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負け犬の遠吠え2

漫画の流行的に、20年前か20年後に生まれたかった。


最近すっかり異世界ファンタジーが普通だ。私の20年上の世代の少女漫画作品は、SFもファンタジーも、遠い外国ものも多かった。残念なことに、私の投稿時期は学園ラブコメ全盛期で、身近な学園ラブコメでなければデビューできず、特に恋愛が描けないとプロにはなれず、デビューしてからもずっとラブコメ。少し歳をとって学園の後は社内ラブコメ。ラブコメが苦手な私は本当に絶望的にデビューが難しい業界であった。

私は現実が嫌いすぎて全然観たくない。

みたいな理屈が一切通じなかった。今、普通に新人さんがファンタジーが描けて羨ましい。ものによっては恋愛すらもしていない。絵柄を変えて再投稿でもしたいところだ。かつてはもう現実が嫌いすぎて普通の少女誌のデビューが出来なかったし、私自身もつらくて考えられなかった。ミステリー志望だったのはそのせいだ。アシ先の先生にも、大手の少女誌で投稿を頑張れ、と説得されたが、摂食障害を起こしてしまってどうしても無理だった。

若い頃の漫画は心身症に似ている。心身症は封じ込めると他に症状が出てしまうのだ。

今はすっかり仕事でわりとなんでも工夫次第で描けるようになった。すべての条件を呑みながら、かろうじて自分が好きで描けるものを、細心の注意を払いながら、針に糸を通す勢いで描く。そうするとなんとかなるかな。私の生き方は基本、そんなかんじだ。飲み込まねばならぬ条件は飲むけれど、どこかで必ず活路を見つけようとする。

よく、『この枠に入らないので、おまえはダメだ』と言われ続けているかんじがする。

この枠に入らないので、この条件に入らないので、おまえはダメだ、と社会から言われるゆえに、漫画の世界に引きこもり、漫画を描き始めたように思うのに、さらに『おまえはダメだ』と選別され続けてしまうという、因果な商売についてしまった。私が『おまえはダメだ』と言われているとき、いつも考えるのは、それを言っているひともおそらく、誰かから『おまえはダメだ』と言われているのだろうな、ということだ。社会からいつも選別され続ける。

私も、あなたもだ。

だから時々、

『この枠に入らないからといって、あなたはダメではない』

と、人にも自分にも言いたくなる。

そして、いつも考えている。

この枠に入らないと本当に自分は幸福にはなれないのだろうか、と。

誰が決めた枠なのか、と。

その枠を決めることによって、得をするのは誰なのか。

枠に入らずに落ちぶれたとき、そら、言ったとおりになった、おまえは枠に入れないからダメな人間なのだよ、と言われたときに、なんと言い返すのか。

とかね。

でも、誰かが『その枠に入らないから、おまえはダメ』と言うときの『その枠』は、いつのまにか消えてて、また他に新しい別の枠が出来ていて、またその枠を振りかざして『その枠に入らないから、おまえはダメ』と言っているひとがいるだけなんだよな。

それも、わかってる。

そんなん無視すればいい、と言われるかもだけど、仕事だとそうも行かず、一応合わせるんだけど、10年おきぐらいにどんどん新しい次の枠が出来ては、また消えていく。

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