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【介護3.0時代】名古屋市のデイサービス閉鎖要請から1週間たった"今" #5

新型コロナウイルスによるコロナショックが世界中の地域や業界で猛威を振るっていますが、介護業界でも様々な問題を引き起こしています。

今回は、愛知県(名古屋市緑区・名古屋市南区)のデイサービスの閉鎖要請についてです。閉鎖要請が出されて1週間の様子と、ヒアリングをした事業者の思いを書いていきます。

Yahooニュース:名古屋市デイサービスでの新型コロナ集団感染で休業要請。デイ利用は継続すべき?

デイサービス閉鎖要請

3月6日午後4時、名古屋市の緑区と南区の全てのデイサービスへFAXと電話により、2週間のデイサービスの閉鎖要請がありました。

このデイサービスの閉鎖要請のことの発端は、名古屋市の緑区のデイサービスで新型コロナウイルスに感染した高齢者は見つかったことから始まります。関係者によると、市内の共同住宅に住む80代女性の感染が1日に判明。その後、この女性が利用する事業所で、新たに5人が感染していたことが明らかになった。さらにこの5人のうち80代女性が利用する別の事業所でも11人の感染が確認されたとのことでした。

この閉鎖要請の事態の把握のために、知人で名古屋市南区でデイサービスを運営する知念さんへ話をうかがいました。

3月6日午後4時に急に名古屋市から電話があり、細かい説明もなく閉鎖をするよう要請されたとのことです。電話を受けた担当者は、「これは要請で強制ではないですよね?」と聞くと「要請ですが・・・」と濁されたそうです。このデイサービスでは、名古屋市の閉鎖要請を受け、すぐに利用者やその家族へ連絡をし対応しました。そして、その日のうちにスタッフを集めて今後の方向性を決める話し合いを行い、パートのスタッフの方々は有給消化により自宅待機、正社員はとりあえず出勤するという形で明日からの予定を決めたそうです。

知念さんは、「うちのスタッフはことの重大さを理解し、理解してくれて感謝いている」と言っていました。

名古屋市からの休業要請:通所介護事業者等に対する休業要請(名古屋市)

慌ただしい1日をなんとか終えたのもつかの間、翌日からは更に厳しい現実と向き合うことになります。

閉鎖要請に対する特例措置

このデイサービスでは、閉鎖を決断した事業所に対しての特例措置として作られた「訪問デイサービス」を行うことにしました。

訪問デイサービスとは、閉鎖したデイサービスの事業所が、ご利用者の自宅を訪問することで、これまで通り介護報酬を算定できるようにしたものです。デイサービスへ通えなくなったご利用者に対し、この訪問デイサービスを行うことにしたのです。

しかし、一見良さそうに見える特例措置も、箱を開けてみると厳しい現実がありました。

訪問デイサービスの落とし穴

実際に、訪問デイサービスをはじめてみると2つの問題が起こったそうです。

1つ目は、訪問デイサービスを断る要介護者が半数だったということです。ご利用者からすれば、デイサービスで3時間以上のサービスを受けていたにも関わらず、訪問デイサービスでは数十分のケアの提供で 同じ料金が発生するため、断られるケースが多かったそうです。

デイサービスも売上を維持することに必死です。ですが、断られてしまっては無理に伺うこともできず、売上は半数程度に落ち込みます。

2つ目は、訪問デイサービスを算定する条件の厳しさです。このデイサービスでは、3時間・5時間・8時間の3つの時間を設けてご利用者様を受け入れていました。通常のデイサービスでは、時間数のパターンによって介護報酬を算定できる金額が変わります。

訪問デイサービスの場合、下記のような算定条件になります。

 ・3時間:1日に "1回" の訪問
 ・5時間:1日に "2回" の訪問
 ・8時間:1日に "3回" の訪問

 詳しい算定情報はコチラ:新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについて(第2報)

ご利用者の自宅を、1日に複数回訪問することは難しく、これまで通りの売上を上げることは難しい現実がありました。

この2つの理由により、デイサービスの売上は確実に下がるとのことでした。介護業界は、たくさんの零細企業により成り立っています。短期間といえど、体力のないデイサービス事業者の経営は厳しくなっていくことは必然です。

デイサービス事業者の思い

このような危機的な状況の中で、このデイサービスを運営する知念さんの思いを聞いてきました。

「この危機的な状況を、様々な方法で乗り切ろうとしています。今は2週間の要請だからいいが、閉鎖要請が長引くことになると、経営が厳しくなるタイミングがいつか来ます。この閉鎖要請がいつまで続くか、とてもシビアに見ていく必要があり、経営判断を見誤ると非常に危険だと思っています。

 1番恐れていることがあります。それは、閉鎖要請を受けても閉鎖していない事業所があることです。自宅で入浴できない要介護者などへ一部のサービスだけを提供しているデイサービスなど地域福祉の側面として営業している事業所に対しては、必要な決断だと思います。しかし、自分のことしか考えずに通常営業しているデイサービスもあります。万が一、この身勝手な事業所で新型コロナウイルスが蔓延すれば、強制的な閉鎖や名古屋市中のデイサービスへ波及する可能性があります。そうなっては、今よりも事態は深刻になります。これはとても怖いことです。」

実際に現場で戦っている知念さんから、このように話をしていただきました。私たちも、このような危機的状況だからこそ、地域の福祉事業者が一丸となって支えていく必要があると思いました。

今後の動き

このデイサービスの知念さんが懸念するように、名古屋市全域への閉鎖要請の拡大や強制閉鎖などはあり得るのでしょうか。

この情報は確定ではないが、名古屋市天白区のデイサービスでも新型コロナウイルスを発症したご利用者が出たそうです。しかし、名古屋市緑区や南区のような閉鎖要請は未だ出ていません。名古屋市全域での閉鎖を検討しており、2つの区での事例を元に準備に時間がかかっているのか?

様々なネガティブな想像はできますが、地域の介護事業所や、そこで働く介護士、そしてデイサービスへ通えなくなって自宅で困っている要介護者の方をどう守っていくかを考えなくてはいけません。

弊社の取り組み

このような状態の中で、弊社が運営する介護保険外の訪問介護サービス「プライベートヘルパーイチロウ」で、何かできることはないかと考え、2つの決断をしました。

1つ目は、デイサービスへ通えなくなった高齢者向けに対し、利用料を割り引くことです。

 通常料金:2,800円 → 特別料金:2,000円

2つ目は、閉鎖が継続した場合の介護士の賃金を守るため、時給をあげ一時的なヘルパー登録ができるようにしました。

 通常時給:1,600円〜 → 特別時給:2,000円

実質、イチロウとしての利益は無くなり、マッチングシステムを無料開放することになります。

同じ介護業界で苦しんでいる事業所や介護士、ご利用者の方々へ少しでもサポートができればと思っております。もちろん、サービス提供の限界もあり、ヘルパーの安全性も確保しなくてはいけません。ネガティブに捉える方もいるかもしれませんが、できることをしていきたいと考えています。

誤解を恐れずに、実名を出して記事にさせていただいた知念さん、本当にありがとうございます。


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