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雪割納豆のあれこれ⑧今も昔も変わらぬ味

山々には残雪、春らしい日差しが感じられる。卒業証書を片手に、胸には花を飾った生徒さんたちを見ると、いよいよ春の訪れを感じる。米沢盆地から南に望む吾妻山も少しずつ白馬の騎士が姿を現してくる。上の絵のような感じになるのは4月中旬ごろだろう。
3月が雪割の季節とするならば、4月は仕込んだごと納豆がいよいよ食べごろを迎える季節だ。現在は1年中仕込んでいるので、昔のお話ではありますが。前々回と前回で、ごと納豆とはじまりの雪割納豆についてお話をした。今回は雪割納豆の味を決める工程について話をしていきたい。
雪割納豆の味の決め手は、ひきわり納豆造りと米糀と塩を混ぜ合わせてからの熟成発酵過程にある。安定的な味を保つために大切なことは、この2つの工程のルーティンをしっかりとこなす事に他ならない。ひきわり納豆は昔ながらの手法でひきわり納豆を造る事だ(昔ながらのひきわり納豆については別の機会で紹介する)。今では昔ながらのひきわり納豆を製造する納豆製造業者は全国探してもほとんどいない(もしかしたらゆきんこだけかも)。言い換えれば昔は当たり前の製造方法であったが、現在はお客様の好みや製造者の作業効率向上のために昔ながらのひきわり納豆の製造は行われていないという事になる。雪割納豆を製造する上でこの昔ながらのひきわり納豆を造ることが、とても重要なことで、味の決め手となる!次に米糀と塩との合わせ作業だ。米糀は固い状態の米糀を使う。煉り麹や三五八ではないということを知っていただきたい。簡単に言うと、お酒やお味噌をつくる為の元の状態(売麹)の米糀になる。そして、混ぜ合わせた物を樽に落としていく。ここからが雪割納豆の味が決まる真骨頂へと入っていく。それは数週間に及ぶ、加温と加重による発酵期間だ。納豆菌と麹菌が同時に活発になれる環境下でガンガン発酵が進められていく。それもほとんど空気に触れない状態下で、納豆菌と麹菌が大好きな温度帯で長期発酵を促していく。ひきわり納豆の製造工程は好気発酵、熟成発酵させる2次発酵は嫌気発酵となる。菌たちの気持ちになると2次発酵は、なんとも言えない状況下で活動しているのかもしれない。それでも2つの菌たちが大豆のタンパク質とお米の糖質を雪割納豆独特の旨味に変えていってくれるのだ。ぜひ雪割納豆を食べるとき2つの発酵過程を想像しながら食べてみるのも、また面白いかもしれない。本日はこのへんで、次回につづく。
ゆきんこHP


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