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筋書きのない217.1Kのドラマ、それが箱根駅伝

夏の高校野球と同じくらい、毎年欠かさず観戦する正月の風物詩「箱根駅伝」。

今年も涙と笑いあふれる箱根駅伝が終わった。
箱根駅伝を見終わると、涙でぐちゃぐちゃになった顔で
「あたしも負けてられない!仕事に恋愛に?頑張るぞ!!!」
と、変な力がみなぎってくる。

自分が共感を得たものは人に勧めないと気が済まないあたしは、いつものごとく、しつこいくらい、ここがよかっただのあそこに感動しただの、新年早々しゃべりまくっていると、

「何がいったい面白いの?ただ走ってるだけなのに!しかも、自分の出身校や息子、親戚が出てるわけでもないんでしょ?」

と、なかばあきれ顔で言われる。

な、なんと箱根駅伝に失礼な!
しかも、昨年、箱根駅伝を創設した金栗氏の「いだてん」が放送されて、
さらに盛り上がりをみせていたというのに!あれ?そこは私だけか?

ということで、第96回箱根駅伝を振り返りながら、なぜ面白いのか、感動するのか、見続けてしまうのかをまとめてみた。

つながるタスキ


往路1~5区、復路6~10区を10人でつないでゴールするのが箱根駅伝。
つなぐ重要な役目をするのがタスキだ。

この1本のタスキをつなぐためにどれだけの練習、苦労、挫折を味わって
ここまで来たかと勝手に想像するだけで、こみあげてくるものが・・・。

中継地点の手前になると、肩からかけていたタスキを外し、手にぐるぐる巻きつけ、拳を握りしめ、歯を食いしばり、最後の力を振り絞って走りぬく。

その映像に重ねるように、中継地点に入ってくる選手のストーリーを、熱を込めてしゃべる解説者。

「けがもあった、苦しんだ、でも仲間の支えがあってここまできた。さあ、仲間が待っているぞ!」

その選手がけがをして苦しんだことは、今、解説で聞いて知ったくせに、
テレビ画面に映る、必死の形相を見ていると、辛かっただろうに~なんて勝手に、1年間一緒に苦しんだような錯覚を起こして、涙がこみあげてくる。

1秒を削りだすために、最後の力を振り絞り、タスキを渡したあと、死力を尽くし、倒れ込んで動けなくなるもの、息苦しいながらも、走ってきた道に頭を下げて、礼をするもの、タスキをつないだのに、自分の走りに納得ができず号泣するもの

特に、体力を使い切って、倒れ込んでしまう選手を見ると、本当に自分の限界に達したんだな・・・と何か、母にでもなったかのような気分でやさしく包み込んであげたくなる。

なのに!仕方ないんだけれども、大会関係者の人は、無理やり立たせて、引きずるように裏に連れて行こうとする。
運営上、すぐに立ち去ってもらいたいのはわかる。次にくるランナーの邪魔になるし。でも、あのシーンをみるたびに、もうちょっとうまい具合に運んであげられないものかしら?と思ってしまうのである。

走ってきた選手の体を支えるチームメンバーの
「お前、よくやったよ!」
「頑張ったよ!」
という声かけも、青春だな~とジーンとくる。

走っているときは一人だけれども、つらい厳しい練習をした仲間のきずながゴールの先に待っているのだ。

途切れたタスキ


タスキは必ずしもつながるものではない。

交通規制の関係で、トップが通過してから20分経過すると繰り上げスタートになるルールがある。これが、また切なくて苦しくて悲しくて、本当につらいシーン。

8-9区 戸塚中継所
9-10区 鶴見中継所

になるともうハラハラドキドキ。

テレビの左上にトップ通過後のタイムが表示され、3分きってくると手に汗にぎる。

「あと、1分、タスキがつながるか!」の解説者の声とともに映し出される選手の苦しい表情。

タイムと表情を見つめ、あと●m、頑張れ頑張れ!と沿道で応援しているわけでもないのに、声が出てしまう。ギリギリつながったときは、安堵するものの、つながらなかったときの苦しさといったら!

