川村 勇気

元トライアスロン選手、視覚障がいランナーのガイドアスリート。企画屋さん(スポーツ、eス…

川村 勇気

元トライアスロン選手、視覚障がいランナーのガイドアスリート。企画屋さん(スポーツ、eスポーツ、音楽)。 音声メディアVoicyでBizDev、ときどきフリー。 【並木企画】https://sites.google.com/view/namikikikaku/

最近の記事

ストレスの対価

実はいわゆる「社員」として最初に勤めた会社は白木屋だったので、いまだに私の健保や年金手帳の始まりは新卒入社したNHKではなく「株式会社モンテローザ」になっている。 夕方15時から翌朝5時までの深夜長時間労働もキツかったが、それよりも堪えたのは金と土曜日のキッチンだった。ホールで注文が入るとピピーっと印字機から指3本分くらいの横長の短冊が出てくるのだけれど、注文が立て込んでくるとそれを千切る余裕がないまま、あっという間に厨房の床までついてしまう。 料理を待つ客に追われる焦燥感と

    • eスポーツが注目すべき「心拍数」の重要性

      先週末ですが、「ぷよぷよeスポーツ」公式大会の2022年度シリーズが開幕し、フルセット・フルスコアまでもつれ込んだliveプロとの決勝戦を制したdeltaプロが、初戦のチャンピオンに輝きました。 私がはじめてこのタイトルに関わらせてもらった2019年度は、まさにこのdelta無双の時期でもありましたが、その後ともくん、レインやSAKI、fronといった若手が台頭する間、「そろそろまたdeltaが来るぞ」と言われながらしばらくタイトルとは縁がなく、本人として辛いシーズンが続い

      • eスポーツこれまでとこれから

        「eスポーツ元年」と言われた2018年から4年が経ちました。 個人的には、東京2020組織委を出されてから、はじめは不本意ながらだったeスポーツ制作も今や3年目となります。 ゲームの世界にはとんでもないエキスパートが山ほどいますが、完全なるビジネスサイドから専任として業界に足を踏み入れた非ゲーマーeスポーツおじさんとして、最近ではほうぼうから色々聞かれることも増えてきたため、この機会に文章化しておこうと思います。 2022年の現時点で、いわゆる興業主として横断的にeスポー

        • 「マーケティング」って何?

          あまりにありふれた、しかしあやふやなこの横文字を、アンポンタンの私でも理解できるように説明してくれる人や本はこれまでなかったし、「マーケット」という概念がほぼ存在しないNHKから、あきんどの権化のような広告代理店に転職するまで、この言葉の意味をちゃんと考えたことさえ、たぶんなかったと思います。 が、ここ最近は若い人たちからキャリアの相談なんかを受けることも増えてきた中で、この言葉の意味について、否が応でも向き合うことが増えてきたので、無知で器用さだけが取り柄の私ですが、ここ数

        ストレスの対価

          「子どもは親の思い通りにならない。親のようになる」

          先の1月で、上が16、下が14歳になった。 同年代の多くがまだ幼稚園~小学生の楽しい時期に向き合っている中で、結婚と出産が、卒業と就職といっぺんにやってきた私は、子育てのフェーズで言えばだいぶ後半戦に差し掛かってきた。 想像に難くないと思うのだけれど、もはや見た目の可愛さはまるでない。むしろ思春期まっさかりの上の小僧など、三日にいちどは本気で家から追い出せないかと悩むくらい憎たらしい。 それでもなんとかふみとどまっていられるのは、幼かったころ、足にまとわりついてきた奴らの

          「子どもは親の思い通りにならない。親のようになる」

          やりたいことなんてなにもない

          今年の年始は久しぶりに母と兄と私の3人で、横浜のハンマーヘッドに新しくオープンしたインターコンチネンタルホテルに泊まって、徹底的にダラダラと、バチェラー4をイッキ観しながら過ごした。 兄は久しぶりに会うたびに、母にはダイエットの説教(すぐケンカになるので気が休まらなかった)、私には仕事の説教をするのがお約束になっているのだけれど、本人も自分の言ったことをあまり覚えていないようで、毎回言うことが少しずつ変わっていくので、私も話半分で聞き流すようにしている。 ちなみに今回の内容は

