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大の大人が課題図書「チョコレートタッチ」を読んでちゃんと読書感想文を書く

夏休みの宿題を全力でやった

動画投稿しました。夏休みの宿題のうち、ドリル・習字・ポスター・読書感想文・自由研究を1日でやる企画です。

動画概要欄にも載せましたが、読書感想文の全文をnoteにも載せておこうと思います。

「チョコレートタッチ」を読んで

口に入れたものがすべてチョコレートになってしまう。主人公ジョン=ミダスが手に入れたこの魔法は、言わずもがなギリシャ神話のエピソード「ミダスタッチ」をモチーフにしている。触れたものをすべて黄金に変える能力を神から授かったミダス王は、その力ゆえに食事が取れず次第に衰弱してしまった。欲に溺れた人間には罰が下るという、シンプルな教訓をはらんだ物語である。
 一方、本書を読み終えた私は、もう一つの教訓に思いを馳せていた。それは、誰もが得るべきというわけではない、私自身の人生の教訓である。
 ジョンは自分が持つ能力が原因で、周囲から誤解を受け孤立してしまったが、孤立と言えば私にも似たような経験があった。幼い頃からピアノを習っていた私は、学校一ピアノが上手であると自負していた。小さな中学校だったし、おそらくそれは正しかったと思う。毎年秋にある合唱コンクールでは必ず伴奏を務めており、中心的な人物になっていた。更に言えば私は馬鹿真面目だったので、クラスが一丸となって行事に取り組むのは当たり前だと思っていた。ここまで話せば言うに及ばず、よくある話である。周囲に自分の理想や熱意を押し付けた私は、男子生徒の中で孤立した。今となれば、なんと愚かだっただろうと思うが、当時は思春期の渦中、あまりにも自分を省みる姿勢が欠けていたのだ。
 それから数年かけて、私は次第に自分の「罪」に気付き内省した。そして驕り高ぶらず、自分の理想を周りに押し付けない人間になろうと努力した。結果的に、人間関係の和を重んじ、軋轢を生むような発言はあえてしない、傍から見れば柔和な人間が出来上がったのである。きっとまた、別の愚かさを持った人間だ。
 ところで、私は今年の春に転職し、新しい環境と新しい人間関係の中で仕事をしている。その人間関係の中には、もちろん様々な性格の人がいるが、影で周囲から疎まれている先輩社員もいる。彼は理想が高く、同僚や上司の誤りを忌憚なく指摘する。それが会議の進行をある種妨害していたとしても、だ。
 彼の仕事のやり方を見るたび、自分もあのように自分を曲げない性格に成長する未来だってあったのだろうと想像する。だから一概に彼が愚かだと評することは、私にはできない。そして、私のような人間と彼のような人間、どちらが正しいのか、はたまたどちらも間違っているのか、きっと私はこれからも答えを出せないまま生きていくのだろう。
 私はよい人間になりたいと思う。そのために、これまで自分らしさと決別してきたし、これからもアップデートを重ねてゆくと思う。ただそう考えたとき、今ひとたび彼のことが頭をよぎるのである。無限の富を求め、皮肉な結果を招いたミダス王のことが。


※この感想文はフィクションです
※小学生のみんな、パクっちゃだめだゾ!


おわり

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