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Magic Shopによせて「紅茶が冷めるまで」/BTS妄想


すごい土砂降りの雨。さっきまで晴れていたのに、やっぱり山間の町の天気は変わりやすい。

空を見上げると、ピカッと稲光が光った。
そう遠くないところに喫茶店が見えた。

「こんなところに喫茶店なんてあったかな?」

オレンジ色の屋根に白い壁。
窓からは少し薄暗い店内と暖かな蝋燭の明かりがみえた。
木の扉にはオープンと書かれた看板がぶら下がっている。
よかった。ここで少し雨宿りしよう。

ドアノブに手をかけて扉を開けると、パンが焼けるようないい匂いがした。

「いらっしゃいませ。」
長身の男性店員さんが出迎えてくれた。

「すごい雨でしたね。」
「はい。傘を持っていなかったので、大変でした。」とわたし。

「今、タオルお持ちしますね。」
「すみません。」
真っ白なタオルが手渡された。

テーブルに案内してもらい、メニューを手渡される。
温かいものが飲みたかったので、アールグレイの紅茶を頼み、一息ついた。

タオルで濡れてしまっま髪や上着を拭いていると、早速アールグレイが運ばれてきた。
柑橘系のいい香り。
香りのよいお茶を飲んで、ホッとした。

一緒に運ばれてきた薄い小さな黒砂糖のかけらを紅茶には入れずに、前歯で少しずつかじる。
サクサクした食感と、舌先に甘さが広がる。
静かな音楽が流れている。

気がつくと、目の前に燕尾服を着た猫が立っていた。

「さぁ、ここはMagic Shopです。」

「ネッ、猫がしゃべった‼︎」思わずわたしの声が裏返った。
「ええ、そうでしょうとも。
実際、驚かれるお客様が多いです。
世界広しと言えど、人間の言葉をしゃべれる猫はわたしぐらいですから。」と猫は自信たっぷりに言った。

「なっ、なにかの演出ですか?」わたしが聞くと、

「ええ、どのようにとって頂いてもけっこうです。
ここはMagic Shopですから。
ここではあなたの望みはなんでも叶います。
さぁ、なんなりとお申し付けください。」と
その燕尾服を着た猫は言った。

わたし「望みが叶う?
そんなことってあります?」

猫「はい。
なんたって、わたしはしゃべれるネコですから。」

わたし「たしかに・・、望みを叶えてくれるっていうのは、一つですか?」

猫「はい。」

わたし「どのくらいの時間になりますか?」

猫「どのくらいと申しますと?」

わたし「その魔法みたいなのが効く時間です。」

猫「そうですね。その紅茶が冷めるまでです。」

わたし「わかりました。それなら、
『やさしくはなしを聞いてくれる彼氏が欲しい』です。」

猫「では、その望みを叶えてあげましょう。」

すると、お店の奥から、長身の男性が登場した。

髪は栗色。
白いシャツにモスグリーンのセーター。
「座っていい?」と彼。
「どうぞ」とわたし。

あれっ?さっき出迎えてくれた店員さん?

「おもしろいサービスですよね。」とわたし。

ナム「店長の遊び心なんだと思いますよ。」

わたし「店長って、、あの猫、、⁇」

ナム「しっ」人差し指を唇に当てて、話を遮った。

ナム「何か話したいことがあったんですか?」

わたし「あぁ、アルバイトの愚痴を聞いてもらいたいなぁって。」

ナム「なんでも聞くよ。言ってみて。」

わたしは、それから大学生になって始めたアルバイト先のレンタルビデオショップが最近閉店してしまったこと。

店長は責任を感じているようでずっと無口だったこと。
最後の方はお店の雰囲気が重くて大変だったこと。

フリーターの人たちは、もっとずっと自分より大変そうだったこと。

大学生になって初めてのバイトで、テーマを決めたコーナー組みを考えることを頑張っていたこと。

常連さんのおじさんと仲良くなって、音楽の話やスピーカーの話などを、よくしていたこと。

最後の日は、アルバイトみんなで朝まで居酒屋で呑んで、寝ないで大学に行ったことなどを話した。

ナムさんは、わたしの話を一通り相槌を打ちながら聞いてくれて、
それからわたしの頭をポンポンと、
やさしくたたいて、

一言「最後まで、よくがんばりました。」と言ってくれた。 

思わず涙が、こぼれた。

窓の外をみると、
あんなに激しく降っていた雨はからりと上がっており、
紅茶はすっかり冷えていた。

「ありがとうございます。紅茶が冷えるまででしたよね?」と、わたしが聞くと、

にっこり微笑むナムさん。

わたしは、その冷えてしまった紅茶をあわてて流し込んだ。

お会計をして、タオルを返して振り返った。

「また、来てもいいですか?」

「いつでも、お待ちしていますよ。」とナムさんが笑ってくれた。

お店を出ると、
もうすっかり日が暮れており、

見上げると、
空には天の川がみえるのだった。

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↓工藤凛さんのお話に触発されて、
わたしもMagic Shopを題材に、
文章を書いてみました。

ありがとうございました😊




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↑ナムジュンをイメージして石を選んでみました。


↑編むとこんな感じ。すぐ解いちゃったけど。
やさしさの中にも男らしさを感じます。

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