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うちの祖父、無所属の市議会議員だったんだ。

と言うと立派なひとなイメージなんだけど、全然そんなことなくって、お妾さんがいた。現職時代スピード違反したときに「俺を誰だと思ってんだこのやろうっ」って言って留置所にぶちこまれて新聞沙汰になったりしていた。とにかく破天荒なジジイであった。

議員をクビになったあとに、なぜか金貸しをやってたんだけど、すごく気の優しい金貸しだったので、借金を踏み倒されまくっていた。代わりに子供の漫画とかを借金のかたに奪ってきて、私はそれを読んで育ったの。曾祖母と祖父母に育てられたので。

今思い出すとおかしなことばかりだな。祖父母の話って。

祖父はお妾さんとすぐ海外旅行に出かけてしまうんだけど、祖母は嫉妬して高い着物を買う。私も何度か着物を誂えてもらっていた。その時買ってもらった帯も着物もまだ残っている。

祖父が死んだあと、知らないおじいさんがなぜかうちにやってきて、「あなたんちの亡くなったおじいさんに、毎月10万円ずつもらってたんだけど、今後もください」と言われた。本当にもらってたらしいんだけど、なんでもらってたのかわからない。仕事してたわけではないらしい。お金がなくって、かわいそうだからあげてたみたいなのよね。男のお妾さんでもなかったらしい。謎すぎるわ。そうだよな、見た感じふつうのおじいさんだったから。

とにかくそんなかんじのひとだった。今考えても、なにもかも謎だ。ほとんど父親みたいなもんだったんだけど。生活も不安定でたいへんだった。本当の父親は他に居たんだけど、あんまり顔を合わせないひとで。

全然子供をかわいがるタイプではなかったんだけど、車に乗せるのが好きで、いつも送り迎えしてもらった。スカートが短いと怒られた。しかし爪が汚いと爪を綺麗にしろ、と怒られた。泣きながら登校する小学生を見ると、学校まで乗せていく、と言うんだけど、誘拐犯みたいだからやめろ、と周囲が止めた。

それでも思い出すととても懐かしい。

私はまったく似なかった。祖父や父とは違って、いたって穏やかで平凡な人生だった。祖父や父があまりにも破天荒すぎて、自分は静かな人生でいたいと思っていたのだろう。でもどこか似てるんだろうな。政治に興味を持ったし。私が逸脱してるのは、仕事のエロ漫画だけ。あと周期的に突然旅に出ることだな。

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