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オープンDの音色を追って 10

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【前回までのお話】
 GAROがレコードデビューする前に出演した、第3回全日本フォーク・ジャンボリー(1971年8月)のCDを買う→フォーク・ジャンボリーについて書かれた本『60年代フォークの時代』を読む→本文中に謎の写真の掲載を発見→上記CDのジャケ写のGAROにも謎な点が。

 というところまでを書きました。
 今回はその続きです。
 参考にしているのは

CD:『1971フォーク・ジャンボリーVOL.2』東芝EMI

書籍:『60年代フォークの時代 日本のフォーク&ロック・ヒストリーⅠ』前田祥丈、平原康司・編著 シンコーミュージック

ホームページ:えとせとらレコード「1971年 全日本フォーク・ジャンボリー音源」

以上の三つです。

 CDジャケ写の謎な点とは、ボーカルが舞台の上手(かみて)にいることです。
  【豆知識】上手とは、客席から見て右側のことです。客席から見て左側
       が下手(しもて)です。
 GAROは活動を始めたときから三人の位置が決まっていました。
 下手から、ボーカル・マーク・トミーという並びです。
 これは解散するまで変わらなかったといいます。
 漫才でもボケとツッコミの立ち位置が逆になるということはありませんから、芸事においての定位置は、おいそれと変えられるものではないのですよね。
 では、なぜジャンボリーのステージで、ボーカルは上手にいるのでしょうか?
 安易に考えると「写真が裏焼き」。
 この疑いはすぐに晴れました。画像が逆転したときの不自然さがありませんし、観客の着ているTシャツのバックプリントの漢字が反転していないのです。

 そして問題の写真では、マークはいつものように真ん中。持っているギターはエレキのようにも見えますが不鮮明です。では、トミーは下手にいるのか? と思うと、これも写真が不鮮明なために、どこにいるのかはよくわからないのです。
 明るい時間帯の写真なので、リハーサル時かもしれません。だったら、トミーはステージにはいなかったということも考えられます。
 ボーカルが上手にいるからって、何? たまたまそこにいた瞬間が撮られただけじゃない? そうも思いました。
 しかし、これはGAROが逆並びで演奏したことがある証拠写真のようなのです。

 私が入手したCDに収められているのは『Teach your children』『たんぽぽ』ですが、実際には『Ohio』『青い眼のジュディ』『You don't have to cry』も演奏されたようです。

 えとせとらレコードのホームページによると、フォーク・ジャンボリーの「LP」には、GAROがエレキギターを演奏している写真が載っているそうです。CDで聴ける『Teach your children』『たんぽぽ』と、この二曲の間にやるはずだった『一人で行くさ』(トミーの調子が悪くて急遽キャンセル)はアコースティックですから、それ以外の曲がエレキだったのでしょうか。
 GAROは「エレキギターと生ギターの持ち換え作業を、きらびやかにお送りする(『GARO LIVE』収録のボーカル発言)」バンドですからね。

 上記ホームページによると、フォーク・ジャンボリーは三度レコード化されています。
 その三度目『J-ROCK EARLY DAYS STRONG SELECTION』に『Ohio』が入っており、このときの演奏はエレキで、トラックは右:ボーカル、左:トミーなのだそうです。
 ということは、ボーカルが上手で歌った事実がある?
 ジャケ写は単なる瞬間をとらえたスナップではなく、GAROが逆の並びで歌うことがあった、というのを証明する貴重なものなのかもしれません。
 なぜ、エレキのときだけ位置を変えているのか。
 わからないです。
 音の仕事をしている人に会う機会があったら訊いてみることにします。
 コロナ前の仕事ではポニーキャニオンの音響の方やディズニー映画の日本語版の音楽を手掛ける制作会社の方々と一緒だったので、あのときだったら……惜しいことです。

 また、このときのGAROのサポートメンバーについては、ドラムが高橋幸宏ではなかった可能性があるそうです。
 私は、細野晴臣(はっぴいえんど)も参加していたこのジャンボリー会場にYMOの過半数がいたんだと思い込んでいました。
『60年代フォークの時代』掲載写真によって、小原礼は確定だと思います。が、あの写真(前回貼りました)でなぜベースを持たずにいるのかは不明のままです。
 50年も経つと、こんなにもわからないことが出て来てしまうのですね。
 まぁ、50年……。もうすでに近代史ではありますよね。

『60年代フォークの時代』は図書館で借りたのですが、本文中の『風街ろまん』のところに細い鉛筆で書き込みがありました。
「最高!」と。
 同感です。
 書庫から出してもらった本なので、長いこと借りられていなかったのは間違いありません。
 何年前になるのでしょうか。前の借り主さんの気持ちが伝わりました。
 本当は図書館の本に書き込みなんて、してはいけません。
 でも、この書き込みは許したい。
 私もGAROのところに「最高!」と書いて返したい。
 ……しませんけど。

 GARO出演の前年、第2回フォーク・ジャンボリーは記録映画『だからここに来た!』としてDVD化されています。
 ということは、第3回も記録映像があっていいはず。あるのかないのか。 
 あればぜひとも観たいものです。

『60年代フォークの時代』より。最後の二行は「7枚目のアルバム『三叉路』」が正しい。『GARO LIVE』を含めるとGAROが活動中に発表したアルバムは全部で8枚。

(つづく)
(文中敬称略)

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