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オープンDの音色を追って 8

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 ときどきネットのオークションを見ています。
 GAROに関するものがあれば、と思って。
 当時テレビに出まくっていた(と小学生の私には思えました)GAROなのに、オークション市場では意外と見かけません。
 そして、あまり高価なものは買えません。
 ミュージカル『HAIR』のサウンドトラックCD、『美しすぎて』がA面で『学生街の喫茶店』がB面のシングル盤、『失速 : ガロが燃えつきた日』(富澤一誠/著)などが高いですね。
 それとGARO解散後のトミーの、Ma・Ma・Doo!! などの音源。
 これは値段が問題ではなく、ほとんど見かけないのです。
 コロナがなければ骨董市や神保町の古書店なんかで捜したいですが、当分無理そうですね。

 そんな中、今回は、普通のお値段で譲ってもらったCDのお話です。
『1971フォーク・ジャンボリーVOL・2』。
 GAROがレコードデビューする前に出演した野外コンサートのライブ盤です。
 これを譲ってくれた方は、当日この会場にいたので「僕の拍手も入っているかも」とコメントをくれました。楽しい思い出、うらやましい!

 フォークジャンボリーについても少し調べました。
 1969年から三回にわたって岐阜県椛の湖湖畔で開催された、日本初の野外フェスティバル。
「日本初」にも驚きましたが、アメリカのウッドストック・フェスティバルの影響下のイベントだと思っていたのが、開催はこちらの方が早いという事実。また驚きました。
 現在、岐阜県中津川市には「フォークジャンボリー記念館」があるそうです。
 三日前までに予約が必要、見学可能なのは月~金と、なかなか観るのはたいへんそうですが、こうして記念館ができるほど歴史的なイベントだったということです。
 また、looftop(ルーフトップ)というホームページの、コラム→月刊牧村→#1 「第3回全日本フォークジャンボリーの真実 ~現場からの報告~」には、当時メインステージの進行補佐をしていたスタッフの証言があります。
 吉田拓郎(当時表記はよしだたくろう)が『人間なんて』を延々と歌ったという伝説めいた話や、岡林信康vs.吉田拓郎の(本人というより陣営同士の)確執? の話などの本当のところが語られています。

 GAROは1971年8月7日、第三回フォークジャンボリーに出演。
 レコードデビューこそまだでしたが、

すでに日比谷野音などのコンサートへの出演などで「CS&Nのコピーをやらせればピカイチ」との評価をロック・ファンから得ていた。

Webページ『全日本フォークジャンボリー』

 既に「知る人ぞ知る」状態での出演です。
 今回入手したCDに収録されているのは『Teach Your Children』『たんぽぽ』の二曲です。
 解説書によると、GAROの出番は夜7時頃。
 他に『青い眼のジュディ』『You Don’t Have To Cry』『Ohio』が演奏されたそうです。
『青い眼のジュディ』入れて欲しかったな……。でも、あれは一曲が長いから無理なのねきっと。

 GAROの魅力の一つに変幻自在のコーラスワークがあります。
 たいていはマーク→トミー→ボーカルの順に、高→低パートとなるのですが、このCDで『Teach Your Children』を聴くと、ボーカルがメインのメロディ、そこにトミーが低いパートでハモっています。歌い出しがこの二人で、途中からマークがいちばん高いパートで加わります。
 どういう風に割り振っているのかはわかりませんが、結局この三人はどのパートでも歌えるようになっているんだと思います。
 曲によってはマークが低い方を歌っていることもあります(例:『Good Morning Starshine』)。
 その自由さがたまらなく良いのです。

 そしてフォークジャンボリーでは、本当は『たんぽぽ』の前に『一人で行くさ』をやるつもりだったようです。

ボーカル「今度はオリジナルの曲を二曲ほどやりたいと思います。最初は   
    『一人で行くさ』っていう曲です。聞いてください」
マーク 「ちょっとなんかヤバいですね。声がね、ちょっと今……」
ボーカル「あ、そうですか。ごめんなさい、ちょっと声が出ないんで一曲だ
     けにしてください。『たんぽぽ』って曲です」
ギター 「(間髪いれず)ジャラ~ン」

 この頃から既にマーク、トミーに振り回されるボーカルの図式が成立してしまっています。

 また、このやりとりをしている後ろに場内アナウンスが入っており、「はっぴいえんどの細野さん、次、出番ですのでメインステージへお願いします」と聞こえます。
 GAROのバックバンドのドラムは高橋幸宏ですから、この場にYMOの過半数が居たということになりますね。

 ボーカルの「この曲は10月の10日にマッシュルームレコードから出ますんで、もし良かったら買ってくださいね」というきわめて控えめな宣伝をもって、GAROの出番は終了します。

 フォークソングじゃないのになぜGAROがフォークジャンボリーに? と思いますが、同イベントには、デビュー前のGAROをバックにつけていたかまやつひろし、GAROのプロデューサーのミッキー・カーチスといった縁のある人たちも出演していました。
 かまやつひろしやミッキー・カーチスだってフォークじゃありませんよね。
 要は音楽フェスってことで解釈はOKっぽいですね。
 当時は「アンプラグドなら全部フォーク」という雑な認識があったように思います。
(つづく)
(文中敬称略)

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