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オバサンな父

今回はちょっとふざけすぎました、冒頭の写真。
父よ、許せ、、。

ということで、
父がだんだん、オバサンになってきたと言うお話しです。

20年前に母が亡くなってから、父はなんとな〜く雰囲気が柔らかくなってきて、今は認知と同じぐらいのスピードで、ゆっくりゆっくりフェミニンの道。

あ、ちょっと違うかな、フェミニンと言うわけでは、ないのかもしれない。
言葉使いやちょっとした仕草がオバハンっぽくなってはいるが、そういうことよりも、生前の母がやっていたような仕草や行動を、気がつけば父も同じ様にやっているではないか!というようなこと。

私が思うに、、母が何気に入り込んでいるのかも、父の体に。
でも、父から懐かしい母を垣間見る、と言うのでもない。
なんというのか、気がついたら物腰が柔らかくなっていて、
あれ、いつの頃からかオバサン?
みたいな錯覚になっている私がいるのだ。
あ、姉も同じ様に思っているのだ。
だから、錯覚ではないのだな。きっと事実なのである。

おばはんな父、その一。
ご近所付き合い。
これはもう、全くもってびっくりだ。

昔はご近所のことなどまったく知らなかったし、知ろうともしなかったし。
たま〜に向こうから挨拶されれば、八方美人の父はニコニコと挨拶を返すも、すれ違った後に必ず、
「あの人、っ誰!?」

でも今は、かなりのご近所さん通。そして、井戸端会議好き。
娘の私は、目をコシコシと擦ってしまうほど、びっくりなのだ。

「お隣の佐藤の奥さんと、ゴミ出しでばったり会っちゃってさー。色々話しちゃったよ」っと、父。
話好きの佐藤さんと父がペチャクチャすれば、軽く30分は超えてしまうのだ。
「あのおばさんはさー、いつも話が尽きなくてさー。立ちっぱなしでもう腰が痛くなっちゃったよ。」といつも父は言うけれど、いやいや、きっと佐藤さんも同じようなことを思っているよ、「また足が棒になっちゃったわ〜」って。

お向かいには、私の中学校の後輩、深田くんのお母さんがひとり暮らし。
長い間膝を患っているおばさんは、同じく膝が悪い父をよく気遣ってくれる。
そして、毎週何曜日はデイケアでこんなことをしているとか、ベランダの洗濯機の蓋が飛んでしまったとか、いろいろ聞かせてくれるらしい。
もしかしたら、深田くんよりも父の方が、おばさんの日常を知っているのかもしれない。
里帰りの時、実家前で深田さんと父が立ち話しをしていたんだけど、その姿がオバサン同士にしか見えなくて、笑ってしまった。
あ、父を馬鹿にしてるんじゃなくて、ご近所と思い切り馴染んでいる姿が、微笑ましかったのだ。

で、この佐藤さんと深田さんが、父にご近所さん情報を教えてくれる、貴重な隣人なのだ。
父はこのご近所さんなしでは、きっと生きていけない。

そして最近、もう1人加わったようである。
恐るべし、、村田のババァ。
このババァと、いつの間に仲良しになっていただなんて! あぁ驚いた。
腰が抜けるほどに驚いてしまったのだ。

だって、
通行人の声がうるさいあーだこーだ、あの家の換気扇から匂いが漂ってくるあーだこーだと、よくわからぬ理由ですぐに警察を呼んでしまう、あの意地悪ババァである。
父が犬を飼っていた頃、散歩で村田家の前を通るたびに、
「家の前で糞をしたら、タダじゃおかないからね!」
みたいなおっかない顔して、っふんが!と白目剥いてガンを飛ばしていた、あのババァである。

仲良くなったと聞いた時は、
「、、もしや父に、変な粉をかけやがったか!?」
な〜んて思ったけど、どうやらそんなことではないらしく、

物腰が柔らかくなってきた父 + 堅物がほどほどになってきた村田ババァ=仲良し

な、だけだった様である。
でも、あんな意地悪ババァがご近所と仲良くなれるほど、温和になったとはねぇ、、。
父がそう言うのならば信じてみようと思うけど、、未だに疑心暗鬼な私である。
今度里帰りした時に、ようくこの目で見るまでは、、、、。

あ!またいつもみたく話がくねくね蛇行しちゃった。気がつけば、ご近所紹介とババァの悪口だ、、
まぁ、いいか。

おばはんな父、その二。
食材のお買い物に、拍車がかかる。
これも 、おばはん化かどうか?、、かもしれないけれど。
昔はこんなにお買い物はしなかったのよ。
でも今は、駅前にあるスーパーだけじゃ物足りなくなったのか、駅向こうや隣町と、4つのスーパーを使い分けておる!
この辺が、母と似ているのだ。
違う食材を求めたり、またはその時の気分だったり。歩いて行けるスーパーから、二駅先の駅まで自転車かっ飛ばしたり。
母のスーパー巡りを、そのまま辿っているような父なのである。

といっても、グルメな物を作っているわけでもないし、第一父はグルメではないのだ。
でも、楽しい様なのである、各スーパーのおすすめ品や色とりどりの野菜の棚や、過ぎないほどの活気で賑わっている店内が。

それから、果物。
昔はぜったいに買わなかったフルーツなのに、今は季節を楽しむかのように買ってくる。
父とイチゴ。いままで見たことがない、この組み合わせ。
父とさくらんぼ。冗談でしょ?的な組み合わせ。
もちろんこれも女子的ではないのだろうけれど、でも自転車のカゴにフルーツ入れて家路に急ぐ父の姿が、なんかルンルンしているように見えるのだ、かわいいオバサンみたいに。そして、それがなんか萌るのだ。

おばはんな父、その三。
おしゃべりする時、ついつい手が出ちゃう。

昔の父は、不動とまではいかないが、普通にじっとしたままでおしゃべりしていた。
でも最近は、おしゃべりと一緒に身振り手振りがついてくる。
電話の画面から父の手がひょ〜っと届きそうで、臨場感あふれるこの感じ。
なにげに3D。

手が会話についてくることは、「おばはん化」と言うよりも、ものがなかなか思い出せないから? きっと、そう。
「なんだっけ、ほら、あれ、、ねえ、あれあれ!」
初老にもうすぐ届く私も、思い出せずについ手がひょこひょこしちゃう事も、よくあるし。だから、そのもどかしさ、良〜くわかる。
宙に浮かんだ言葉を手で探す様にひらひら舞う父の両手が、なんか歌舞伎の女形のように見えちゃって。
そしてその感じが、母の「あら〜、やだ!」と言いながら一緒に動いていた手に、なんだか似ているのだ。
母の仕草が、父の手からもひ〜らひら。

と、色々書きましたが。
父から見え隠れする ” 何気なフェミニン " はまだたくさんあるけれど、書いていたらキリがないので、今日はこの辺でおしまい。

こんなことを書いた後に、久しぶりに父と話しをしました。
病気のことで、ちょっとした決断を迫られている時だったからか、なんだか今日は男性っぽい父で、ガォ〜っとした目つきと言葉使いであった。
手は宙に、一回しか浮いていなかったし。

オバハンな父も好きだけど、今日の様なオジサンな父も、また良し!

おしまい。



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