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オープンDの音色を追って 12

(約5分半で読めます)
 前回に続き、GAROの曲について。
 今回はセカンドアルバム『GARO2』。
 二作目にして早くも問題なアルバムです。
 当時GAROが所属していたマッシュルームレコードは経営難でした。
 そこで、レーベル内でいちばん売れ行きの良かったGAROに稼いでもらうことにしたのです。
 その方法は、メンバーの作品ではなく、職業作家の作った一般受けする曲を歌わせるというものでした。

第一回東京音楽祭に、GAROの唄で作品を出品したいとの旨が、村井邦彦氏から告げられた。当然のことながらメンバーの作品から選曲されるものと思ったのだが、なんと村井氏本人が書くという。
とりあえず、村井氏が書くのはこの出品作品一曲だけだからと説得された。この作品はGAROのイメージにもある程度沿った曲だったし、その曲だけということで3人は渋々納得するということになった。これが「美しすぎて」という曲になる。しかし、同時期にセカンド・アルバムのレコーディングについての話し合いが持たれ、「このアルバムは君たちの作品ではなく、プロの作品で創りたい」とのこと。契約時の「作品は全てメンバーの作品で」という約束とは違うということで、3人は猛反発。そこで、妙な折衷案が出された。A面はプロの作品で、B面はメンバー選曲の洋楽に日本語詞をつけたものにしたらどうか?という。だとしたらどんな選曲が良いのかなどと話の方向を変えられて、色々と意見を出し合っているうちに、セカンド・アルバムの制作は始まってしまった。

GARO BOX アルバム解説 大野真澄

 現在はGAROのアルバムはすべてサブスクに入っているようですが、私がファンになった三年ほど前は違いました。
 たとえばAmazonPrimeMusicでは、この『GARO2』だけが対象だったのです。
 唯一のサブスク対象が、よりによってメンバー作品のないこのアルバム。
 サブスクという枠を外してみても、そもそも他のアルバムは配信すらされていなかったのです。
 では、なぜ『GARO2』だけが? 理由はおそらく「『学生街の喫茶店』が入っているから」でしょう。
 そんな「大問題なのにいちばんメジャーなのかもしれない」アルバムの感想です。

『美しすぎて』
作詞:山上路夫 作曲:村井邦彦 編曲:大野克夫
 アルバムとシングルとではアレンジが違っていて、バート・バカラック調と言われるシングル盤のアレンジの方が私は好きです。
 題名通りとても美しい曲。
 おそらく、これが一曲目じゃなかったら、アルバムを全部聴いてみようという気にははならなかったと思います。
「もう愛の日々は」からのハモりが素晴らしくて、おぉっ、GAROすごい! とビックリしたのです。
「貨物が橋を渡ってる」という歌詞から、川のある風景を思い浮かべます。
 私がシングル盤の中でいちばん好きな『ロマンス』には「この川に沿った道」という歌詞があります。ですから『美しすぎて』と『ロマンス』は、同じ町が舞台なんだと勝手に思っています。
 この曲の別バージョンがGAROのサードシングルのA面で、B面だった曲が後に特大の爆発を起こします。

『水車は唄うけど』
作詞:山上路夫 作曲:すぎやまこういち 編曲:大野克夫
 マークのやさしい声がたっぷり味わえる曲。
 深い森の中での女の子との逢瀬……歌詞の世界観がGSみたいです。

『学生街の喫茶店』
作詞:山上路夫 作曲:すぎやまこういち 編曲:大野克夫
 一般的にはGAROといえば、の代表作。
 GAROを知ると「なんで?」と疑問符がつく曲。
 発売当初は『美しすぎて』のB面。
 ラジオから火がついてランキングを上昇するうち、A面B面を差し替えた盤が発売し直されました。
 現在中古市場に出回っているのは殆ど『学生街…』がA面のものです。

 レコードで聴くと「殆どハモってない」「ギターがない」と不満だらけです。
 しかし先日tvkの開局50周年特番『ライブ帝国ザ・ファイナル』で『ヤング・インパスル』での演奏を見ることができ、マークとトミーのギター二本のみを伴奏に歌われた『学生街…』は良かったです。
 後年マークfromGARO『時の魔法』に収録された『学生街…』も、ギターが響きまくっていてたいへん良かった。
 この曲を蛇蝎の如く嫌っているファンの方もいますが、決して曲が悪いわけではないと思います。何度も聴くうちに、短い詞の中に多くの情報が盛り込まれていることに気付きました。
 好きだとか後悔してるとか一切言っていないのに、この曲の主人公がいかに「君」を好きだったか、「君」と別れたことを後悔しているかがわかるのです。
 だから、本当は佳曲なのに、GAROの良さが生かされていないところが大問題。という結論に達しました。
 ギター前面アレンジの『学生街…』は、良いぞ。

『蝶が飛ぶ日』
作詞:山上路夫 作曲:すぎやまこういち 編曲:大野克夫
 トミーがそれこそ蝶の飛ぶがごとくふんわりと歌っている曲。

『四葉のクローバー』
作詞:山上路夫 作曲:かまやつひろし (編曲クレジット無し)
 かまやつひろしの曲のカバー。
 これはイントロからギターが良いですね!
 正式にレコードデビューする前のGAROは、かまやつひろしのこの曲のバックをつとめています。

(以下B面は洋楽の日本語詞バージョンですが、編曲者のクレジットがありません)

『BABY I'm-A WANT YOU』
訳詞:GARO 作曲:デビット・ゲイツ
 トミーがファルセットを駆使して歌う切ない曲。心地良くて眠気を誘われる。

『LET IT,BE』
訳詞:山上路夫 作曲:レノン=マッカートニー
 ビートルズの超有名曲を日本語にしてボーカルに歌わせるというチャレンジ企画。日本語で聴くと気恥ずかしい。

『MY LADY』
訳詞:GARO 作曲:イアン・マシューズ
 このアルバムは何だか全体的に翳りのある曲が殆どです。イキの良い曲も入れて欲しかったですね。

『BECAUSE』
訳詞:山上路夫 作曲:レノン=マッカートニー
 三人のコーラスが綺麗です。

『GOOD MORNING STAR SHINE』
訳詞:川添象多郎 作曲:ガルト・マクダーモット
 ミュージカル『HAIR』のナンバー。
 この曲もハモりがすごい! 「Gliddy Glup Gloopy~」以下はもう圧巻。
 三人の声が完全に溶け合っていて、清流のようです。
 1/fゆらぎか何か、浄化の力があるのでは?

 最初と最後の曲が良いので、結果的には「いいアルバムを聴いたな~」と、すっかりGAROのファンになってしまったのでした。
 ちなみに、A面のベースは宇野もんど名義の細野晴臣、B面のベースは岸部修(現・岸部一徳)がつとめています。

蛇足だが、 アルバムB面に収められた 「BABY I'm-A WANT YOU」 と 「MY LADY」の日本語詞は僕が書いたものだが、発売された歌詞カードの表記が「ガロ訳」になっていたのを見て、僕はひどいショックを受けた。

GARO BOX アルバム解説 大野真澄

(つづく)
(文中敬称略)


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