          やりたいことなんてなにもない

          相手の価値観に期待してはならない

          Voicyに勤めるようになってから、採用面談の席に同席することが多くなった最近のマイブームは、面談にバッキバキのスーツで出席して、ITベンチャーの面談だとイキってカジュアルな装いで来た候補者をビビらせることだ(笑 部屋に入ったときの彼らの「しまった」という反応はおろか、「オシャレですね!」などと声をかけてあげたときの表情がたまらなくクセになりそうだ(私の採用面談の時はCHOも社長も半ズボンだった)。 そんな私のささやかな楽しみは、職場の同僚たちからはやや冷ややかな目で見られ

          相手の価値観に期待してはならない

          知的好奇心を育むもの

          (コロナ禍で取り戻した嬉しい習慣「図書館通い」)  学校教育に関する議論は、それこそ何十年も前から繰り返しおこなわれてきたが、ここ近年では、ある政治家の「理系大学以外廃止案」や、東大卒インフルエンサーの「大学はコスパが悪い」などといった発言により、ますます活況を呈している。「数学の方程式が将来なんの役に立つんですか?」という子どもの質問に対し明快に答えるのはとても難しいが、私はそれでも、人生において無駄になる勉強はないのですよと伝えてあげたい。  確かに、学校を卒業してか

          知的好奇心を育むもの

          スポーツ界のリソースという概念

          マイナー競技の関係者の間には「日本のスポーツ界を強くしたいなら、甲子園を廃止すればいい」という笑い話がある。 野球は、世界の中では単なるマイナースポーツのひとつにすぎないが、日本では極めて人気が高い(とりわけ高校野球の人気が異常に高い)ため、いまだに野球を選択する子どもが過度に多い。 毎年、夏の甲子園を観るたびに、アスリートとしての貴重な3年間をベンチにも入れずに過ごすこの子達が、もし他競技に挑んでいたのなら、どれだけ日本のスポーツ界の可能性が広がっていただろう、と考えてし

          スポーツ界のリソースという概念

          行動しない人たちが本当にほしいもの

          前職で組合の役員をやっていたときに、おびただしい数の労働相談を受けたけど、そのほとんどは、すでにある制度や運用で解決できるものだった。 少し調べれば分かるはずなのに、そのことを伝えると「でも雰囲気が」とか言い出し、雰囲気では戦えませんよと告げると、大体怒り出す。 組合費を払っているんだから、組合役員は組合員の奴隷でなければならないと本気で考えているらしかった。 私も組合費払ってるんですけど。とはとても言えなかった。 中央書記長なんておっかない役をやらせてもらってからは、なん

          行動しない人たちが本当にほしいもの

          貧富の差の先にある恐怖

          ちょうど労組役員をしていたころ、国民世帯所得の減少を理由に、職員の給与10%減を交渉するという貧乏くじを引いてしまった。 しかも妥結は既定路線だったので、私の仕事は全国の職場への説得行脚で、当時最年少の専従役員だった私は、日本中の百戦錬磨の先輩たちに、「御用組合」だの「組合費泥棒」だのいいようになじられ(ほぼ記者たちw)、本当にいい経験になった。 驚いたのは、ほとんどの職員が反対や不満を口にするのはまだしも、自分たちの恵まれた収入はすべて自分の努力の結果だと本気で信じている人

          貧富の差の先にある恐怖

          サンク・コスト

          20年前に一浪してなんとか滑り込んだ大学は「人間環境学部」などという、当時流行った人文学系の学部で、正直まだ十代の私はそこで一体なにを学べるのか、よく分かっていなかった。 とはいえせっかく入ったのだから、役に立ちそうな知識を身に付けようと、「マクロ経済」の講義を受講したことがある。 残念なことに、算数から始まり、数学はもちろん物理や化学など、昔から数字の絡むものは徹底的に理解できないという致命的な弱点がさらに露呈し、まったくついていくことができなかった。結局単位すら取れず、

          サンク・コスト