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eスポーツが注目すべき「心拍数」の重要性

先週末ですが、「ぷよぷよeスポーツ」公式大会の2022年度シリーズが開幕し、フルセット・フルスコアまでもつれ込んだliveプロとの決勝戦を制したdeltaプロが、初戦のチャンピオンに輝きました。

私がはじめてこのタイトルに関わらせてもらった2019年度は、まさにこのdelta無双の時期でもありましたが、その後ともくん、レインやSAKI、fronといった若手が台頭する間、「そろそろまたdeltaが来るぞ」と言われながらしばらくタイトルとは縁がなく、本人として辛いシーズンが続いていたのではないでしょうか。そんな背景もあり、ふだんは寡黙な彼が、優勝の瞬間、立ち上がって喜ぶ姿は、かなり胸に迫るものがありました。

ちなみにdeltaと激戦を繰り広げたliveも同じく30代ということもあり、オジサンとしてはどちらを応援するか悩みましたが、2020年度の選手権優勝や去年の初戦チャンピオンシップを獲ったliveよりは、個人的には不遇のdeltaを応援したい気分でした。
いずれにせよ、10代のプロも珍しくなくなってきた今、ゲーセン最終世代のふたりが第一線で活躍しているというニュースは、明るい話題なのではないでしょうか。

配信を観てくださった方はわかると思うのですが、今回は選手に対し、試合中や前後に積極的に水を飲んでもらうようお願いしていました。
特に準優勝のliveプロは律儀にこちらのお願いを汲んでいただき、かなりボトルを口にするシーンが多かったと思います(本当にありがとうございます!)。
もともと強豪であるliveプロが決勝まで進んだのはもちろん実力以外の何物でもありませんが、もしかしたら後半に差しかかるにつれ、水分補給の効果を実感してくれたのかもしれません。

フィジカルトレーナーとしての持論では、eスポーツにおける水分補給の効果につながる先は、その活動に大量のO2を必要とする心臓、「心拍数」にあるのではないかと考えています。

コロナ禍以降、通勤が減ってアウトドア活動が多くなった影響で、私もオートバイに乗る機会が増えたのですが、 スマートウォッチで心拍数をモニターすると、オートバイで高速道路を走っている時は、150近くまで心拍数が上昇していることが分かりました(同じ速度でも自動車よりも二輪車の方が高い心拍数をマークしています)。

「バイク」の表示箇所がオートバイ運転中
朝のスイミングよりも高い心拍数となっている


普段トレーニングをしているからよく分かるのですが、150というのはかなりハードなメニューでなければなかなか達しない数値です。モニターの結果、運転ほどではありませんが、バンドで楽器を演奏している時や、商談中も心拍数がかなり上がることがわかりました。
身体をほとんど動かしていなくても、外的なストレスが心拍数に大きく影響することは、これまでも一般的に広く知られてきました。
以前、モータースポーツの選手を特集したテレビ番組の中で、 彼らは身体を直に動かすわけではありませんが、レース中の高い心拍数に耐えられるように、身体をアスリート並に鍛えておく必要がある、ということを言っていました。

心臓は、大きな力を発した筋肉にたくさんの酸素を届けるために、強く、早く鼓動します。 しかし、その先の筋肉が特に多量の酸素を欲していなかった場合、なにが起こるのでしょうか。
酸素が身体に行き渡ること自体は良いことのように思えますが、それぞれの筋肉に過剰に供給されたOは、行く先々で過呼吸のような現象を起こすのかもしれません。
私も経験があるのですが、突発的に強いストレスにさらされたとき、手足のしびれやめまいを感じることがあります。 deltaプロも優勝インタビューで「最後は緊張で足がガクガクになった」と答えていました。

ゲームや運転に限らず、ストレスがかかる瞬間は、私たちの生活の中にたくさんありますが、 そのたびに心拍数は上昇し、私たちの心臓には大きな負荷がかかっています。
中高年における心疾患が多いのは、こうした日常生活の中で襲いかかるストレスとそれに伴う高心拍を受けとめられる身体が徐々に維持できなくなっていくため、次第にエンジンがダメになっていく、ということではないでしょうか。
したがって、「ストレスを避けましょう」という対処療法にも限界がある以上、身体機能の方を適応させていくしか根本的な解決法はない、ということになります。

話をeスポーツの方に戻すと、やはりフィジカルだけを見てもフィットネスが足りていない選手が多いです。 瞬間的とはいえ、あれだけ心臓に負荷のかかるプレイを日常的におこなうのであれば、その心拍数に耐えるための身体作りは、絶対に必要だと言えるでしょう。
単発の試合であればいざ知らず、大きなタイトルや賞金大会は、長時間に及ぶことが多く、トーナメント上位に差し掛かかる後半に向けて、コンディションの差はそのままパフォーマンスの差になっていきます。
また、ただでさえeスポーツ選手は深夜の練習が多く、座りっぱなしになることが多いため、人一倍、身体のストレングスには気を遣うべきだと思います。

eスポーツ界隈ではすでにフィジカルトレーニングを取り入れている選手やチームはいるものの、「集中力」や「体力」みたいなフワッとしたメリットしか語られることがなく、運動が苦手な選手も多い中、まだそこまで一般的になっていません。
ただ、上述のとおり、フィジカルトレーニングがゲームのパフォーマンスにも良い影響を与えるのは間違いありません(せめて水分補給だけでもしっかり心がけましょう)。


このあたりのナレッジを買ってくれるチームがあると嬉しいですね。
最近使っていない「日本スポーツ協会公認指導員」の資格を生かし、eスポーツ専任フィジカルトレーナーのお仕事、絶賛募集中です!!笑

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