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かわいいあの子

秋田の中学時代の同級生たちと東京で飲んだ。FBでつながったり、個々でほそぼそとつながっていたメンバーと連携をとったりと、7名が集まった。

地元秋田でもないのに東京で7人が会うなんてすごいことだ。

わたしはというとその中の一人とはFBでたまたま共通の友だちつながりでつながり、去年中学卒業以来30年ぶり?おそろしい年月を経てあった。もう一人とは7~8年前に秋田でのプチ同窓会で出会い、昔話に花が咲き、そこからつながっていた。

記憶がよみがえったあの子

ということで、他5人は中学卒業以来あってない。そのうちの一人、太郎(仮名)は名前をきいても全くピンとこない。中学は2~3の小学校が集合したから、小学校が違い、かつ同じクラスになったことがないのかもしれない。そうだ、間違いない。と変な確信をもって居酒屋に向かった。

遅れてきた太郎の顔をみると、なんとなく見覚えがあった。あ、いたいた的な。

太郎「お!ゆきんこ久しぶり」

と中学卒業以来なのにかなりフランク。なぜだ、接点がなかったはずだぞ。

ゆきんこ「同じクラスになったことないよね?」

すると、隣にいた花子が

花子「いやいやいや、同じ小学校だったし、1年のとき同じクラスだったじゃん」

ま、まじか・・・全然覚えておらん。

太郎「ゆきんこと結構仲良くて、すっごいしゃべってたと思うけど、忘れられてたとは・・・」

と苦笑いしながらビールをがぶり。

ゆきんこ「ちなみに部活は?」

太郎「はじめましての婚活みたいだな。寂しいのう。おれ、バスケットやってたんだけど、途中であきちゃってやめたんだよね。そんで、誰それと誰それと仲良くて・・・」

知っている登場人物が増えてくるたびに、人と人がつながり、30年前の中学時代の思い出がよみがえってくる。そういえば、確かに中学1年のときに太郎がいた。そして太郎と誰それと誰それとベランダでよくしゃべってた!

こうなってくると、記憶というのはどんどんよみがえってきて、あんなこともあった、こんなこともあったとびっくりするほど思い出があることに気づく。

ゆきんこ「わたし、根暗だったし、クラスの中心になるような活発さもなかったし、かわいいかといえば微妙だったし、食欲旺盛でちょいぽいちゃだったし・・・さほど目立ったやつじゃなかったんだよね」

太郎「え~そんなことないよ。結構、ぶつぶつ一人でしゃべってじゃん」

変な奴認定で目立ってたってことか。今と変わらない中学時代のわたしを思い出す。

かわいいあの子

初恋は幼稚園の先生~、初恋は小学校の隣の席のあの子。なんて、わたしのまわりの友だちたちは初恋がなかなかにして早かった。

わたしはというと、小学校時代にバレンタインデーにチョコをあげたいと思った男子がいなかったところをみるとめちゃくちゃ好き!気になるという男子はいなかった。

中学校に入り、他の小学校から見知らぬ男子がわんさか合流しても、さしてビビビとくる人がいなかった。なんといっても、当時はBOOWYの氷室京介とか、BUCK-TICKのあっちゃんとかビジュアル系バンドのイケメンにハマっていた時期で、あんな大人イケメンが中学校にいるわけもなく、好きな人なんてそうそう簡単にできるはずがなかった。

そんなある日。ソフトボール部に入ったわたしは外野で球拾いをしていた。同じグラウンドの反対側では野球部が練習していて、同じように1年生たちが球拾いをしている。

わたしも打ちたいな~なんて思っていた時、大飛球が頭上を越え、野球部エリアに。すると、その大飛球を華麗にキャッチし、なにもいわずにほいっと投げてくれた男子がいた。

体はさほど大きくなく、真っ黒く日焼けした顔にはくるくるのまん丸お目目。ちょこんと乗った鼻がなんともいえなずキュート。

「か、かわいい」

男子だけど本当にかわいいと思った。どのクラスの子だろうと次の日からウロウロしていると、隣の隣のクラスにいる子だとわかる。
野球帽を脱いだ、キレイに剃り上げた頭もまん丸でかわいい。もうこうなってくるとなにしてもかわいいのだ。

ボールをとってくれた日からかわいいあの子をみつけては、心の中で「やっぱりかわいい」といつも思っていた。

それが初恋だったのかどうかわからない。というのも、告白したわけでもなく、しゃべったこともなく、クラスが一緒になったこともなく、なにも接点がなかったから、かわいい以外昇格のしようがない。しかも、そばを通るだけでドキドキする~なんて友達たちは好きな人のことについてやんやと騒いでいたが、それはなかった。ただただかわいい、尊い・・・押し活?

「かわいい」を見つけて半年くらいは、かわいい、かわいいと思っていたが、2年生になるころには、「まあ、かわいいよね」となり、自分の中のかわいいブームが潮が引くように去っていった。ただ、一番仲の良かった友達に「かわいい、かわいい」といっていたら、

「それは好きってことでしょ」

といわれ、好きということにしていたのだが、他に好きな人ができたわけでもなく、急に冷めた「かわいい」をどう説明したらいいかわからず、一応気になる人として友達には認識させておいた。

あれから30年。

あのかわいいあの子が東京にいるという。しかも来る!

「かわいい」ブームを牽引してくれたあの子がどう成長したか気になるに決まっている。

そして、案の定遅れてきたかわいいあの子は・・・

立派におじさんになっていた。

当たり前といえば当たり前なのだが、あのかわいいシンボルだったまん丸お目めもなく、ちょこんと鼻もなく、身長は推定175cm以上と大柄で、かわいいあの子がすっかり消えていた。

口をあんぐりとあけたまま、かなりじ~っと見てしまっていたかもしれない。
そして「昔、あんなにかわいかったのに!」
を10回くらいは言ってしまったかもしれない。それくらいかわいいあの子は立派なおじさんになっていた。

でもまあ、イスラム圏の子供はものすごいかわいい子が多いのに、大人になるとみんなちょび髭おじさんになってしまうように、幼少期がかわいいからといってそのままかわいい大人になるかといえばそうでもない。

かわいいあの子は立派なおじさんになり、立派なスポーツインストラクターなるものもやっていて、いろいろ立派になっていた。

同窓会は焼け木杭に火が付くなんていうが、どうやったら火がつくのだろう。は!そもそもかわいいあの子とは接点がなかったんだったとわけのわからないことを思いながら、昔の同級生たちがそれぞれのステージで活躍しているのを知り、うれしく思うと共に刺激をうけた。

昔の自分を知る人たちと会い、当時の自分について話をしてもらうのはなんとも不思議な気分で面白いものである。


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