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不登校は問題行動ではない

 発達特性を持ったこどもをたくさん診療していることもあって、不登校になっているこどもにもたくさん出会います。学校に行けないことは、こどもにとっても親にとっても、学校の先生にとっても頭を悩ませる問題なのですが、まず確認しておきたいことは、そもそも「不登校は問題行動ではない」と国も通知を出していることです。

 これには私も賛成です。不登校になったこどもについて、解決すべきことは「学校に行けるようになること」ではないと、まず周囲の大人が理解することが大切です。そのため、不登校児の支援を行う公的な施設も「適応指導教室」から「教育支援センター」に名称変更されています。(まるで学校に行けていないこどもが適応できていないという問題があるような名称であるため)

 そして不登校のこどもたちは、こどもの人口が減っているにも関わらず急激に増えています。

 注目したいのは不登校は中学になるにつれて急増し、高校で一気に下がることです。これは診療している実感とも合うもので、とても納得できます。つまり不登校は登校できないこどもの問題というよりも、中学校まではほとんどが公立中学校という形での公的な教育システムしか持ち合わせていないという、大人たちの問題ということです。あえていうなら、それを調整できていないという、大人たちの問題行動といえるでしょう。ただ、わたしは学校の先生を責めているわけではありません。学校の先生は忙しい中で、頑張ってこどもたちのことを誠実に考えて下さっています。むしろもっとしっかり予算と人員を学校に充てるべきだと思っています。

 不登校に困って、受診される方はたくさんおられますが、私は基本的にはそのこどもたちに登校を促すことはしません(親御さんにとっては歯痒いかとかもしれませんが)。例えば大人が会社でのストレスに悩んでクリニックに受診された場合、いきなりどうやったら職場に戻れるか話し合うのが適切でしょうか。通常はまずは一旦休養して、今後のことを考えましょうと助言します。こどもにとってもそれは同じです。さらに言えば、こどもは給料をもらっているわけでもなんでもありません。

 大人は職場との相性が悪ければ転職することもできます。しかし小中学生は基本的に居住地の校区の学校以外に選択肢がありません。そこに戻るように努力させられます。そして大人は、職場以外にも世界が限りなく広がっていることを知っていますが、こどもは知りません。学校に行けなくなってしまうと、全てが上手くいかないんだと考えてしまいます。勉強、友達との関係、部活動など、こどもの学習や社会性を育むものが、学校に集約されすぎているのです。

 しかし今はインターネットが発達して、家に引きこもっていても、オンラインで外につながっているこどもは沢山います。不登校が増加しているのは、社会の多様化と技術の進歩など、様々な要因が背景にあると思われます。ネガティブなことだけではないかもしれません。

 大切なことは、不登校になったこどものことを、「問題行動」として早く解決しようとするのではなく、そういう行動を選んだこどもの選択を尊重し、特に家族はその子の存在を無条件に認めてあげることだと考えています。学習の遅れは心配ですが、後から学び直すことは可能です。しかし思春期に適切に「自己肯定感」を育めないと、それを後から取り戻すのが相当に大変なことは、児童青年期の診療に携わってきたものとしてよく理解しています。

 どうか焦らす見守っていきましょう。こどもは必ず成長して動き始めます。

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