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人と人って難しい。でも、だからやり抜きたい。

昔、某大手グループでエリアマネージャーをしていた頃の話。

元超大手訪問介護から転職してきた社員の女性Sさんが、所属する施設でなかなか人間関係に馴染めずにいる。と本人から直接相談を受けた。

介護職とは、実に様々な人間が入り混じる。介護を離職する理由は、表向きはさておき本音は人間関係が圧倒的だろう。他の職もそうかも知れないが、この世界ときたら、困った時の介護職とされているからか、仕事に対する姿勢もポテンシャルも、資質自体も実に幅が大き過ぎる所は昔から否めない。仕事が見つからないから介護、資格が無くても働ける施設職員。という選択肢はまだ存在しているし、正直この仕事をなめているなと感じる職員は本当に多い。

勿論、資格の有無で人の資質は決まらない。どちらかといえば頭でっかちよりは、人としてその方の必要な事を支援する事を選択できるかどうかであり、要はセンスがないといい介護士にはなれないし、誰でもできる仕事でもない。過去何百人という職員と出会い、面接をしてきたが…

資格を持つ口ばかり動かして、肝心な時に何処かへ消えてサボるアンポンタンよりも、無資格の真っ直ぐ真面目さんの方が、ずっとずっと入居者の気持ちに寄り添い、かつ業務を全うできていたりする事は事実としてよくある。まぁ、無資格のアンポンタンもぬるま湯ホームには何人か実在したが。

時代が令和になり、今でこそ少しは昭和よりは介護の質は上がってきているが、残念ながらその幅が大き過ぎる事は今後の課題でもあるだろう。

Sさんは、バリバリに前事業所で訪問介護をしていた人で、リーダーもやっていた。そのためか、今のリーダーであるBさんや新人ケアマネのTさんをどことは無しに見下しているようにも感じた。彼女をリーダーにしていないのは、チームとして相手の事を思い、皆で向上しないと崩壊すると感じ、彼女にはまず自分のプライドを壊してもらう事が必要だと感じたからだ。

「なじみたいと感じる?」

私は即、痛い所をつっついてみた。彼女は少し驚いた顔をしていた。

『わかりません。馴染めたらうまくいくのかな。』

「きつい事言うけど。私にはそう見えないな。貴女はきっと、馴染めないという理由を盾にして、異動でもできたらいいなと思ってるんじゃない?」

『…そうかも知れません。』

「何故うまくいってないのか、あるいは、どうしたらいいと思ってるの?」

『向こうが常識がないんですよ』

「どんな時にそう感じるの?」

「話にならないと思ってしまう地点はどこ?」

「昔、リーダーだった頃はそんな時どうしてた?」

しっかりと、本人に分析をさせるために一つひとつアシストをしていく。

確かにチームのメンバーは個性的ではあるが、皆入居者思いのいいメンバーだ。ただし、自分が介護技術的に何を問題として見ているかは、誰が聞いてもわかるくらいに噛み砕いて話をしないと伝わらないだろう。このままでリーダーになっても、一人で暴走をしてヒステリーを起こし、崩壊をするのは目に見えている。

秀でた一人が必要ではなく、秀でた一人を含めてチーム全員が必要なのだ。

「皆の意見の吸い上げをする事と、日常で必要な指導や助言をする事は、同時進行をしないとダメだよ。どっちかだけでもダメなの。」

『そうなんですか。』

「あの時もこうだった、って後で言われても、経験が乏しい人には響かないし、いちいち覚えていないからね。その時に言ってあげないと。」

私は、二週間彼女に退職願を出すのを待つように伝え、カンファレンスに一緒に出席し、Sさんと一緒に現場業務をこなした。そして、どのように他の職員と連携を取るかを学んでもらった。

何があったのか、どのケアが難しいと感じたのかを情報共有し、すぐに変える必要がある運用については、リーダーにSさんから打診をしてもらい、その理由を伝えてもらった。

二週間後、私が現場に入らなくても彼女は他の職員と連携が取れるようになっていた。後でわかった事だが、他の職員もSさんとは連携を取りたいと思っていたが、本人がツンケンしていたので近づく事もままならず、一緒に仕事しづらいと思っていたそうだ。半年後には、エリアで最強のチームとなっていた。

なんだ、報連相か、と思う人。侮る事なかれ。世の中の実に殆どが情報共有ができていない事がきっかけで、チームワークは乱れる。

最も、話しづらいと思い話さない事は、情報共有できない為それは業務上良くないのだが、あるあるではないだろうか。

「私がしんどいから話さない」ではなく

「入居者様のために、ケアの困り事をしっかり共有して解決方法を模索していく」事、そう思える場をアシストしていく事が必要だと思っている。



未だに、どの職場でもネゴシエーターを全うする運命となる理由かも知れない。





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