“セックスレス”をテーマにした漫画『あなたがしてくれなくても』がヤバい
“セックスレス”をテーマにした漫画『あなたがしてくれなくても』がヤバい。
今朝、スマホを見ていたらバナー広告が目に止まった。漫画のタイトルは『あなたがしてくれなくても』。
主人公たちの年齢が30代中盤から前半と僕と同じ年齢層なこともあって一気に引き込まれた。
タイトルでは伏せたが、今作品のテーマは「セックスレス」である。夫婦生活が始まって数年が経ち、夜の営みがなくなってしまった。そんな2つの子供がいない家庭を4つの視点(ある女性の視点も加えると計5つの視点)から描ききっている。
ここからは出来るだけネタバレなしで僕が惹かれた点を書いていきたい。
ゲスがいない世界、誰もが正しく、誰もが間違っている
主人公の吉野みち(32歳)は約2年ほど旦那の陽一とセックスレスが続いている。
子どもがいる家庭はセックスレスになりがちだと耳にするが、この段階でセックスレスの状態が続くのは「求める側」にとって決していい状態とも言い切れないと思う。
そんな不満を会社の同僚である新名誠にお酒の流れで打ち明けてしまったことが「不倫」の発端になってしまう。誠も妻の楓とはセックスレス状態にあったのだ。
同じ悩みを持つ2人。妻の楓がアクティブで強い女性(あくまでも表向きには)ならば、みちは母性を感じる優しく可憐な女性である。
妻と全く違う優しさに触れたことで、誠の心はみちに強く惹かれていく...。これが大きなメインストーリーである。
ただ、『あなたがしてくれなくても』の魅力はいわゆる不倫でドキドキといった類ものではない。
人が100人いれば100通りの価値観がある。自分が正解だと思って言った言葉や行動が、少し足りなかったり、逆に傷つけたり、思った以上に相手にとって響いたりする。
そんな心の機微を繊細に描いているのが『あながしてくれなくても』の面白さなのだ。
何でこの旦那(妻)は、パートナーのことを考えない行動を取るのだろう。そんな秘密をキャラクターの視点を入れ替えるマルチサイトを導入し、紐解いていく。
『ハチミツとクローバー』のように主人公全員の気持ちで楽しめると言えば伝わりやすいだろうか。
何かが足りない
僕がタイトルに「セックスレス」と付けなかったのは、この作品の本質的なテーマは「LESS(レス)」にあると思っているためだ。
少しネタバレになってしまうが、作中の序盤でみちと陽一はセックスをすることになる。“することになる”と書いたのは「セックス」をしても、みちの不満は解消されなかったたためだ。
身体を重ねる。ダイレクトに体温が伝わり、愛情を感じることができる。
セックスレス状態の時にそう信じていたものが、実際はそうではなかった。セックスするだけでは満たされない、何か本質的なものが足りない(LESS)。それが何なのか。それが人それぞれ違うからこそ、答えが出ずに悩み苦しむのだろう。
他にも少しの気遣いが足りないことですれ違うシーンが幾度も描かれている。
例えば、誠の楓が疲れて自宅に帰ってきた。誠はコミュニケーションを取ろうとするが、楓は顔も見て話してくれない。
これだけ見ると妻が悪いとなりがちだが楓には楓の理由があったりする。
どんなに疲れていても乗り気じゃなくても、パートナーを尊敬していれば、雑な扱いはしないはずなのだ。
ただ、一緒にいるのが当たり前て空気のように感じてしまうとそんな気遣いすらできなくなってくる。
それが痛いほどに想い出されて『あなたがしてくれなくても』は、読んでいて楽しくもあり胸が抉られるような気持ちにもなった。
大切な人に幸せになってもらいたい。でも、自分の中の感情も抑えきれない。人間誰しもが、相手のことを大切に思いつつも、自分本意だだたりするものだ。
思いやり、優しさ、勇気、愛情表現。その全てを『あなたがしてくれなくても』と思われないように生きる。それがパートナーと共に生きる上で大切なことなのだろう。
食事の大切さ
『あなたがしてくれなくても』を読み進めていくと、食事や睡眠シーンでのすれ違いが印象的に映る。
特に食事だ。相手のために作ったものが食べられいなかったり、優しさが責めているように伝わったり。色々な見せ方で何かのバランスが崩れていることを暗示するシーンが目に止まる。
一緒に会話をしながらご飯を食べる。まずはこのコミュニケーションが大切なのだと作品を通じて気付かされた。
現在4冊、一挙読みを推奨
柔らかな絵のタッチと繊細な心理描写が紡ぐ『あなたがしてくれなくても』は現在、4巻まで発売されている。
4巻がちょうど「ここかよ!」といういい意味で凄まじい余韻を残して終わっているため、4月の新刊が待ちきれないと言ったところである。
2月の三連休、時間のある方はぜひチェックいただきたい。
周りの人にちょっとした気配りと優しさを。そんな気持ち気付かせてくれる名作に目を通していただきたい。
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