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私がデビューした20代の頃、大ヒットした小学館の少女漫画家さんが、

「20代女性で年収億単位で稼げる仕事は、少女漫画だけ」

とテレビで言っていたのを覚えている。もちろん私は売れない漫画家なので、そんなドル箱ではないけど、少女漫画家ってそういう職業なのだ。

少女漫画はビジネスなので売れる漫画でないと描かせてもらえないんだけど、それも、男性が買っているわけではないの。女性が買っている。女性たちの集合的無意識に根差して咲く花、みたいなもんなんだよ。だから嘘ではないの。これが売れるのだ、と言ってくる男性の言うとおりに描いて勝てる世界ではない。

どういう形であろうとも、マジョリティの女性たちの禍福である。それが、道徳的に正しいとか間違っているとかは関係ない。むしろ、なにかの思想にとって正しいとか間違っているとか考えると、致命的になにかを「間違える」んだ。そういう道徳っていうのは、ちょっと立ち位置が違うともう違うからだ。たとえば、50歳近くてずっと働き続けている私と、働くことができていない10代では、同じ女性でも見えている世界はまったく違う。私は自分とは別の、違う生き方をしている女性たちが見えている世界、立ち位置から見える希望が、間違っている、というのがどうしてもイヤだ。家父長制保守に見えようとも、それがその女性にとって必要ならば、その希望は在るべきだ。そういうふうにしか守れないもんがあるのだ。

私は男性の編集が少女漫画に関して語るのが、虫唾が走るほど嫌いだ。売る技術、魅せる技術としては、男性編集者にもお持ちのものがあるのだろうが、生理的に耐えられず、努力しても結局、聞けないし読めなかった。


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