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【グラジオラスの花束 〜無言の宇宙〜「上村莉菜」】4話

今日も部長の声がよく響く。

『永田!ムード!!』
「は、はい!」
『もっかい!』
「はい!」

「渚!僕.....やっぱり君のことが.....」
「やめて!!もう好きじゃないから.....!!」
「嘘だよ.....じゃあなんでそのネックレスをまだ.....」
「これは.....」

『カット!上村はすごくいい感じになってきたが、永田はもう少し弱さの中の小さな強さを魅せてほしい』
「弱さの中の強さ.....」
『あぁ.....よし!みんな5分休憩!そのあと渚と優人のキスシーンからいくぞ!』
『はい!』
『永田!上村!ちょっといいか?』

皆がそれぞれちっていく中、私たちは部長に呼ばれた。

『やっぱりキスシーンは難しいか?』
「いえ挑戦はしたいです.....ただ.....」
『.....まぁ正直難しいよな』
「そう.....ですね」
『俺はお前らには才能があると思ってる。憑依させる才能が』
「憑依.....?」
『役を演じるっていうのは他人になりきると言うこと.....その瞬間だけは上村莉菜と永田蒼空じゃなくて渚と優人だ』

渚と優人.....。

『たしか2人とも彼氏、彼女が居たよな?』
「はい」「はい」
『高校生でキスシーンがあるのは正直賛否両論あるし、お前たちもきっと思うところがあると思う』
「.....」
『でもその高校生のぎこちなさがあってこそ表現できるものもあるんだ。そのぎこちなさを上手く表現できたら絶対ワンランク.....いやもっと成長する』
「成長.....」
『だからできるならやってほしい.....ただ無理にとは言わない』
「分かりました.....」
『感情が乗ってきたらアドリブも増えると思う。それは大歓迎だから、2人で話して色々試してみてほしい』
「はい」「はい」
『あと1週間!頑張るぞ』
「はい!」「はい!」

稽古を終え、帰る準備をしている永田くんに以前から考えていたことを話してみる。

「永田くん、今週末デートしよう」
「.....え!?」
「あ、大丈夫!あくまでも渚と優人として!」
「だ、大丈夫なの!!?」
「私の方は許可貰ったから」
「よく許可されたね.....」
「その代わりそれまで毎日デートすることになったけど.....笑」
「そっか.....笑」
「無理にとは言わないから、彼女さんに相談してみて」
「分かった」
「莉菜〜!!」

またこの子は.....。

「亮くん!迎えに来なくていいって言ったのに!」
「あ!貴様!!!」
「ど、どうも.....」
「莉菜に少しでも触れてみろ!!絶対に殺す!!死ぬまで殺す!!死んでもこr」

飛びかかる直前になんとか制止する。

「はいはい!もう毎回毎回突っかからないの!」
「全っ然大丈夫じゃないじゃん.....笑」

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