あなたの作品

音ポスト①

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昨年秋から始めたオンナ作曲家の部屋jwcm/女性作曲家会議がやっているオンラインサロン)。様々な会話の中から、ふとアイディアを思いつくこともあったり、もともと持っていたアイディアをブラッシュアップさせたり、非常に刺激的なプラットホームとなっています。本企画「音ポスト」は、そんなオンラインサロンから派生したスピンオフ企画として、2020年1月末よりスタートした新しい個人プロジェクトです。詳細はこちらから(12作品限定の公募です。作品が集まり次第フォームは閉じます)

書き手が沢山いるのに、受け止める側の数が少ない。それじゃあ、真剣に受け止めることをしてみよう、と思って始めた音ポスト。ただ、やってみると難しい。わたし(たち)作曲家は、自ら創作する者として、音を分析的に、時に批判的に聞くことに慣れてしまっている。ただ、率直に音を感じて、それを表現することの難しさ‥‥。

まずは、ご応募頂き、ありがとうございます。まだ空きがあります。ご興味ある方は、ポスト入れてください。では、ご応募順に始めていきます。どきどき。

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音ポスト①

(作曲をされた方のペンネームもしくは本名は、冒頭では伏せさせてください。仮にここでは作曲者さんとさせて頂きます)。

始まりました、音ポスト①。

どの目線で、この曲と対話しようか、とても悩みました。演奏家でもなく、先生でもない。考えたけど答えが出ないので、とにかく率直に思ったこと、感じたことを書きます。作曲者さんの本意とは違うと思います。が、時に作品は、作者以上に語る場合もあるので、とにかく楽譜から感じたことを自由につらつら書いていきます。

沢山の音で形作られている、この作品。非常に細かく楽器同士が組み合わされているので、読むのに時間がかかりました。組み合わせの多くは、ハーモニー的ではなく、例えば打楽器的要素を強めるためのものだったり、ノイズ/音とのグラデーションっていうんでしょうか。グレーの色感の、その割合を、筆先で絵の具をちょんちょんして調整するみたいな、そういう組み合わせです。とても注意深く書かれています。瞬間瞬間の色彩感を、頭で一つ一つ鳴らしながら、楽しく読譜しました(音源は頂いていません。楽譜だけ見てます)。

そうだ、一つ、ここでメンションしておきたいのですが、これは作曲者さんと私の、音を通しての個人対個人の対話です。音楽の「説明」はしません。作曲者さん以外の読み手さんは、置き去りです。すみません。書簡のやりとりに興味を持って頂けたら、ぜひポストに作品をご投函ください。

作品に戻ります。タイトルなんですけれども、やっぱり書かれていると読んでしまうんですね。どこかしら勝手に繋がりを考えてしまう、タイトルと音楽の関係って何なんでしょうね。

この作品には、タイトルに「Drop」というワードが入っているんです。ドロップ。確かに「点から始まって下降する動き」がたくさん出てきます。「落ちたり」「落ちて上がったり」する何かが蠢いています。

それで、「落ちる」についてぼーっと考えていたんですが、「落ちる」っていくつもあるんですよね、ニュアンス。「自ら落ちる」と「落とされる」もある。重力感だったり、そのスピードも違うと、その「落ち方」のニュアンスって、想像しただけでも物凄くたくさんの可能性がある。

例えば「落ちる」を形容するオノマトペを考えても、

「ひらひらと」「さっと」「ばらばらと」「ザーッと」「コロコロ」「どすんと」「ポタポタ」「ボタボタ」、幅広い。「葉っぱが落ちる」落ち感もそうだけど、「大きなものが上から落ちてくる」、もしくは「パラシュートみたいに空気の抵抗を感じながら、徐々に落ちる」。違う落ち感ですよね。この作品では、こういった落ちる形容詞のいくつかが組み合わさっているような気がしました。あ、「ポタポタ」と「ボタボタ」の、異なるオーケストレーションっていうのも面白そうだなぁ‥(独り言です)。

話がずれてしまいましたが、引き続き全体を見ていきます。ちょっと角度を変えて見ることにします。

「落ちたり上がったり」するフレーズなんですが、これね、もしかすると一つの円環運動とも言えるんじゃないかって思うんです。

近くで見ると「落ちたり上がったり」しているように見えるけど、引きで見たら大きな円を描いているんじゃないかと。

ジェットコースターも乗ってるときは直線上に落ちているように感じるけど、下から見ると大きな円環運動じゃないですか。そんな感じ。

小さな円環運動は、曲の冒頭、弦楽器の動きで暗示されているけど、徐々に、その動きがはっきりしてくるように感じたんです。そうか、「上がったり下がったり」は、きっと正面からは平面の直線状について見えるけど、角度を変えると立体、円なのかもしれないなぁ。マルコ・チャンファネリの作品みたいに、角度と共に現れる何か。曲の中で繰り返し行われる円環運動は、耳に残像を生むこともあるかもしれない。手持ち花火で、ぐるぐるした後、見える複数の円みたいに。すっと現れて消える。

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率直に感じることを書いてみました。極々個人的な感想です。自身の読譜能力の限界を感じつつ(この一年で鍛えたい!)、想像以外の質感が現れた時のドキドキも、こっそり準備しておきたいと思います。いつか聞けると良いなぁ。

最後の最後に。個人的には中間部のEが好きです。

音ポスト①は、梅本佑利さんの「Lost Drop」でした。梅本さん、ありがとうございました。次回、音ポスト②は3月に更新します。「同時代音楽のための月間マガジン」登録も、ぜひお願いします。

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