中国神話黄帝と牛飼い座アルクトゥルス

中国の神話時代を代表する黄帝。

東洋医学の祖であり、弓矢、指南車の発明者、とも言われる。
神農の子孫蚩尤を討って諸侯の人望を集め、神農氏に代わって帝となった。
実在性は不明だが、この黄帝は、天上界の星アルクトゥルスを象徴していると考えられる。

この星は、春に黄金色に輝く一等星。
北斗七星の柄からのびる曲線とを結び春の大曲線といわれ、また、乙女座スピカと獅子座デネボラとを結び、春の大三角の一角をなす。

一方、神農は炎帝ともいわれる。
これは、さそり座のアンタレスである。
神農氏とは、黄道に存在する星をいう。
太陽の軌道である黄道は、農耕暦の作成の為に極めて重要であった。
農耕社会の訪れと共に、黄道は天文学の中心となった。
この時代の幕開けは、アンタレスの観測に始まった。
神農の時代は、紀元前6000年前前後に始まると思われる。
この時期、さそり座アンタレスは、秋分点に近い場所にあった。つまり、春の訪れを教えてくれる星であった。

地球は歳差運動により、北極星の位置は約2000年毎に移動する。
現在の北極星であるこぐま座ポラリスより数代前の北極星は、ヘルクレス座にあった。
この頃の黄道の秋分点がアンタレス。
そしてその約2000年後、北極星がりゅう座αトゥバーンにあった時、秋分点はアルクトゥルス付近にやってきた。
このアルクトゥルス、非常に動きの速い星で
位置が一定でない。
難しい天体の軌道との兼ね合いもあり、58000年前は北極星であった。
そんなクセものアルクトゥルスが何故天帝となるのか。
先程述べた北極星の位置が関係する。

北極星がりゅう座αにあれば、星座は全体的に現在より南による。
天の赤道が南にズレて、秋分点が移動し、季節は速まる。

地球の歳差運動による暦のズレを修復する必要が生じた。
黄道と天の赤道が交差する場所に秋分点を置いた。

この暦の修正、治療をもって黄帝は医学の祖となった。

ちなみに神農は薬草学の祖とされる。
神農は赤い赭鞭を用いて草を払い毒草と薬草を分けた。
つまり、アンタレスを基準に、星々の有用性をふるい分けた。常用恒星は、航海において位置を知るために用いられる恒星。
どの星を基準とするかを、アンタレスの位置から割り出した。
ただ明るいだけの星を選べば良いわけではない。
黄道上が基準となる。

黄帝は弓矢の発明者といわれる。

ある時、黄帝は石のナイフを持って狩猟に出かけた。
突然、虎が下草から飛び出してきて、黄帝は桑の木に駆け上がった。虎は気長な動物であるから、木の下に座り込み、次にどうするか様子を見た。
黄帝は桑の木がしなやかな事に気が付き、石のナイフで桑の枝を切り弓を作った。葡萄の蔦が木の上まで伸びていたので、石のナイフで切り弦を作った。次にまっすぐに伸びた竹を見つけ、竹を切り矢を作った。
弓矢を使って、虎の目を射ぬき、虎は逃げ去り黄帝は脱出した

この話は、春の大曲線に関する物語である。
アルクトゥルスの横には、獅子座がいる。
アルクトゥルスはしなやかな北斗七星の柄から
乙女座スピカまで伸びる曲線を描く。
つまり弓をつくる。
さらにスピカと北極星を結び弦をはる。
その中心とアルクトゥルスを結ぶ前に、獅子座の目がある。実際は、獅子の心臓レグルス。
この矢を射た時、レグルスは西の空に沈む。
獅子(虎)退治である。

この話が、神農一族蚩尤を破る話に繋がっている。

蚩尤は獅子座レグルス。黄道上に座す。
遥か昔(8000年前)、夏至点のあった場所であるが、
ポラリスの時代は梅雨の頃を示す星である。
梅雨は空がグズつき、星は見えなくなる。
気象を操り、視界を遮るという蚩尤の特徴と一致する。

黄帝が開発したと言う指南車。
常に南を示す車。

中国では北斗七星は車に見立てられた。
アルクトゥルスは熊の護り人という語源をもち、
北斗七星と近い位置にある。
つまり、北斗七星のコンパスを用いた。
梅雨時の0時頃、北斗七星の柄は南を指す。
北斗七星の柄の向きによって、方角、季節や時間がわかるのである。

さて、梅雨明けの時期は、深夜レグルスが西に沈む頃。

夏至点を示す大事な星であったレグルス(蚩尤)は、歳差運動によりその地位を失い、変わって梅雨を示す星として嫌われてしまい、農耕の目印としての地位をアルクトゥルス(黄帝)に明け渡したのだ。
この2星が対峙する場所が秋分点。
涿鹿の戦いと言われるのは、この場所。
黄道と天の赤道の交点。

日の入り後に東にアルクトゥルスが見え始め、
日の入り後西に沈みゆくアルクトゥルスが見える間、
春から秋の間、人々は農耕に従事していた。

黄帝以降の4人の五帝と、の始祖を初め数多くの諸侯が黄帝の子孫であるとされる。
これは、アルクトゥルスを目印に農耕暦を使っていた事を示している。

このように伝説の帝である黄帝とは、
農耕を象徴する星、黄金色のアルクトゥルスを指している。








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