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オンナ作曲家の部屋【はじめに】

※2018年8月28日都内で行われた「海外留学フェア (PPP Project)」の一貫として開催された「女性中堅作曲家サミット」の関連記事です。

 「今まで影響を受けた作曲家は誰ですか?」

そう聞かれるといつも「同世代の友人たちです」と答えるようにしています。実際そうだし、彼・彼女たちの動向が一番気になるし、思想としても影響を受けていると思うわけです(そして自分自身も影響を与えられる存在でもありたいとも)。

私がパネリストとして選んだ、この7名の女性作曲家の殆どは10年来の友人たちで、人によっては20年弱作品を聞かせてもらっています。今でこそ名前を聞くようになった彼女たちも、20年前はまだ10代の学生作曲家の卵(卵までも行かないかもしれない)でした。当時はインターネットでの楽曲配信も少ない時代だったので、実際に他大学まで足を運んだり、奥地の講習会で知り合ったりしながら、私の同世代作曲家友人の輪は広がっていきました。

多くの友人が経済的状況や環境によって作曲をやめていく中、それでも創作活動を続ける彼女らの存在自体が私の糧になり、欧州に居を移してからも出来る限り彼女たちの作品に出会える場に出向いて、膝を突き合わせてあーでもない、こーでもない、たわいもない話をしてきました。

多くの友人たちは、会った当初から原石のようなものを内に秘めていたような気がします。そして30代に入り、その原石の、独自の磨き方のようなものを会得した彼らに、今ここでもう一度話を聞いてみたい、そう思ったんです。

35歳という年齢は自分が何者かわかっている年だ。(ルチアーノ・ベリオ)

(実際自分が35歳になってみると、まだまだひよっこのような気もしてるんですが...。)

そんな素朴な思いとは別に、なかなかのヘビーなイベント名「中堅」×「女性」限定「作曲家」とつけたのには、もう一つ別の理由があります。

海外におけるジェンダー問題は、今や大きなトピックになっていますが、日本の、そして現代音楽界隈ではどういった扱われ方をしてるんだろう、と思ったのです。私自身は10年以上国外に住んでいるということと、国内で活動していた時もジェンダーに関しては無自覚なところがあった、そうなんだけれども、もしかしたら私たちは抑制されているのに、その薄い膜みたいなものに覆われていることにそもそも実際は気付けてないんじゃないか、とふと思ったんです。そして、そうであったら、そのこと自体が非常に問題だし、深刻だな、と。

ジェンダーについて語ることはインターナショナルな場所でも、なかなかリスキーなことだとは思っています。難しい問題です。

ただ私がしたかったことは、大それたことでも、彼女たちをまな板の上にのせたかったわけではなく、ただ日常に入り込んだ薄い膜の部分について、その厚さについて話を聞いてみたかった。

岸政彦さんの「断片的なものの社会学」の中にこんな一節が出てきます。

少数者というものは、いわば「ラベル」を貼られた存在である。このことについては誰もが知っていることだろう。だが、そのラベルが「貼られていない状態」を「実現」しようとすれば、どのようなかたちになるだろうか。

「オンナ作曲家の部屋」の中で出てくる「作曲家としての自分をあらわす三つのキーワード」。私だったら、この三つになるんじゃないかな。

・断片/穴
・信頼
・他者

断片と穴は似たような概念で、かれこれ20年以上付き合っているワードです。断片的なものから全体を、穴から見た景色から全貌を想像すること。これをキーワードに作品を作ってきました。私は世界に対して根本的にはポジティブなイメージを持っています。そして、それは全て信頼からなるものです。私の作品は、人を信頼することで成り立っている。彼らがイマジネーションを持って、作品に関わってくれることでやっと成立する音楽たちなのです。そして異国で社会的少数者として暮らすことは、時に多くのイマジネーションを必要とします。日本にいた、マジョリティ側だと思い込んでいたあの頃は何も想像する必要もなかった。当たり前なことが一つもあり得ない状況で、如何に人の想像力が世界を救うのか、いつも考えさせられています。

このイベントではパネリストの彼女たちの、たわいもない日常や言葉の端々から、もう一度この世界を想像してみたいと思いました。ラベルを剥がした状態の、彼女たちの本来の声を聞いてみたいと。

ここで語られている幾つかのトピックは、今まで語られてこなかった重要な問題を秘めているような気がしています。そして、実は女性だけでなく男性をも勇気づける内容だと、そう私は信じています。〇〇であるべきと社会から見えない責任という名の「男らしさ」を求められている男子学生は、本当に「その音」に必然性を感じていたのでしょうか?ヒエラルキーの外側にいる女性も、その中でもがき苦しむ男性にとっても、この座談会で語られたことが、何か小さな「可能性」をその中に見出せるものであって欲しいと思います。

最後に勇気を持って協力してくれた友人たちに感謝しながら、今後も彼女たちの動向、そして現代音楽界の行く末、見守っていきたいと思います。


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ドイツ在住作曲家。Project PPP代表。jwcw(女性作曲家会議)メンバー。オンラインで学ぶさっきょく塾やってます。

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