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マスクガール1

『マスクガール』の感想を書く書く言っていて書かない詐欺みたいになっている。

言いたいことが多すぎてずっとまとまらない。なにを言ったらいいのかわからんけど名作だ。ミソジニーの話なんだ。全編。

主人公も仇役も友人も親も子供も全部女で、メインがすべて女に固められていて、ミソジニーの話なんだ。シスターフッドもすごい。主人公を助けるのはすべて女だ。男はひとりも助けない。すべて女の物語だ。

いままでの物語は、主人公は男性で悪役も男性で友人も親も子供も男性なことが多く、女性は小悪党かお色気担当しかいなかったが、それを真逆に裏返しにしたような作りだ。裏返しにして浮き上がってくるのはミソジニー。そこに、どうしようもないミソジニーがあるんです、というのを痛感させる作りになっている。

あらすじを簡単に説明しておく。以下ネタバレ注意だ。





主人公のキム・モミ27歳は普通の会社員。小さい頃は芸能界に憧れたが、不美人なので夢をあきらめなければならず、しかしマスクをつけてYoutuberになって有名になっている。プロポーションはとても綺麗。

しかし、フラレたことがきっかけで事件に巻き込まれる。ファンと称する悪質な視聴者にレイプされそうになって、間違って殺してしまう。偶然それを知ったオタクの同僚にもレイプされ、彼も殺してしまう。

殺された同僚の母親がマスクガールを復讐のために追う。主人公のモミは整形して美人になって水商売をやっているが、親友のDV彼氏を不可抗力で殺して、また罪を重ねていく。

レイプされたときに身ごもった娘を出産後、自分の母親に託して自分は刑務所に入って終身刑。刑務所の中ではいたって快適に過ごしているが、殺した同僚の母親が娘を狙っていると知って脱獄。娘を救って自分も殺される。





という話。まず最初の数分の情報量がパネエ。

主人公がマスクガールになろうとしたいきさつ、みたいなものが3分ぐらいで説明されている。早い。おそろしく展開が簡潔で早い。最近の韓ドラのペースは本当に早いのだ。

エピソードは「わりとその辺にある話」ばかりで、奇異なものは無いのに、殺人という異常な状況へとあれよあれよと転落していくかんじが、『ブレイキング・バッド』に似ている。あれも、いたってごく普通の学校の先生が、麻薬の製造者になり、麻薬密売王になっていく話で、最初の転落のスピードが速いのだ。この話も、うわあああ!!みたいな勢いで主人公が転落していく。好きになった既婚者の上司が、同僚の美人と不倫していてショックで身を持ち崩していったりとか。よくある話だ。よくある話が、異常な状態への引き金となっていく。

ごく普通の27歳女性なんだけど、マスクガールになると突然クネクネとしたキャバクラ嬢みたいな口調やジェスチャーになるのが、なんだかすごく面白い、と思った。男嫌いになって当然の状況なのに、男に媚びる女へ変身したがる。その矛盾がマゾヒスティックだ。ミソジニーへの過剰適応。あれほど男に傷つけられても、男の価値観を内面化し、少しでも男に求められる女になりたい、と欲望してしまう。

2話は、主人公の娘の父親であり、同僚だったオタク男性が主人公だ。日本のアニメや漫画が大好きで、マスターベーションするときはいつも日本語でイく。日本のオタクにそっくりな韓国人男性だ。これが、もうすごすぎてなんて言ったらいいのかわからないのだ。ネトウヨが激怒してしまうのではないか。

日本の男性向けのエロ・アニメやエロ漫画、日本語がこのキャラに多用されたのは、日本の男性向けのエロ・アニメやエロ・漫画に、ミソジニーが内包されていることを、原作、あるいは脚本家がよく理解している、ということだ。

どれほど女を求めていようとも、ミソジニーと切り離せない、男性の愛と欲望。

みたいなのを丁寧に描いてしまっているのだ。すごい。ここまでミソジニーを丁寧に描いたドラマは観たことが無い。テーマがミソジニーだったんだろうな。

このオタク男性の恋愛はたいへん薄っぺらく、マスターベーションによく似ている。女性への妄想も浅薄だ。愛している、と日本語で言いながら、すぐに性的な展開になってゆく。浅薄だよ、ってわかってるのがすごい、みたいな気になってくる。主人公やオタク男性が恋愛しているときに共通してかかる音楽があるんだけど、それがコミカル、というよりも、間が抜けているのだ。露骨に恋愛という概念を馬鹿にしている音楽なのだ。恋愛なんか、所詮幻想だし、薄っぺらいんだよ。と、音楽が言っている。

もし私が主人公で、結婚願望があるならば、この滑稽で浅薄なオタク男性と普通に恋愛して結婚してる、と、何度も思った。露骨に気持ち悪く描かれているが、それでも他の、ブスブス言ってくる男性よりも、いくぶんかマシだと思うからだ。愛している、という幻想が当人にあるだけマシだ。薄っぺらい、と言うだろうが、薄っぺらくない、深い愛情を持った男がその辺に転がっていて、いきなり自分を深く愛してくれる、と思うのもどうかと思う。いても自分を愛さないかもしれないではないか。それだって幻想だ。正社員だし真面目に働いているし酒もたばこもやらないけど日本のエロ漫画とエロアニメが好きなだけだったら、別にいい。自分を愛しているという思い込みをなぜか持ってくれているこのひとと、すかさず結婚しないと、次はない、と思うと思う。

と、ここまででまだ2話の前半だ。途方もなく長い。続きはまた気が向いたら。



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