黄色に変色している範囲がどんどん広がり健康なピンク色の爪を犯していく。

さらに変色している部分がどんどん分厚くなり、爪を切ると変な粉っぽいものまで出てくるようになった。

「あんたの親指の色、やばくない?」

事件から裸足になることは素っ裸になるより恥ずかしいことになり、年がら年中靴下をはくようになった。あんなに気に入っていたサンダルも足の指を見せびらかすことになるので捨て去った。

「なんで捨てるのよ」

と怪訝な顔をして聞くお母さんに相談すればよかったのだが、三つ子の魂百までとはよくいったもので、お母さんは忙しい、迷惑をかけちゃいけないがやっぱり発動して、

「サイズがあわないから」

と適当なことをいっておいた。
今思えば、あのとき相談していたら今後10年、黄色に変色した爪に悩み、隠すことに必死になることもなかったろうに。

こんな変な色で分厚い爪をもち、さらに変な粉まで入っている親指をもつ女なんて嫌だろうな~とか卑屈になり、足を出さねばいけない行事に行けなくなった。
水着をきてもスニーカーをはいたり、温泉に行っては冷え性だからとすぐに靴下をはいたりと徹底的に足を隠した。

「あんたの親指の色、やばくない?」

と言われるのが怖いし、「きったね~」なんて言われるとめちゃくちゃ傷つきそうだったから、好きな人に告白もできない。
いや、もし付き合ったとしても、ベッドイン=裸足にならないといけないことを考えると、絶対に無理だった。

変色した爪は右足の親指の爪半分から次第に爪全体に行き渡り、知らないうちに左足の親指の爪も侵しはじめ
にっちもさっちもいかなくなった。

私はこうやって一生足指を隠して生きていかねばならないのかと悲嘆にくれていた会社帰り。
電車の出入り口のドアに寄りかかり、窓の先に見える夜桜を見ながら、
「あ~あ~、彼氏と桜見ながらきゃっきゃやりたいもんよね」
なんてふてくされていたとき、ふと窓に貼ってあるステッカー広告が目に入った。

「爪水虫治ります。迷ってないで皮膚科に相談を」

爪水虫??
水虫が爪の中にいるってこと??

当時はスマホがなかったため、急いで自宅に帰り、昔懐かしいピーヒョロロロロロ~のなが~いダイアルアップの接続を待ち、インターネットに接続。
爪水虫を検索すると、私の症状にぴたりとあてはまった

・足水虫を治療しないで放置するとおこる
・爪が変色する
・爪がもろくなってぼろぼろと崩れる

崩れているのは私が粉といっていた部分だ。

迷ってないで皮膚科に相談をと書いていた皮膚科はメモしてなかったが、早速次の日、迷わず近所の皮膚科を受診した。

かくかくしかじかで~と今までの悩みを伝え、裸になるよりも恥ずかしい思いをしながら、靴下をぬぎ、そっと足の親指の爪をみせると

「爪水虫ですね。爪の生え変わりを待たないといけないので健康な爪に戻るのは1年かかりますけど、治りますよ。ひとまず薬を出すので1か月後にまたきてください」

あんなに恥ずかしい思いをしながら意をけっして、足指をみせたのに、見慣れてますわよ~みたいな平気な顔でしれっといわれ、診察終了。まあ皮膚科医なんだから当たり前なんだが。

飲み薬だけで爪がきれいになるんかい?!とたいした期待もせずに、ひとまず用量用法は正しく守らなくちゃいけないので1カ月飲み切った。

すると、親指の爪のほぼ全域黄色に変色し分厚くなっていたのに、生え際からピンクいのがちっちゃく見え隠れしているじゃないか!!!

その後3か月飲み続け、経過観察期間になるとピンクいのがどんどん成長してきて1年たつころには皆さんと同じような健康的な美しいピンク色の爪に生まれ変わった。

黄色の変色部分を最後カットした時は、こみ上げてくるものが抑えられなかったことを覚えている。

かくして11年ぶりに美しい爪を手に入れた私は、11年ぶりにサンダルデビューを果たす。表面積が非常に少ない足指ダダ洩れのサンダルを購入し、初めてペティキュアなるものを施し、11年分、足指を見せびらかした。

といってもみんなからすると別にこったペティキュアをしているわけでもなく、なんだったら足指は人より太っているのでのぺっとなっているから
美しくもなく、いたって普通なので、何をそんなに見せびらかしているの?と思ったようで、特段誰もコメントをしてくれなかった。

こんなに足指を堂々と見せられる日がくるとは!

実家に帰省した際もサンダルを履いて、足指をみせびらかしていた。するとお母さんが

「サンダルはくなんて珍しいね~」

というじゃないか。実は爪水虫で悩んでいたことをカミングアウトしたら

「あら、お母さんも♪病院で治したわよ」

おいおいおい、だったら娘にも教えろよ。
気づいていたんじゃないの?

と思うも、いや、お母さんは忙しい。
私の水虫にさえ気づかなかったんだから、爪水虫なんて気づくわけがない。と勝手に解釈した。

そんな忙しいお母さんも年をとり、最近は一緒に温泉に入ることが多くなった。足の指の間を念入りに洗っていると

「あんたに足指の洗い方を教えてあげなかったから水虫になっちゃったのよね。あんなになるまで我慢して・・・あんたが1人でやれるっていうのに甘えずにたまには一緒に入って体を見てあげればよかった」

なんていうじゃないか。
ちょっと涙でちゃったじゃないか。やめてくれよ、ふろ場で今生の別れみたいな挨拶するのは!

女同士はこうやって年をとるとお風呂にまた一緒に入れることもあるかもしれないがお母さん×息子、お父さん×娘はなかなか難しい。
もし、娘さん、息子さんが「一人で入る!」と言っても、それは大人になりたいだけの見栄っ張り。1カ月に1度でもいいから一緒に入ることを推奨する。

そしてお風呂に入ったら足指の洗い方を最優先で教えてほしい。

両親とゆっくりお風呂に入る子どもが増えたら水虫も減るに違いない。と信じてやまない。

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