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六月は甘味の月

毎年、六月という月はなんとなく「地味」に感じます。連休はないし、今年の半分を消費してしまうのが見えてくるし。でも実は六月は甘味に関連する行事が多い月なんです。

  • 6月1日:氷室開

  • 6月16日:嘉祥(嘉定)

  • 6月30日:夏越の祓

6月1日:氷室開

正しくは旧暦なので今月1日ではないのですが…。江戸時代以降、この日に氷餅を食べる風習がありました。氷餅は餅を水に浸したあと冷たい空気(寒風)にさらして乾燥させます。そのため、東北地方や信州など冬の寒さが厳しく寒暖差のあるところで作られます。

6月16日:嘉祥(嘉定)

嘉祥(嘉定)は江戸時代の宮中や武家の行事で、菓子を贈りあう日とされていました。江戸幕府の嘉定は将軍が諸大名に菓子を下賜する一大イベントでした。彦根城博物館に所蔵されている『嘉祥之式書』『嘉祥之式図』には彦根藩主井伊家当主の座る場所や菓子を受け取る位置が図示されていて、当時の混雑ぶりと幕府の事務方の苦労が推測できます。配られる菓子は羊羹、きんとん、饅頭などでした。

6月30日:夏越の祓

夏越の祓は半年分の穢れを祓い清める行事です。日本各地の神社では茅の輪くぐりや人形流しが行われます。京都ではこの日「水無月」という菓子(ういろうの上に小豆を乗せた菓子)を食べますが、江戸時代前期の『日次紀事』には六月晦日に蒸餅を食べる記載があるので古くからそういったものを食べる風習はあったようです。

このほか、『延喜式』には6月1日から7月30日まで醴酒(ひとよざけ=一夜酒)を毎日作って飲む記載があります。醴酒は今でいう甘酒です。

どうでしょう、六月は生活のハリがないなと思っていたら、こんなに甘味イベントがありました。雨が降って、または降りそうで出かけられなくても、行事に因んだ甘味を用意してお茶の一碗を点ててみると、"こうした時間の「今」もいいなぁ"と感じるのではないでしょうか。

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