見出し画像

オープンDの音色を追って 16

(約7分で読めます)

 先日、高橋幸宏が亡くなったことを知ったときも悲しかったですが、今度はデヴィッド・クロスビーが。
 これでCSN&Yの再結成はなくなったわけですね。
 元々そんなに仲良くもなかったみたいですが。
 GAROの原点が失われつつあります。
 私は映画『いちご白書』が好きで、主題歌の『サークル・ゲーム』も好きなのです。
 その曲を作ったのがジョニ・ミッチェルで、クロスビーとお付き合いしていた時期があったんですね。

映画『ローレル・キャニオン 夢のウェストコースト・ロック』

 

 ごく最近のニュースでは、ジョニ・ミッチェルは、米国議会図書館から、「ガーシュウィン賞」を授与されたということです。
 ポピュラー音楽で世界の文化に大きな影響を与えた作曲家・演奏家に贈られる賞で、ミッチェルは「非常に名誉ある賞で、私に栄誉を与えてくださり感謝しています」とコメントしています。
 また、調べたところ、ジョージ・ハリスンにシタールという楽器の存在を教えたのがデヴィッド・クロスビーだそうです。
 シタールといえば

『姫鏡台』のときのマークですね!

 さて、今日はアルバム『サーカス』の感想です。
 この前の『GARO4』をもってナンバリングのアルバムは終わり、ここからはコンセプトアルバムになっていきます。
 というわけで、『サーカス』のモチーフは、もちろんサーカスです。

『団長のごあいさつ』
作詞:山上路夫 作曲:堀内護 編曲:深町純
 サーカスの開幕をはなばなしく告げる曲。

『空中ブランコ』
作詞:山上路夫 作曲:堀内護 編曲:深町純
 心の揺れを空中ブランコになぞらえて描いた愛の歌。

『オートバイの火くぐり』
作詞:山上路夫 作曲:日高富明 編曲:深町純
 トミーのご機嫌なロックナンバー。
「やりそこなりゃ丸こげ」なんて、シリアスな状況をコミカルな歌詞で。

『猛獣使い』
作詞:山上路夫 作曲:日高富明 編曲:深町純
 引き続きトミーのロックナンバー。
「さかだちしてみろ」とライオンに言うことをきかせる歌ですが、歌詞のわりにはメロディがやさしい。

『ピエロの恋唄』
作詞:山上路夫 作曲:堀内護 編曲:深町純
 ピエロって、メイクで目の下に涙を描いたりしていることがあって。
 おどけてはいるけれど、物悲しいよね。
 そんなイメージを歌った曲です。

『曲馬団』
作詞:山上路夫 作曲:堀内護 編曲:深町純
 二度とアフリカには帰れないシマウマの歌。
 ピエロに続いて物悲しい曲です。

『なぞの女』
作詞/作曲:大野真澄 編曲:深町純
 このアルバムはサーカスというコンセプトで詞が先に書かれ、ボーカルには「飼育係」という作品が割り当てられたそうです。
 が、ボーカルは気に入らなかったのか、「勝手に」この曲を作ったらしい。でも、サーカスは「見世物」なので、一座の中にこんな風な「なぞの女」が居ても全然おかしくはないですね。
 なぞの女の笑い声が入っている演出がちょっとしたホラー。

『大男の歌』
作詞:山上路夫 作曲:日高富明 編曲:深町純
 トミーもマークに負けずに物悲しい曲を作ります。
「大男、総身に知恵がまわりかね」という意地悪なことわざを歌ったものです。

『綱渡り』
作曲:日高富明 編曲:深町純
 おそらくGARO唯一のインストゥルメンタル。
 マークはこう言っています。

「綱渡り」 大好きな曲です
ステージでは、トミー&マークが舞台の左右の角に立ち...
ギターを長いバランス棒に見立て...一本のロープを危なげに渡りながら、互いにツインリード♪でゆっくり舞台の中央に向かって歩く...

