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私の夫はセラピ#5

東京旅行3日目。最終日。

ホテルの部屋を片付けながら、この二日間で起こったことを思い出していた。一人で初めての旅行、推しに会えたこと、知らない男性と夜を過ごしたこと。すべて私が決めたことで、スケジュール通り日程をこなすことができた。

けれど、なんとなく違う感じもした。
こんなにセラピと過ごしてよかったのか、しかもプライベートの時間もとってしまった。女風の世界ってわからないな。

時間は朝の8時、ホテルをチェックアウトをして、昨日モンブランを買ってもらった際に交換したラインを確認する。
「近くで朝ご飯を食べませんか?よかったら近くで食事ができそうなお店を探してほしいです。ホテルの人に聞いてみてください。」

ホテルのスタッフに尋ねると、食事をとれる場所はあるが時間が早いので開店していないとのこと。その旨をラインで伝えると、歩きながら一緒に探すことになった。

ホテルを出て入口付近で待っていると、彼が手を振って走ってきた。
「遅れてごめんね。昨日は寝れた?」
「お店は探せばあるから、駅方向に歩こうか」
朝の彼はセラピストと言うより会社員の雰囲気が強く、オフィスカジュアルのジャケットと無造作ヘアが似合っていた。ちゃんと会社員しているんだな。

しっかり食事をできる場所がなくて、仕方なく24時間開いているカラオケに入った。会員証が必要な場所で、二人とも持っていなかったから彼が作ってくれた。個人情報を書いている間、名前を見ないように後ろを向いていた。

小さい個室に通されて、カルボナーラと他いろいろ頼んだ。
今までよりも距離が近く感じて、とうとう彼を好きになってしまったのかとひやひやした。
食事が揃って一緒に食べる。この三日間、何かしら一緒に食べていた。

食べ終えると、昨日の会食の話や飛行機の日程などを話した。
会話の途中で名前を呼ばれて、彼を見ると「気を付けて帰ってね、北海道着いたら連絡して」と言われた。
彼の優しさとあたたかさに不思議と体がうずいた。

それから私の友人のこと、大学のこと、アルバイトの話をした。
「もっと〇〇ちゃんのこと知りたいな」「私も〇〇さんのこと知れる範囲でいいので知りたいです」「もちろんだよ」
その瞬間、キスされた。

本当は彼の好きな食べ物とか、趣味とか、そういうことが知りたかった。
彼の手が私の股に触れた時、私の中で何かが崩れた。
もうどうにでもなれ。

「〇〇さん。ごめんなさい、触ってください」

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