今回も魔の鶴見中継所で、悲しい繰り上げスタートの号令が鳴った。
それも、あと15秒あればタスキがつながるはずだった日体大の9区のランナーの目の前で。

タスキをつなげるために、走ってきたのに、目の前でチームメンバーが走り去ってしまうつらさ。もちろん、仲間がいない中継所に一人で飛び込んできたランナーももちろんつらい。

目の前でつなぐはずだった仲間が走り去ってしまうというのは、どれほどつらかろう・・・と、毎回、この途切れたタスキの場面は号泣してしまう。

最後の力を振り絞って走り切り、もう歩けないほどへとへとになりながら、中継所に着いたのに、つながらない。タスキを握りしめたまま、涙がとめどなく流れる選手。

「よくやった。お前はすごい。気持ちはつながっているから」
そう声をかけている仲間も涙にくれる。

こうやって書いてるだけでも、ああああああああ・・・・

目の前でスタートされる人もいれば、誰もいない中継所に寂しくゴールするもの、どちらにせよつなげなかったという自責の念にかられるのだろう。

いつだかの箱根駅伝では、もう歩く体力もないくらいに死力を尽くし、ふらふらになりながら、あともう少しでタスキがつながるというときに、転び、さらに足がもつれて転び、もう、早く、早くつなぎなさいよ!とテレビの前で、つい声を荒げてしまい、転びながらやっとつないだというシーンもあった。

人間、本当に体力を使い果たすと足が立たなくなるんだなと思った。

1区からの仲間の汗と涙がしみ込んだタスキをつなぐというただそれだけのことなのに、これほどの死力を尽くして戦う箱根駅伝。

中継地点でタスキを両手でピンと張って、次につなげる瞬間のランナーの頼むぞという顔、受け取ったランナーの「よし、まかせておけ」という頼もしい顔。

タスキに込められた絆は計り知れないものがあるのだ。


熾烈なシード争い


タスキをつなぐというミッションのほか、次年度の箱根駅伝の出場権もかかっている。上位10校がシードを獲得し、残りの10校は予選会から箱根駅伝を目指すことになる。

よって、10位と11位の間には、天と地との差があるのだ。

と書きつつも、予選会は見たことがないので、どれほど大変かはわからない。テレビで知るところによると、予選会は、各校の登録選手10~12人が一斉にスタートし、上位10人の合計タイムを争う。

ということで、走り終わった直後は、箱根駅伝の切符を手に入れたのかどうかはわからず、合計タイムの発表を待つことになる。
発表を待つ選手たちの祈るような姿を見ているだけでドキドキ!

今年は筑波大学が、なんと26年ぶりの本選出場とのことで、名前を呼ばれた瞬間の選手たちの喜びようといったら!
おばちゃんうれしくて、目頭あつくなっちゃいましたよ。

何度も言うが、自分の息子や親せき、友達は筑波大学にはおりませぬ。

その筑波大学は、結局、タスキをつなぐことができず、来年も予選会からの参加が決定したが、それでも、タイムはすごかったし、よく頑張った。
今年は靴のせいか、スピードがおかしい大会だったから、もしかしたら昨年までだったらつながったのでは?と勘ぐっている。

さて、今年のシード権争いは大どんでん返し。
というのも、9区まで見ていた時点で、10位の中央学院大学と11位の創価大学の差は55秒。7位の東洋大までは3分も離されていた。

そんなわけで、最もしてはいけない、思ってはいけない行為

「もう、こりゃ、勝負ありだな。ちょっと他のことをしよう」

と洗濯や掃除をしている間に、区間新記録を出した創価大学の嶋津選手が快走し、2人抜いて9位になっていた!!!!

ノーーーーーーーーーン!!!!!!!
なんという失態・・・

どこで仕掛けるか?駆け引きも見どころ

前の選手に追いついて、そのまま華麗に追い越すか、それとも並走するのか、前の選手を風よけにしたり、スピードコントロールとして使うのか、このあたりも見どころの一つ。

この素晴らしいシーンを見逃してしまうとは!
野球は9回裏2アウトからといわれるように、マラソンも最後の1秒までどんなメイクドラマがあるかわからない。ってわかっているのに、あたしってば、バカバカバカ~ン!

失礼ながら、嶋津選手はものすごい颯爽と走っているわけでもなく、逆にまだ残り10kもあるのに、、すごく苦しそうだし、靴は学校指定の真っ白い運動靴のようなものをはいているし(←ミズノの立派なシューズでした。失礼)で、テレビで見る限り早く走っているように見えてなかったのに、なんと区間新で、初のシード権も獲得の素晴らしい走り。

駆け引きが見どころの箱根駅伝だけれども、見ている限り、駆け引きなし、ただがむしゃらに前を向いて走っている、そんなシンプルなスタイルに最後まで目が離せなかった。(←離してしまったけど)

