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イギリスで就職活動をした話

こんにちは!

今回は、私が2013年に渡英した当時に行った就職活動について書いてみたいと思います。

なぜイギリスに来たか?

私は2013年3月にイギリスに移住しました。移住の理由は家人がイギリスの企業から採用されたことです。一方私は、全く無計画のまま引っ越してきてしまいました。住む家も決まっていなければ、仕事もない、銀行口座も、携帯電話すらない状態でした。それに加えて、頼れるネットワークも友達もいなかったので、まさにゼロからのスタートとなりました。今から考えるとなんて無謀なことをしたのだろうと思います。

社会参加して人と繋がりたい!

到着してすぐに家を探し、やっと見つかった賃貸物件に住み始めました。しかし日本からのほとんどの荷物を船便で送っていたため、まさに持ってきたスーツケースの中身だけでの生活です。それでも、まぁ1~2ヶ月ならなんとかなるだろうと気楽に考えていました。当初は、まずはイギリスの生活に慣れて落ち着いてから仕事のことなど考えよう、と思っていたものの、1ヶ月も経たないうちに「何か仕事をしたい」と強く思うようになりました。現地で暮らす人たちの日常を見ているうちに、とにかく社会に出て、人と繋がりたくて仕方なくなったのです。

さてどんな仕事をするか?

私は、日本企業で社内通訳・翻訳として勤務した経験があったので、まずその方向でイギリス現地のエージェント数社に履歴書を送ってみました。しかし、もちろん何の返信もありません。今から思えば当たり前のことなのですが、当時は実績も学位もない私が、いきなりイギリスで通訳の仕事を開始するなんて、本当に無謀だったのです。業界のこと以前に、イギリス社会で日常生活を送るための知識すら皆無でした。ガッカリせず、とりあえず方向転換です。そうだ、まずは現地の企業に就職してこの国のことを学ぼう、と考えました。そして日本語を使う仕事も、今はちょっと脇に置いておこうと決めたのです。私は、日本で5年以上役員秘書の経験があったので、その方面で職探しをすることにしました。ちなみに、イギリスでは、採用の際に「その分野での学位や資格」と「前職での経験」がものすごく重視されます。私は、全く新しいことを始めてみようか?という淡い野心もあったのですが、すでに30代に突入していた私が、異国で転職活動をすること自体、そんなに甘くありません。もちろん新しいことも始められたと思いますが、当時その考えは漠然としすぎていたし、ゼロからのスタートだったら何倍も時間がかかったことでしょう。それよりも、私は早くイギリスで生活する上での情報や知識を得て、自分の生活を軌道に乗せたくて仕方ありませんでした。たわいもないことが知りたかったのです。仕事のやり方、職場のコミュニケーション、週末にどこに行って、みんなどんなところでショッピングをして、何かあったら、どこでどんなサポートが受けられるのか?でも、一番は仕事をすることで社会の一員になれる!みたいな希望がありました。

どうやって職探しをしたか?

前述の通り、当時は仕事のあても、知り合いのコネも皆無だったので、まずは、地元のエージェント数社に登録し、自分が希望するような求人があったら、照会してもらいました。エージェントを通じて50通以上の履歴書を送ったと思います。それと平行して、自分で見つけた求人にも、どんどん履歴書を送りました。特に、私が住むオックスフォードは大学が最大の産業です。そのため、大学の職員を募集する求人サイトを毎日チェックしていました。これは、意外に知られていないのですが、私のような秘書業務(現地ではPersonal Assistant, Executive Assistantとよばれる職種)は、常にあらゆる企業で求人があります。常勤、非常勤、産休補充など、とにかく豊富です。また女性が多い職種でもあります。年齢も問いません。日本と違ってイギリスでは、退職まで役員秘書として働いている女性がたくさんいます。そして何よりも、業界を選ばないのが特徴です。国境さえ超えられます。私も今まで、秘書として働いた企業は様々です。日系、外資を問わず商社、ホスピタリティ産業、小売、大学とまちまちです。高い専門性を求められる職というわけではないので、それほど高額な報酬は期待できませんが、求人率の高さや業界選び、働き方のフレキシブルさではピカイチの職業だと思います。いろんな業界に入っていき、素早く空気感を読む感覚は、通訳の仕事にも大いに役に立っています。

