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⑦オンライン大学院生!ロンドンメトロポリタン大学会議通訳修士課程で学ぶ

こんにちは!

前回の記事からすっかり時間が空いてしまいました。今年はことさらに猛暑だという日本のニュースを聞きながら、夏らしい暑さが短かったイギリスを少し寂しく思いつつ、こちらを書いています。

前回までの経緯は、こちらから。

現在、大学院の授業は夏期休暇に入っています。しかし、今年9月に卒業する予定のクラスメートたちは、修士論文の執筆に忙しくしているようです。一方、私の2年間の大学院生活はちょうど折り返し地点に来ています。

ついに対面の授業!

イギリスでは、だいぶコロナウィルスのワクチン接種が進み、5月~7月にかけて段階的に規制解除が行われました。その過程で、昨年からずっとオンラインのみで行われてきた大学院の授業も、5月頃から少しずつキャンパス対面で行われる機会が設けられました。しかし、キャンパスで授業が行われる場合でも、必ずオンラインからの参加オプションもあり、「ハイブリッド形式」となっていました。クラスメートの中には、ずっとイギリス国外から遠隔で授業に参加していたメンバーや、濃厚接触者になってしまったり、家族や自分が感染してしまったために自主隔離しなければならないメンバー、ワクチン接種待ちなど、常にそれぞれの事情があったためです。そして、キャンパスでも厳重なコロナ対策が行われており、実際に対面授業に出席するためには、前日までに簡易検査キットでの陰性結果を提出することが義務付けられていました。それでも私自身は、同時通訳の演習がある場合には、できる限りロンドンのキャンパスに足を運びました。

半年以上オンラインのみで顔を付き合わせていたコースリーダーのダニエル先生や、(一部の)クラスメートと初めて会った時のことは、忘れられない思い出です。みんなで「思ったより誰の背が高い/低い」とお互いの足が見られたことに感動し、マスクをしながら通訳練習をし、静まり返った大学のカフェで、ソーシャルディスタンスを保ちながら、各自持ち寄ったランチを一緒に食べたりしました。限られた時間と空間の中で、みんなが夢中で通訳への想いを語り合っていました。授業開始時間になっても、まだしゃべり足りなくて、皆でクスクスと笑い合いながら少し浮かれていました。そんな、少し前までは当たり前だった光景が、オンラインでは味わえなかったので、急に新鮮な感覚としてよみがえりました。一方で身の引き締まる瞬間もありました。逐次通訳の演習中に、私がいつもの感覚で通訳のデリバリーをしていると、ダニエル先生からのお叱りが飛んで来たのです。「その姿勢はなんですか?! オンラインで授業しているとこれだからダメ! お客様の前でもそんなだらしない姿で通訳するの?!」という厳しい言葉。それは真っ直ぐに私の心に突き刺さりました。それまでオンライン授業の恩恵も多く感じていましたが、こういう場面では、やはり対面でお互いの姿が見られて、熱が伝わる授業の貴重さをあらためて思い知らされたのでした。通訳者として、私はこの日の先生の言葉を一生忘れないと思います。

遠隔のみで完成させたグループ・プレゼン

1年目後期課程の授業は今年6月に修了しました。後期に私が履修していたモジュールは以下の二つです。
①Conference Interpreting 3 (同時通訳)
②The Interpreter’s Professional Environment (通訳者の職務環境)

①の同時通訳モジュールの試験は、5月に前期と同じ方法でオンラインで行われました。同時通訳モジュールでの学びに関しては、前回の記事で詳しく書いています。

②のモジュールの試験は、二つのパートから構成されています。一つは他言語の学生同士で4-5人のグループを組んで、自分たちが興味あるテーマに沿って調べ、プレゼンを作成し発表すること。もう一つは、自分が実際に通訳者として出席した案件についてレポート作成し提出すること、です。一つ目のプレゼンに関して私は「コロナ禍によって急速に普及した遠隔通訳」と「通訳者の心身の健康 (wellbeing)」の関係といったことに関心があったので、同じテーマをリサーチしてみたい仲間と4人(メンバー構成は英語、フランス語、中国語の通訳者)でグループを組みました。これは共同作業のプロジェクトを、全工程オンラインで進め、一つのプレゼンを完成させるという、とても良い経験となりました。コミュニケーションは主にWhatsAppやメールで行い、資料共有はgoogle driveにアップロード、作業工程とタイムラインはspreadsheetで管理、毎週1回はZoomでミーティングを行い、プロジェクトを完成させていきました。そして、最終試験である4人でのプレゼンもオンラインで行われ、私たちのグループは、最高得点の評価をいただくことができました。

第3回JACI同時通訳グランプリへの出場

もうひとつ、大学院生活1年目で貴重な経験となったのがJACI (日本会議通訳者協会)主催の「第3回同時通訳グランプリ(※)」に出場したことです。予選の結果、学生部門でファイナリスト4人に入選することができ、最終選考に出場させていただきました。今回は、6月に行われた最終本選もオンラインによる遠隔で開催でした。海外にいながらこのような日本での通訳業界イベントに参加できたことで、あらためてオンラインの恩恵を感じました。結果、入選することはできませんでしたが、多くの方が聞いてくださる中でプレッシャーと戦いながら、同時通訳のパフォーマンスをさせて頂くという、非常に貴重な機会に恵まれました。また、大会に参加したことによって、多くの方との出会いがありました。特にそのご縁で、アメリカやオーストラリアなど他国の大学院で日英通訳を勉強した方々との交流や情報交換の場が持てたことは、予想外の収穫でした。ちなみに、この経験から得た学びは、上記②のモジュールのもう一つの課題である「案件レポート」に詳しく書きました。準備の段階からのアプローチや、具体的なリサーチ方法、本番中の自分のパフォーマンス、学びや反省点、今後の目標など、多岐にわたる角度から分析し、現在レポートを作成中です。これは9月に大学院に提出する予定です。

会議通訳修士課程2年目に向けて

以上が、私の大学院会議通訳修士課程の1年目の振り返りでした。年間を通して授業はほぼオンラインでしたが、集中して学習できたことに加え、多くの素晴らしい出会いに恵まれた1年でした。当初は「授業についていけるだろうか?」「オンラインで大丈夫かな?」などの不安がありましたが、そんな心配はすぐに吹き飛ぶほど多忙で、充実したカリキュラムでした。結果的に、思ったより何倍も有意義な時間を過ごすことができました。

さて、今年の10月から2年目のモジュールがスタートします。ここからは、通訳演習に加えて、修士論文に向けたテーマの検討、リサーチという作業も待ち受けています。また昨年と大きく違う点として、新学期からは、引き続きオンラインで提供されるモジュールもありますが、対面キャンパス授業の割合が多くなるようです。しかし、英国でもコロナ禍が依然として完全に収束したわけではないので、今後とも政府の方針によっては、また授業形式が変更になる可能性も大いにあります。

不定期の更新ですが、無事に卒院できるまで記録していきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いします!

(※学生・社会人と、同時通訳者になって4年以内の通訳者の同時通訳のスキル向上、切磋琢磨する機会の提供を目的としたコンテスト。)


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