春は遠くて

記録的な暖冬を隙間風の抜ける町家で過ごし、気づけば3月になっていたけども、朝と夜はストーブが手放せないし数日前には霰が降ったりで、想像していたよりもなかなかに春は遠い。

わたしは今、猫と住んでいる。名前は別にあるのだけれど、ここではもふもふちゃん。去年の夏に宇治の茶畑で拾われた元・野良猫ちゃんは、産まれてもう8ヶ月になる。

もふもふちゃんは最近よく一緒に寝てくれる。わたしの胸の上で丸まっていたり(ちょっと重い)、枕の端を借りて人のように伸びて寝ていたり、足のあいだに挟まって頭を逆方向に向けていたりとポジショニンングは色々で、さながら陣取り合戦のようだ。もふもふちゃんは無印の毛布が好きで、首元に寄ってきたかと思うと高確率でむぎゅむぎゅタイムを始める。近すぎて逆に見えないことが残念なくらいにそれはそれは可愛くて、私に心を許してくれてるのか単に毛布が好きなのか、知りたいような知りたくないような。でもこの幸せは何にも代えがたい。もふもふちゃん、きみが隣にいてくれるからどんな夜もさみしくないよ。

もふもふちゃんと暮らし始めてから、今までは気に留めなかったSNSでのペットの体調が芳しくないだとか、亡くなったとかの報告が自分ごとのように悲しくなって、気づけば涙が出ている日も少なくない。シンパシーの幅を拡げてくれたもふもふちゃんには、感謝しないとな。

カセットプレーヤーでひどい音質の井上陽水を聴きながら、今日ももふもふちゃんはストーブのそばで寝ている。

2020.3.9