そして...ステージのセンターで出逢った時...正面客席に向き直し...マイクに向かい♪あ~あ~♪と言う演出でした♪...

因みに...この演出を考えたのは、マークです。えっへん!(笑)
空中...ロープ一本を危なげに渡る二人の姿を想像してみてくださいね...

 MARKWORLD-blog (exガロ:マーク堀内護のブログ) 2014.02.23.「今週の一曲 129」

『この世はサーカス』
作詞:山上路夫 作曲:堀内護 編曲:深町純
 一曲目『団長のごあいさつ』と同じ曲の歌詞違い。
 これをもってLPのA面は終わります。
 本編をプロローグとエピローグで挟む小説のような構成です。
 じゃ、サーカスというコンセプトなのはA面だけ?
 と思いますが、B面の方も「旅から旅へ」という感じの曲が揃っているので、サーカスを想起させます。
 やはりLP全体で「サーカス」なのだと思って間違いないでしょう。

『風にのって』
作詞/作曲:堀内護 編曲:深町純
 ファーストアルバムの時点でできていたのに、なぜかこれまでアルバムに入らなかった曲。
 アップテンポでさわやかで、GARO結成時からライヴの締めによく演奏されていたそうです。

『演奏旅行』
作詞:山上路夫 作曲:堀内護 編曲:深町純
 月に20本もコンサートがあったというGAROなので、その実感で書かれた曲でしょうか。

『酒びたり人生』
作詞/作曲:大野真澄 編曲:深町純
 ボーカル作の突然のソロ曲。
 コミカルですが「俺には酒しかない」という歌詞は危険ですね。
 アル中まっしぐら。
 左とん平によるカバーも有。

『通りすがり』
作詞:山上路夫 作曲:堀内護 編曲:深町純
 マークのフォークソングっぽいソロ曲。
 この曲と後出の『絵ハガキ』とは主人公が同じで、時間的にはこちらが後、かもしれない。

『旅人が眠る丘』
作詞:山上路夫 作曲:日高富明 編曲:深町純
 トミーによる物悲しいソロ曲。
 臨死体験? みたいなメロディとアレンジ。

『絵ハガキ』(歌詞カードのみ『絵はがき』表記)
作詞:山上路夫 作曲:堀内護 編曲:深町純
 ボーカルがメインで歌う、静かな諦観に満ちた曲でアルバムは終わります。
 曲が終わってしばらくすると、動物たちの騒ぐ声が遠くに聞こえます。
 きっとサーカスの動物たちなのでしょう。

 このアルバムについて、プロデューサーのミッキー・カーティスはこう語っています。

 相当実験したよ。特に「サーカス」ってアルバム、大変だったよ。
 オレが 「オートバイの音を持って来い」って言ったら、「出前のカブが来ました」だって。
 まさか「プルプルプル」なんて音じゃ情けないし。
 まだ台数も少なかったんだけど、友達に「ハーレー」を持っている奴がいてね、結局そいつから借りてさ。
 エンジニアに「後ろのシートに乗って、バイクの音を録音してくれ」って頼んだら、恐がっちゃって仕方がないんで、オレがテープレコーダーかついで、後ろのシートに乗っかってね、そのときに録音した音を使っているよ。
 動物の鳴き声も、オレがありものの効果音が嫌いだから、録音するために実際のサーカスを探したんだ。
 で、サーカスを見つけたんだけど、いたのはけっこうヨボヨボのライオンでさ。
 鳴き声のタイミングにしても、レコードを聴いている人が「もう終わった」と思って、レコードプレイヤーの針をあげにいく、それにかかる時間をはかってさ、ちょうどそのタイミングで鳴き声が聴こえるようにしたり、ね。とにかく手間のかかるアルバムだったね。

GARO BOX解説書 ミッキー・カーティス(談)

(つづく)
(文中敬称略)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?