さらに、区間新が出てのインタビューが初々しくてよかった。
最近はインタビューなれ、もしくは物おじしない若者が多いせいか、ものすごいはきはき答え、言っていることも、プロ選手並みの人も多い中、まだ弾んだ息で、その時に思ったことをとめどなく話しつつ、途中
「ちょっと長いですよね」
なんてかわいいことをはさみつつ、自分の目の病気のことにも触れ、
「同じような病気を抱える人たちに、勇気を与える走りが出来た」
と、最後の一言は堂々としていた。

病気はないけれども、単なるしがないライターの私でさえ勇気をいただいた。シンプル、素直、一直線と、仕事においても、生きていく上でも、くよくよしない、駆け引きなしが一番楽なのかなと思った、嶋津選手の走りだった。

といいつつも、やはり駆け引きを見るのも楽しい。
10区は、壮絶な3位争いも見ものだった。

ゴール間際まで4人がもつれ込む大混戦。
これこそ、どこでスパートをかけるか横の選手を見つつ、監督の指示を仰ぎつつ仕掛けなければならない。
アップダウンの激しい箱根駅伝では、登りに強いか下りに強いか、体力を最後まで温存できるかなどによって変わってくるが、最後の10区の残り1kmともなるとそんなごちゃごちゃしたものは関係なくなる。

全員、がむしゃらに一つでも上の順位を狙って必死の形相で走り続ける。
結局、最後まで体力を温存できた、一番の若手、国学院大学の2年生くんが頭ひとつ抜け出して3位となった。

ちなみに最終結果
9区    10区
1位 青学  青学
2位 東海  東海
3位 東国  国学院
4位 明大  帝京
5位 国学院 東国
6位 帝京  明大
7位 東洋  早大
8位 早大  駒大
9位 駒大  創価大
10位 中央学 東洋

最後にこれだけ順位が変わるってなかなかない。
最後まであきらめるな!と選手にハッパかけている、私自信があきらめていたという。来年から心新たに、観戦すると誓った1月3日。

給水係物語


選手たちに彩りを添えるのが解説者。
ゴール間際は興奮し、叫びまくったかと思いきや、走り始めると各大学、選手のバックストーリーを丁寧に解説する。

特に涙そそられるエピソードが給水係。走っている選手と並走して、給水をする係の選手のストーリーがいちいち心にぐさっとくる。

給水係とは、箱根駅伝を走る10人に入れなかった選手。いわゆる補欠(ちなみに後で調べたら、選手じゃなくてもOBとかでも給水係になれるらしい)

実は、私も小中学時代は万年補欠。補欠の苦しさは痛いほどわかる。
ただ私の場合は、レギュラーになれなかった時点で、ふてくさり、仲間を応援しようとは微塵も思わなかったクソ野郎なので、ほんと、あの頃、箱根駅伝の給水係に出会っていたら、
「早く試合(部活)終わらないかな~」
なんてひどいことも考えなかったわけで、ほんとに給水係に徹する選手たちには頭が下がる思いなのである。

「4年間、一度もエントリーされることもなく給水し続けた最後の箱根。
笑顔で、仲間に力水を渡します」
「けがで苦しみました。でも、仲間が走ってくれている。その思いを届けるべく並走します」
「最後まで箱根を走れなかった。けど、給水係として仲間を支えます」
「昨年は9区を走ったものの、今年はエントリーもれ。それでも、仲間に夢を託します」

こんなエピソードを情感たっぷりで話すもんだから、給水しているシーンも涙がとめどなくあふれてくる。どんな会話が交わされているかは、テレビ越しではわからないけれども、

いけ~
〇〇頑張れ~

とか言ったり、笑顔でうなずいたり、ガッツポーズを作ったり。

走っている選手は、出れなかった選手の思いもタスキに込めて走り続けているのだ。給水係は立候補なのかどうかわからないけれども、思い入れのある選手同士、同級生同士なんかが行っているケースが多く、顔を見合わせて笑顔でお互いだけが知る合図をしていたり、

あ~青春だな~としみじみ。

あの頃の己のくさった性根に、ほとほと嫌気がさすばかりの給水シーン。

監督の掛け声は名言ばかり

選手の後ろの車に乗って、選手を鼓舞し続ける監督たち。
これが、まあものすごいいいことを言うのだ。

「そうだ、そうだ、そのまま、いいぞ、いいぞ、このペースでいくと区間新をねらえるぞ」

というありきたりなものが多い中、

「いいか、タイムじゃない、順位じゃないんだ、今の自分の走りをすれば結果が出てくるんだ」
「1k、1kを刻んでいこう!みんながお前を信じているからな」

そうやって、選手がつらい、苦しいと思った、絶妙なタイミングで言葉をかけていく。

いつも青学が先頭だから、つい青学の監督の言葉が耳に入ってしまうのだが、原監督は言葉をかけるタイミングがものすごいうまい。
しかも、聞いてるだけで癒される声音。
走ってないのに、聞いてるだけで
「そうか、あたし、やれるんだ!」
とテレビの前の私までやる気が出てしまうのだ。