面接で聞かれたこと

話は逸れましたが、オックスフォード大学でも、秘書業務の求人がたくさんありました。それこそ、あらゆる学部で、あらゆる役員レベルのアシスタントを募集しています。履歴書を送った中から、いくつか面接に呼ばれました。たぶん面接に呼ばれた回数は、送った履歴書の1割程度だったと多います。最初は要領を得ず、不採用通知が続きましたが、何回か面接をこなしていくうちに、だんだん聞かれる質問がわかってきて、それを中心にサンプル回答を作成し、自分の言葉で言えるよう練習していきました。ちなみに、聞かれた内容はごく一般的なことです。「前職での経験」「なぜ転職したいのか?」「困ったことはあったか?それをどう乗り越えたか?」「仕事で達成したことの具体例は?」「プレッシャーやストレスにどう対応するか?」などでした。中には、仕事のリストを渡され「この仕事に優先順位をつけて、なぜその順番なのか理由も説明してください。」というものや、「上司との関係で一番大事にしていることは?」というような秘書業務に特化した質問もありました。それに加えて、実務テストもありました。エクセルで予算表の整理、経費精算フォームの入力、上司の訪問先とのスケジュール交渉のメールを書く、など実践的だったと記憶しています。

秘書業務のいいところ

最終的に、大学の医学部から仕事のオファーをいただき、渡英3ヶ月後に就職することができました。当初は、そこをまず足がかりにし、慣れたらもっとお給料がいいところに転職しよう!という気持ちで仕事をスタートしたのですが、現在かれこれ8年近くお世話になっています。途中で、サポートする上司が変わったり、業務内容も変わり、産休を取ったり、パンデミックがやってきたり。。。本当にいろいろありました。サポートしている上司はもちろん、一緒に働く同僚や組織、業務形態のフレキシブルさに助けられて、ここまで仕事を続けています。この秘書業務とは、専門スキルこそ求められないものの、かなり幅広くマルチでフレキシブルな役割が求められます。上司の関わるプロジェクトやコラボレーション、優先順位を把握して、サポートをしていきます。上司のスケジュール管理や、外部とのミーティング設定は定番ですが、サポートする上司の希望に合わせて対応していきます。私の場合も、学会の企画運営、研究室の実験用具の発注から予算管理まで、臨床試験のデータ管理など、いろいろ経験させてもらって来ました。日本の職場で働いた経験と大きく違うと感じるのは、何かを手取り足取り教えてくれる人はいないことです。新しい業務の度に、同僚からの情報や職場のネットワークを総動員して自分で仕事を進めていくことがほとんどです。そのため、指示待ちに慣れていると、仕事が全く進まないのです。でも、わりと几帳面で、整理整頓が苦でない人には、向いている仕事だと思います。

イギリス人の気質と生活

私は仕事を通して、ほぼ全てのイギリスで生活していく術を学んだと言っても過言ではありません。何よりも、まず英語が鍛えられたと思います。あとは、日本とは違う仕事の進め方、生活のペース、イギリス人の気質です。どんな風に言ったら嫌がられて、どういうふうに話を持っていくと良好な関係を築けるか。渡英当初は、恐ろしいほど無知だったイギリス独特の階級社会についても、身をもって理解していきました(このことを理解していないとどうなるか?メーガン&ハリーのスキャンダルは、まさにそれが原因だと私は考えます)。

これから

紆余曲折を経て、現在は秘書業務を継続しつつ、フリーランス通訳者としての仕事もさせていただいています。イギリスに来たばかりの頃は叶わなかったけれど、ずっと持ち続けていた夢でした。今、日本でも複業が一般的になりつつあるようですが、まさにそんな感じです。私の場合は、いま大学院生でもあり、通訳もビジネス会議から公共サービスまで受注しています。予期せぬコロナ禍に見舞われ、まだまだ今後のことは不透明です。でも現実や時代の流れをみながら、未来の展望を持ち、フレキシブルな判断をしていきたいと思っています。

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