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⑤オンライン大学院生!ロンドンメトロポリタン大学会議通訳修士課程で学ぶ

こんにちは!


イギリスでもだいぶ日が長くなり、春らしくなってきました。先週末に夏時間に変更となり、もうすぐイースター休暇が始まります。

前回に引き続き、ロンドンメトロポリタン大学会議通訳修士コースでの授業の様子を書いてみたいと思います。今回は、後期課程の様子です。

前回までのお話は、こちらから。


2月から開始した後期課程の授業は、現在もう半分のところまできています。今のところ前期課程に引き続き、授業は全てオンラインで進められています。4月初旬のイースター休暇後に後半の授業が始まり、5月と6月に後期課程の修了試験が実施されます。というわけで今日は、後期課程前半を終えたところまでの学びを書いてみます。

後期に履修しているモジュール


2年間のパートタイム学生の私が、1年目の後期課程で履修しているのは、以下二つのモジュールです。
①Conference Interpreting 3 (同時通訳)
②The Interpreter’s Professional Environment (通訳者の職務環境)

※フルタイム(1年で履修)の学生は、これに加えて修士論文のコースと、「欧州連合(EU)/国際連合(UN)」もしくは「公共サービス通訳」どちらかのモジュールを選択履修しています。

①Conference Interpreting 3のモジュールでは、同時通訳スキルを学びます。これは、英→日と日→英どちらも含まれます。②The Interpreter’s Professional Environment (通訳者の職務環境)では、通訳者としての職務規定、倫理観、マナー、自営業者(フリーランス)としてどのように仕事を獲得していくか、SNSの効果的かつプロフェッショナルな使い方、CV作成法などを中心に学びます。また、こちらのモジュールに付随して、毎週ゲストスピーカーの方の講演があります。ゲストには、現役のEU機関の通訳者、Social Media Marketingの専門家、通訳エージェントのPM、通訳業界団体の代表者などが招かれ、毎回とても貴重で興味深い内容の講演です。

今回は、①Conference Interpreting 3 の同時通訳モジュールについて、前半での学びを書いてみたいと思います。

二つのアプローチ

同時通訳の授業を受けてみて、そのスキル習得にあたり、私なりに大きく二つのアプローチに分けて取り組むことにしました。一つは、同時通訳のスタミナの強化。もう一つは、テクニックを身につけることです。

同時通訳のスタミナをつける

同時通訳時のスタミナとは、いわゆる持久力です。でも、持久力をつける=ただ長い時間同時通訳することができる、という意味ではありません。同通のスタミナとは「高いクオリティの訳出を維持できる時間」です。一般的には一人の通訳者が連続で通訳する時間は10-20分程度、そこでパートナーと交代します。もっと長く通訳できると言う人もいるかもしれません。でも、訳出のクオリティを高く保つことができるのは、どれくらいか?ということが厳しく問われた場合、内容やスピーカーにもよりますが、長くても20分くらいが限界と言えるようです。逆に言うと、最低でもこの長さは、訳出のクオリティを一定に保てるスタミナをつける必要があるということです。通訳者が自分で自覚するよりもずっと早く訳出のクオリティは下がり始めるという研究結果があるそうです。さて、このスタミナをつけるために、毎週水曜日の午後2時間の演習が行われました。ただひたすら、長いスピーチを同時通訳する練習です。練習のルールは、まず必ず自分の訳出を録音すること。スピーチは1-2時間くらいの長さです。でも、2時間ずっと訳し続けるわけではありません。訳し始めてから、自分の集中力が切れてきて、もう限界だと思うところまで続け、そこでやめます。そこで少し休憩し、また訳出を継続していきます。毎回この「自分の集中力が持続できる時間」がどのくらいなのかを記録していき、それを少しずつ長くしていくことが目標です。また、練習後に必ず録音を聞くこと。自分が限界だと思うところまで、本当に訳出のクオリティが保たれていたのか、確認します。また、どのあたりで質が落ちてきたのか、それはなぜか検証していきます。この練習のポイントは、できるだけシンプルで、簡単な(もしくは自分にとって身近な)内容のスピーチを選んで練習することです。専門的な用語や、スピードが速い内容の教材では、余計な負荷がかかってしまい「スタミナをつける」という本来の目的に合わなくなるからです。この練習は、自分でも毎日30分程度やるように推奨されます。私はPCに向かって一人で30分はキツかったので、散歩をしながらとか、ちょっと買い物に行く時などに行っていました。でもこれだと、録音ができません。しかも、道端で何度も立ち止まって単語を調べたり、表現をメモしたりということになり、結局疲れるだけで終わってしまい反省しきりです。この練習に最も効果的な方法は、やはり仲間と練習することだと思います。私にとっては、日本語のクラスメートや、所属しているオンライン通訳講座グリンズアカデミーの仲間と練習する機会が一番だと思っています。


同時通訳のテクニックを身につける

さて、スタミナと同時に取り組んだのが、同時通訳のテクニックを身につけることです。例年だと、この同時通訳演習モジュールは、隔週で模擬会議が行われていました。学生は、大学の通訳科の教室に設置された実際のブースに入って同時通訳を練習することが中心だったそうです。しかし、今年は授業が遠隔オンラインで行われているため、模擬会議の代わりに、言語別のチュートリアルの時間数が2倍になりました。今までは合計8回だった言語別チュートリアルが、今期は倍の16回です。私の場合は、日本語でのチュートリアルが毎週4時間(一回2時間 x 2日間)というスケジュールになっています。回ごとに、英→日、日→英にそれぞれ特化し、交互に進められます。このチュートリアルでは、毎回事前にトピックが与えられます。そのトピックの内容をある程度予習して授業に臨むことが必須です。そのトピックを自分なりにリサーチし、用語集を作ったり、そのテーマでスピーチ作成することが課題になることもあります。そして授業中に初めて聞くスピーチ(長さ10分程度)を、初見で同時通訳する演習です。この時、自分の初見通訳を録音し、授業の中でそれを講師の先生と、クラスメートと一緒に聞きます。これは、苦痛すぎて逃げ出したくなる作業なのですが、そうでもしない限りなかなかできないため、自分の初見とじっくり向き合う絶好のチャンスです。私は前期の逐次通訳の時に学びが多かった練習方法を、今回のモジュールでも実践してみました。

長くなってので、その練習方法については、また続編で書いていきます。

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