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この夏。カイカイとお水と恋味と。

みなさま、はじめまして。
あ、うそうそ。
あまりにも久しぶりなので、初めて気分になってしまいました。

夏をすっ飛ばして、もうすぐ冬到来。LAもそれなりに寒くなってきた今日この頃。

父と私たち姉妹の交流は、暑い夏よりもさらに濃く、たまに暑苦しく、時にザーっと夕立に襲われ、突然やってくる台風でぐわんぐわんと体も心も揺さぶられ、そして眩しいくらいの太陽に歓声を上げる。
そんなことを繰り返し繰り返し、そのたびに反省と、ありがとうの気持ち。
そうやって3人の絆が、またすこしずつ強くなっていったのです。
あ、、なんか痒くなる文章を書いてしまった。カイカイ。

カイカイといえば、父。
そう、お風呂に入らない酸っぱい星人の父は、皮膚がカイカイなのです。
歩くたびに紙吹雪ならず皮脂吹雪。姉が後を追いかけコロコロで綺麗にしようにも、あぁ取りきれぬ、、。

と言うことで、
「お風呂に入らないのならば、せめて体を拭きましょう」
が毎朝の恒例になりました。
そうなの、やっと背中を拭かせてもらえるようになったのだ。
昔は、娘の前では上半身裸も見せなかった父が、今は半ケツを平気で見せてくれるようになりました。
まだ全ケツは恥ずかしいようだけど、ね。

姉が熱いタオルで背中を拭いて、気持ちいいなぁ〜、と父。
綺麗に拭いた後のニベアで、スベスベだなぁ〜、と父。
そんな様子をビデオ電話から眺めていると、私の背中も気持ちよくスベスベになった気になってしまうのです。今日は私もお風呂は入らなくてもいいや!なんて、ね。なんたって、酸っぱい星人の娘ですから。

でもって。
そんなお風呂を嫌がる父は、水分補給も嫌がる。
水が敵なのか、、!?

夏。暑い。汗かく。だから水分補給!
なんだけど、、。
昔からあまり水分を取らない父は、最近は更に水分を取りたがらない。
お年寄りになると飲まなくなる傾向があると、看護師さんも言っていたなぁぁ。

コーヒーも、お茶も、飲み干すと言うことがまずなくて。そういえば、父がお水を飲む姿は生まれてから一回も見たことがないかもしれない!?、、と思うくらい、まず飲まない。
先祖はラクダなのか。

お医者と看護師さんからも、水分摂取しましょうと毎回言われるのだけれど、こう言う時に限って、父は自分の認知を味方につけ、
「えー、そんなこと先生言ってたっけ?初耳だなぁ。」となる。

じゃーさー。初耳ならば、何度でも言おうじゃないか。
私「父よ、お水を飲みましょう。じゃないと熱中症になっちゃうよ」
父「だいじょうぶ、だいじょうぶ。今日はもうたくさん飲みましたから!」
棒読みな口調だから、ウソに違いないのだ。
そして、私は姉に告げ口する、
「今朝もお水、飲んでないわな!」と。
何度も言われると機嫌を損ねる父をよく知る姉は、優〜しく言うのだ、
「あれ、、?このお水のボトル、朝から量が減っていないみたいね。飲んだのかな?」
父はすかさず、こう言う。
「あのね、さっき飲み干して、いまボトルにお水を足したところですよぉ〜」
これもウソだな、、。
父よ、私たちは何年娘をやっていると思っているのだ、ぶいぶい。

姉はあの手この手で、水分補給ドリンク、水分が多い食べ物、フルーツ味の水、などを用意して、がんばる。
そして父は、あの手この手で、水分拒否と飲んだ振り作戦で、がんばる。

もちろん結果は、
熱中症からの即入院。
っひゃー。

入院が大嫌いな父だけど、でもこの時ばかりはちょっと素直であった。
自分でも、体がそうとう辛くなっちゃったんだろう。
病院で水分補給と他の不具合も治療してもらい、入院食をまずいまずいと言いながら、頑張って食べた。
そして、10日で元気に生還。っほ。

でもなぁ、お水が好きじゃない人が飲む努力っていうのも、しんどいだろうなぁ。
神様。どうか父に、ラクダのDNAをお与えください。できればコブなしで。

父の水分補給の他に、もうひとつの修行。
それは、減塩の食事。

毎日私は、FaceTimeのどこでもドアで父と姉に会いに行くんだけど、つまり、テレビ電話でね。
1日2回、このバーチャル訪問で彼らと密会するのだ。
姉が舵を取り、検診(体温、体重、血圧や、血糖値などなど)、そしてインシュリン注射。
その後は、食いしん坊父の、嬉しい朝食。
時差があるので、私はお茶や、たまにこっそりお酒と共に参加。