最近はラインやメールで思いを伝えることが増えてきたけれども、やっぱり、声で直接伝えられるとストレートにズド~ンと刺さるし、実感もできるな~と監督の言葉でしみじみ思うのである。


飛ぶように走るピンクナイキ

いろんなニュースサイトで話題になっている
「ナイキ ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%」。
ド派手なピンク色、オレンジと緑の色違いのシューズを履いてる選手が多かった。あれだけ、派手だと足元に目がいってしまう。

今回の箱根駅伝はこのナイキシューズのおかげか区間新が続出!
東京国際大の監督が
「時計くるってる?」
と発言したほど。

確かに、テレビを見ていても、ものすごい早い感じがする。
たまに、沿道で並走する人を見かけるが、並走しているように見えないくらい選手が早すぎる。

さらに、厚底シューズのおかげか、飛んでいるように走っていて、
え?地面に足ついてます?
と確認したくなるほど。

シューズのおかげで区間新が出たとしても、自分の体力も使うわけだから、最後は倒れ込む選手が多い中、もんのすごい涼しい顔でゴールしたのが東京国際大3区のヴィンセント選手。

ケニア人特有の長い手足を存分に広げまくり、カモシカのように走っていく。強靭なバネという言葉がぴったりなふくらはぎも、走るたびに伸びたり縮んだり。

脅威の区間新をだしたにもかかわらず、ゴールしたときは、

まだ走れますけど、何か?
みたいな涼し気な顔で、ゴール付近をランニング。
恐ろしすぎる・・・

ちなみに、ヴィンセント選手はオレンジと緑のカラフルナイキシューズを履いていた。

別にマラソン女子でもないし、どちらかというと歩く方が好きなのだが、
厚底で軽いシューズは大好物なので、買ってしまいそうになっている。
マラソンはダイエットのために仕方なくやっているが、ナイキにしたら、ぴょんぴょんはねて、走るのも楽しくなるかな~という期待を込めてかっちまおうかと思ったが、3万もするのでひとまずやめた。

新年の富士山

1年の計は元旦にあり!と言われるように、元旦は新年の抱負をいってみたり、計画を立ててみたりするもの。
箱根駅伝は1月2日だけれども、まあ元旦のうちということで、駅伝を見ながら手帳整理をしつつ、今年の抱負を書いてみたりする。

それだけでなく、やっぱり何かしらのパワーを感じたいわ~と思っているときのドンピシャのタイミングで現れるのが、日本人の心のふるさと「富士山」登場である。

往路は選手の目の前に富士山が立ちはだかる構図になり、テレビでは選手の顔を映すため、それほど富士山は映らないが、復路は、富士山を背に選手が走るため、かなりの長い時間富士山を拝める。

一生懸命走る選手の背後にそびえる富士山の神々しいこと!

勝手にテレビの前で手をあわせたり、手を広げてパワーを感じたりしている。

新年から富士山を生中継でこんなに長い時間見られるのは箱根駅伝だけ!

富士山を見るだけでも、箱根駅伝見る価値あり!


毎年見ていると、1,2年から出ている子が上級生になって、ちょっと男らしくなったり、体も鍛えて立派になった姿を1年後に見ると、
「あ~あの子もこんなに大きくなったのね」
とひと様の息子さん相手に、母心を抱く始末。

年々涙腺も崩壊し、今年は往路で泣きすぎて、目が腫れたほど。

区間賞をとっても、1秒しか詰められなかったことにうなだれる選手をみたり、足がつって倒れ込みながらゴールする選手をみたり・・・

もう、このあたりは箱根駅伝マニアブログを読んでもらえれば1区1区詳細な情報が書いてあるので、ここでは書かないが、伝えきれないほどのドラマが2日間で繰り広げられるのである。


10時間も走っているのをみるだけで何が楽しいのよ!という陸上や駅伝に興味がない人にも面白さを伝えようと、書き綴ったが、いかんせん、思いが強すぎて長すぎた・・・
しかも、面白さを伝えると書きつつ、終わったばっかりということに気付く。

とにかく一言!
箱根駅伝見て、得することはないかもしれないけれど、損することはない!
だらだら寝てるだけなら、寝ながら箱根駅伝を見よ!

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