最近の父は血糖値が爆上がりなので、塩分を控えた食事がマストになっている。
なので、姉が頭と腕を振るい、塩分控えめの食事作り。
その間、私は父と四方山話し。
そうこうしている内に「ご飯できたよ〜っ」と、姉が朝食をお盆に乗せて運んでくる。
ある日の献立は、こんな感じ。
サラダ、酢の物、野菜の煮物、鶏肉を蒸したもの、ごはん、お味噌汁。そしてオヤツまで。
おぉ素晴らしき、素晴らしき!

だのに、、その朝食を目の前にして、父はこんな反応になる。
初めは、「美味しそう!」
そして、「でも、、これ塩分が少ないんでしょ?」とテンションが下がっていき、
「しょっぱいものがほしいんだけど、、」
「コレぜんぶ減塩?」
という感じでテンション爆下がり。
父独自の「食欲がなくなる方程式」が勝手に出来ちゃうみたいで、
食事を目の前にしていざお箸を持つ段階になると、「はぁ、、、」とため息をつくのであった。
そして、FaceTimeの画面が止まってしまったのかと思うくらい、じっと動かなくなる、父。
あぁ、なんてことだろう、嬉しい朝食が、辛い朝食に、、。

姉は父の持つ箸が動かなくならないようにと、料理の工夫や、映える盛り付けとか、美味しい減塩お弁当の取り寄せとか、いろんな工夫をするんだけど、けっきょく全滅。がーん。

あぁ、父はきっと腹ペコ大臣になっていく、、どうしようかしら。
と、私たちの心配は募るばかり、、。

だがしかーし。
ある朝。
姉が父のところへ、おはよう〜!と行く。
すると、なななんと、父はカップ麺をずるずる啜りながら「おはよう!」と、姉を迎えたではないか。それもすごく上機嫌で、こう言ったのだ。

こんな美味しいもの、初めて食べたよ〜!

朝、8時。インシュリン打つ前。だのにカップ麺。
父、ソバをズルズル。姉、頭がテンテンテン。 

もしや、、と姉は台所の食料庫を開けてみた。
そこには、この間まではなかったカップ麺やらレトルトカレーがどどどーんと鎮座しておった。
なぬーー!? 

自転車にもう乗られないはずだった父が、自転車に乗って買いに行っていたのであ〜る。
こっそりと、夜な夜な近くのコンビニで、いろんな食料を買い込んでいた父。
恋味。あ、漢字変換なかなか乙なことを! そう、濃い味は、父にとっての恋味なのだ。
そんな思いが、もう漕げないはずであった自転車をも動かしてしまったのだ。

とても複雑な気持ち。
願望や、希望。が、漕ぐ力へ。
すごいっ。父よ! まだまだ馬力あるじゃん!自転車にもう一回乗りたいって言っていたもんね。
でも、途中で転けて怪我をしたり、まして車や通行人に突っ込んでしまったら、人様に迷惑をかけてしまったら、、という大きな大きな不安。
それは、すごーーーく危険なことなんだ。

姉と私は、父の気持ちをとても理解しつつ、でも懇々と説教をしてしまいました。
そして、自転車没収。父、怒る怒る。
そうだよねぇ、、子が親に説教だなんて。子が親の持ち物を取り上げるだなんて。
私たちだって、そんなこたぁ、したかねぇのだよぉぉ。マジで。
だけどコレは、せねばならぬことなのだ。
おっとつぁんの交通安全と糖尿安全のために!

で、話を戻そう。
血糖値は、予想通り爆上がり。
糖尿安全と言ってはみたが、これからは、どうしていこうかのぉ、、。
父の恋味は、血糖値の敵。
でも、それが幸せな満腹になるのだったら、それもよし?
だけど、インシュリンの量も増えていくのだし、病気も悪化するのだし。
でも、唯一の楽しみのご飯が、楽しめないだなんて!
でも、だけど、でも、が行ったり来たり。

で、ふと思う。
父よ。あなたの恋味は、カップ麺なのか?
私はてっきり、母の美味しい手料理だと思っていたんだけど、、。
おっかさん。まさかあなたの料理が、カップ麺に負ける日が来るとは!

血糖値よりも、そっちの方がすごく気になった私であった。

おしまい。


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